上 下
5 / 565

ワイバーン襲来Ⅱ

しおりを挟む
 ダッシュで駆けつけると、ミクちゃんは俺達が討伐したワイバーンの倍ほどある巨大なワイバーンと戦っていた。スピードで翻弄しながら、圧倒的な剣技で切り付けている。ただ、驚くことに、ワイバーンはものともしていない様子だ。耐久力も相当なモンなんだろう。生半可は銃じゃ倒すことはできない――。

 一つ、名案だ浮かんだ。人がいる村から50m程の距離は離れている。そして辺りは何もない草原。いける――。

「ミクちゃん! 何とかそいつの動きを止めることはできる!?」

「無理ですよ! このワイバーン動き回るんですもん!!」

「ワイバーンから一旦距離を置いてくれ!」

 俺は仕方なく、手からL96を出し、2倍スコープを取り付ける。怯みやすいと言えば目だろ。それに俺には狙撃手のスキルが付いている。当たるはずだ。

 火を吹いたり、尻尾をブン回したりなどで暴れまわっているジェネラル・ワイバーン。なかなか狙うことができない。そう思っていたとき、ミクちゃんが尻尾を切断した。

「ギアアアアアアア!」

 その一瞬の怯みで、引き金を引いた。

 目に直撃したようで、すんごいうるさい声で叫んでいやがる。そしてもう一発撃ち、ジェネラル・ワイバーンの視力を完全に奪った。

「ミクちゃん離れて!」

 ミクちゃんはコクリと頷くと、俺はジェネラル・ワイバーンの上に向けて手を翳し巨大な岩をイメージした。

 上空から出てきたのは高さ20m、横幅10mの巨大な岩。ジェネラル・ワイバーンは声を荒げながら岩の下敷きになった。作戦大成功だな。

「めちゃくちゃ荒業ですね」

「俺も思った。まあこれで討伐できると思うけど、流石にまだ生きていやがるな」

「重量も計算したんですか?」

「100トンくらいにしたけど。どうだろうな。岩山の重さなんかよく分からんし――そいやコイツで鑑定できるのか?」

「できますよ」

「成程ね」




名前:ランベリオン・カーネル
性別:♂
種族:竜族 飛竜ワイバーン種:ジェネラル・ワイバーン
称号:飛竜ワイバーンの王
勲章:☆☆☆
パッシブスキル:鑑定士、熱無効、熱変動耐性、硬質化
アクティブスキル:地獄の炎弾ヘル・フレイム龍の咆哮ドラゴン・ブレス火炎放射フレイム・バースト灼熱の尾バーニング・テール人型化ヒューマノイド
ユニークスキル:死の灰デス・アッシュ
アルティメットスキル:地獄の火炎玉ヘル・フレイムボール



「え? 名前があるけど? んでもってめちゃくちゃ強そうなんだけど。よくこんなん簡単に倒せたな」

「確かにめちゃくちゃ強そうですね。あと、名前があるのも確かに驚きです。人型化ヒューマノイドもきになりますし」

「元々、名前ってあるものなの?」

「名前があるのは、珍しいですよ」

「助けてくれ」

 あれ~。絶対に、ジェネラル・ワイバーンが喋ったよね? 

「ナリユキさん。ああ言ってますけど、岩外しませんか?」

「お、おう」

 岩山を消したが、ジェネラル・ワイバーンは倒れこんだままで苦しそうなのは変わりない。と、あれこれと考えていると、ジェネラル・ワイバーンはみるみる小さくなったいった。と、いうかまさかの人型になったのだ。185cm程の身長に、赤い髪の美丈夫な顔立ちをした好青年に変身するとは驚き。

「え――どういうこと?」

「話をする前に回復薬ポーションなどを持ってきてくれぬか? ダメージが大きすぎて立つことすらできん。大丈夫だ。襲うことなどしない。ワイバーンは人を食べない魔物だ」

「本当だろうな?」

「大丈夫だ強き者よ。我等は洗脳されていた故、村を襲った。それに、同胞がうぬ等に倒されたのも、仕方がないことだと思っておる。復讐の機会を伺うようなことはせん。むしろ、村に先制攻撃を仕掛け、甚大な被害と犠牲者を出し、恐怖に陥れてしまったことは、非常に申し訳ないと思っておる。村人の皆に謝罪をさせてほしいのだ」

 まあ、営業経験からすると胡散臭さは無いし、先に復讐というワードが出てきたのも信憑性が高い。普通ならそこまで言わないもんな。疑われる可能性がある事柄を全て潰してきているし――。

「わかった。村まで運んでやる」

「かたじけない」

「担架で運ぶぞ」

「は~い」

 車輪付きの担架を出して、二人でジェネラル・ワイバーンを載せる。この身長で筋肉質なんだろう。推定体重75kg以上を二人で持つのはキツ過ぎる。乗せた後は二人で押して村に向かう。

「本当に申し訳ない。特に女子おなごには負担をかけたと思う」

「本当ですよ。それより目は大丈夫ですか?」

「血は止まっておるが相変わらず見えん」

「悪かったな。そいや、名前はランベリオンでいいのか?」

「よい。我はなんと呼べばよい?」

「俺はナリユキ・タテワキだ。ナリユキでいいぞ」

「ナリユキ殿と呼ぼう」

「私はミク・アサギ。ミクでいいですよ」

「ミク殿か。宜しく頼む。で、名前で気になったのだが、二人は転生者か?」

「何で名乗っただけで分かるんだよ。てか、この世界では転生者はレアではないのかもしかして?」

「転生者の知り合いがおってな。そのような特徴的な名前だった。まあ分かる人には分かるみたいな感じだ」

「特徴的なんだ」

「てっきりお互いしか分からないと思っていた――」

「我は1000年程生きておるからの」

 おい、今絶対ほくそ笑んだだろ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ドラゴン☆マドリガーレ

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:930pt お気に入り:669

疑う勇者 おめーらなんぞ信用できるか!

uni
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:418pt お気に入り:246

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:241pt お気に入り:6,284

処理中です...