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11.
「それは?」
「ああ、これで間違いないはずです」
王子は満面の笑みを浮かべた。
「殿下、どうしてこんなことを?」
アイリスは非難するように言った。
「いや、つい出来心でね」
王子は頭を掻いて笑う。
「それよりも、早く逃げよう」
「逃げるってどこに?」
「とりあえず、村を出てどこかに身を潜めるんだ」
王子は老婆に目を向ける。
「あなたはどうしますか?」
「わたくしはもう疲れました。このままここで朽ち果てるのを待つつもりです」
「そうですか」
王子は小さく嘆息した。
「では、行きましょうか」
王子はそう言って歩き出した。
三人はそそくさと家から出ると、一目散に逃げ出した。
「ここまで来れば安心だろう」
王子は額の汗を拭いながら言った。
「さて、これからどうしたものか」
「そうですね」
アイリスは考える。
「まずは服を変えないといけませんね」
「そうだね」
王子は自分の姿を眺めて呟いた。
「それにしても、この格好だと動きにくいな」
「でも、変装しないと怪しまれてしまいますよ」
「それもそうか」
王子は腕を組んで考え込んだ。
「よし、着替えを用意してもらおう」
王子は再び村人の家を訪れた。
「すいません。ちょっといいですか?」
王子が声をかけると、中年の女性が出てくる。
「なんでしょう?」
「実は、替えの衣服を持ってきて欲しいのですが」
「わかりました。少々お待ちください」
女性は家の中に入っていく。
しばらくして、再び姿を現した。
「お待たせしました。こちらになります」
女性が差し出してきたのは、先程まで王子が着ていたものと全く同じものだった。
「本当にそっくりだね」
「はい」
アイリスは感心したように言った。
「あの、代金はいかほどで?」
女性に訊かれて、王子は首を傾げる。
「そうですね。では、金貨五枚ということでどうでしょうか?」
「え?」
女性の目が点になる。
「いや、でも、これはさっきの方がお召しになっていたものでは?」
「いえ、これは私の私物ですから」
「ええっ?」
「それでは失礼します」
二人はその場を後にする。
その後、二人は馬車に乗り込むと、すぐに出発した。
「いやぁ、危なかったね」
王子は笑顔で言った。
「でも、あれでよかったの?」
「もちろんだよ」
「そうかしら」
アイリスは納得いかない様子で答えた。
「ところで、これからどこに向かうつもり?」
「特に決めていないけど」
「なら、一度王都に戻るというのはどうかしら?」
「王都に?」
「ええ」
「ふむ」
王子は少し考えてから答える。
「いいかもしれないね」
それから数日後。
王子とアイリスを乗せた馬車は、王都に到着した。
王子は王宮の門の前に降り立つと、大きく伸びをする。
「ようやく戻ってこられたよ」
「ええ」
二人は顔を見合わせて微笑んだ。
「それじゃあ、早速父上に報告に行くとしようか」
「そうですね」二人は並んで歩き出すと、そのまま王の待つ玉座の間へ向かった。
「ただいま戻りました」
二人は恭しく頭を下げた。
「おお、よくぞ戻った」
王は満足気に言う。
二人は顔を上げると、王に訊ねる。
「それで、宝物は手に入りましたか?」
「うむ。ここに用意してある」
王が合図を送ると、侍女が宝箱を運んでくる。
そして、ゆっくりと蓋を開けると、中に指輪が入っていた。
「これがその『宝物』ですか?」
「いかにも」
「なるほど」
王子は指輪を手に取ると、しげしげと眺める。
「これを僕に譲って頂けるのですね?」
「ああ」
「ありがとうございます」
王子は満面の笑みを浮かべると、左手の薬指に嵌めた。
「素晴らしい!」
王子は感動に打ち震える。
「それじゃあ、僕は用済みですね」
「うむ。下がってよいぞ」
「はい」
王子は軽く会釈して、その場を去ろうとする。
だが、そこで立ち止まった。
「あ、そうだ」
王子は振り返って言う。
「一つだけお願いがあるんですが」
「なんだ?」
「もし、この国で誰かが王位を継ぎたいと申し出てきたら、その時は快く譲ってあげてください」
「ほう。それはまたどうして?」
「この国は今のままで十分幸せだからです」
「確かにな」
「そうでしょう?」
王子は嬉しそうに同意を求める。
「うむ。わかった。約束しよう」
「ありがとうございます」
王子はもう一度深々と頭を下げると、足取り軽やかに去っていった。
やがて、王子の姿が見えなくなると、国王は隣にいるアイリスに話しかける。
「これで良かったのか?」
「何がですか?」
「あやつを後継者にせぬ事じゃ」
「ええ。王子はきっとやり過ぎてしまうと思ったので」
「まあ、確かにの」
「それに、私は今の暮らしが気に入っているのですよ」
「そうなのか?」
「はい」
アイリスは満面の笑みを浮かべる。
「王子は好きだけど、あの人は一人で勝手に暴走してしまう人ですから」
「違いない」
「そういうわけで、私たちはこのままの生活を続けていきましょう」
「そうだな」
二人は笑い合った。
それから数日か経ちアイリスは王子の部屋のベッドの上で
生まれたままの姿で王子に愛撫されていて、王子はアイリスを優しく抱きしめて、
舌を絡ませながら濃厚なキスをしていた。
「ああ、これで間違いないはずです」
王子は満面の笑みを浮かべた。
「殿下、どうしてこんなことを?」
アイリスは非難するように言った。
「いや、つい出来心でね」
王子は頭を掻いて笑う。
「それよりも、早く逃げよう」
「逃げるってどこに?」
「とりあえず、村を出てどこかに身を潜めるんだ」
王子は老婆に目を向ける。
「あなたはどうしますか?」
「わたくしはもう疲れました。このままここで朽ち果てるのを待つつもりです」
「そうですか」
王子は小さく嘆息した。
「では、行きましょうか」
王子はそう言って歩き出した。
三人はそそくさと家から出ると、一目散に逃げ出した。
「ここまで来れば安心だろう」
王子は額の汗を拭いながら言った。
「さて、これからどうしたものか」
「そうですね」
アイリスは考える。
「まずは服を変えないといけませんね」
「そうだね」
王子は自分の姿を眺めて呟いた。
「それにしても、この格好だと動きにくいな」
「でも、変装しないと怪しまれてしまいますよ」
「それもそうか」
王子は腕を組んで考え込んだ。
「よし、着替えを用意してもらおう」
王子は再び村人の家を訪れた。
「すいません。ちょっといいですか?」
王子が声をかけると、中年の女性が出てくる。
「なんでしょう?」
「実は、替えの衣服を持ってきて欲しいのですが」
「わかりました。少々お待ちください」
女性は家の中に入っていく。
しばらくして、再び姿を現した。
「お待たせしました。こちらになります」
女性が差し出してきたのは、先程まで王子が着ていたものと全く同じものだった。
「本当にそっくりだね」
「はい」
アイリスは感心したように言った。
「あの、代金はいかほどで?」
女性に訊かれて、王子は首を傾げる。
「そうですね。では、金貨五枚ということでどうでしょうか?」
「え?」
女性の目が点になる。
「いや、でも、これはさっきの方がお召しになっていたものでは?」
「いえ、これは私の私物ですから」
「ええっ?」
「それでは失礼します」
二人はその場を後にする。
その後、二人は馬車に乗り込むと、すぐに出発した。
「いやぁ、危なかったね」
王子は笑顔で言った。
「でも、あれでよかったの?」
「もちろんだよ」
「そうかしら」
アイリスは納得いかない様子で答えた。
「ところで、これからどこに向かうつもり?」
「特に決めていないけど」
「なら、一度王都に戻るというのはどうかしら?」
「王都に?」
「ええ」
「ふむ」
王子は少し考えてから答える。
「いいかもしれないね」
それから数日後。
王子とアイリスを乗せた馬車は、王都に到着した。
王子は王宮の門の前に降り立つと、大きく伸びをする。
「ようやく戻ってこられたよ」
「ええ」
二人は顔を見合わせて微笑んだ。
「それじゃあ、早速父上に報告に行くとしようか」
「そうですね」二人は並んで歩き出すと、そのまま王の待つ玉座の間へ向かった。
「ただいま戻りました」
二人は恭しく頭を下げた。
「おお、よくぞ戻った」
王は満足気に言う。
二人は顔を上げると、王に訊ねる。
「それで、宝物は手に入りましたか?」
「うむ。ここに用意してある」
王が合図を送ると、侍女が宝箱を運んでくる。
そして、ゆっくりと蓋を開けると、中に指輪が入っていた。
「これがその『宝物』ですか?」
「いかにも」
「なるほど」
王子は指輪を手に取ると、しげしげと眺める。
「これを僕に譲って頂けるのですね?」
「ああ」
「ありがとうございます」
王子は満面の笑みを浮かべると、左手の薬指に嵌めた。
「素晴らしい!」
王子は感動に打ち震える。
「それじゃあ、僕は用済みですね」
「うむ。下がってよいぞ」
「はい」
王子は軽く会釈して、その場を去ろうとする。
だが、そこで立ち止まった。
「あ、そうだ」
王子は振り返って言う。
「一つだけお願いがあるんですが」
「なんだ?」
「もし、この国で誰かが王位を継ぎたいと申し出てきたら、その時は快く譲ってあげてください」
「ほう。それはまたどうして?」
「この国は今のままで十分幸せだからです」
「確かにな」
「そうでしょう?」
王子は嬉しそうに同意を求める。
「うむ。わかった。約束しよう」
「ありがとうございます」
王子はもう一度深々と頭を下げると、足取り軽やかに去っていった。
やがて、王子の姿が見えなくなると、国王は隣にいるアイリスに話しかける。
「これで良かったのか?」
「何がですか?」
「あやつを後継者にせぬ事じゃ」
「ええ。王子はきっとやり過ぎてしまうと思ったので」
「まあ、確かにの」
「それに、私は今の暮らしが気に入っているのですよ」
「そうなのか?」
「はい」
アイリスは満面の笑みを浮かべる。
「王子は好きだけど、あの人は一人で勝手に暴走してしまう人ですから」
「違いない」
「そういうわけで、私たちはこのままの生活を続けていきましょう」
「そうだな」
二人は笑い合った。
それから数日か経ちアイリスは王子の部屋のベッドの上で
生まれたままの姿で王子に愛撫されていて、王子はアイリスを優しく抱きしめて、
舌を絡ませながら濃厚なキスをしていた。
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