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村の復興とマーズベル森林

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 俺は合流してからあちこちに家を建てまくった。一軒一軒事前に紙に内装など諸々書いてもらい、間取りも希望に沿ったオーダーメイドにした。本当ならばここまでする必要は無いだろうが、やっぱり住むなら自分が納得がいく家に住みたいと思ったからだ。俺ならそうしたい。家が無くなったのは50軒ほどらしく、なかなかハードな一日になりそうだ。

 そこから俺はあちこち回った。時間も気付けばあっという間に昼過ぎだった。皆が口を揃えて言うのは、前よりから全然いい。家が焼けて良かった! とのこと。おいおい――それは俺がいなきゃ成り立たんだろ。とか思ったが、そこは敢えて口に出す必要は無い。

 とりあえず時間も時間だし二人に合流しようと思ったときだった。噴水がある広場に人が集まっていくので、俺もとりあえず向かうことにした。

「すげ――」

 体長7.0mくらいの巨大な猪が程よく焼けているのだ。ミクちゃんとランベリオンが紙皿と竹串を付けて配っている。

「何しているの?」

「ナリユキ殿が頑張っているので、何かできることはないかと考えた結果、我はこの辺りの名物魔物、ビガーポークを村に提供しようと思ってな」

「美味しいのか?」

「めちゃくちゃ美味しいですよ!」

 確かに村人は、ほっぺが落ちるだの、ジューシーだの各々感想を述べている。で、食べてみると本当に美味しかった。脂が程よくあり、しっかりした歯ごたえ。まあ一番驚くのは、ランベリオンが焼くのがめちゃくちゃ巧いということだ。まあ経験値なんだろうな。

「美味しかったありがとう」

 俺はそう言って食べた後、再度家を建てていった。

 そして、夕方には無くなった家は全て造り、何の問題も無く復興することができた。皆に感謝されまくったので、何かあったときは力を貸してもらおう。

 こうしてモトリーナの村を後にして、ランベリオンは 人型化ヒューマノイドを解除し、ワイバーンの姿になったところで、背中に乗せてもらいマーズベル山脈に向かったのだった。

 始めての空の旅という事だが、まあこれが快適なんだわ。ミクちゃんはミクちゃんで、俺の腰に腕を回しているし最高。まあ、落ちないようにしているだけなんだけどね。

「それにしても今日中に終わるとは思っていなかったぞ。ナリユキ殿は仕事が早いな」

「だろ? でも、あっちの世界じゃ早く終わらせて、数字も上がっている状態でも、早く帰っているの怒られていたからな。理不尽だよ本当に」

「それ聞くと、私、就職してもすぐに辞めていたような気がします。動画配信でも収益は生きていく分くらいは余裕であったので」

「まあ、今はそんなことをする必要ないからな」

「ですね! 存分に楽しんでやるんだ! って誓いましたから」

「凄い意気込みだな」

「勿論ですとも」

「そろそろ着くぞ」

「あそこに見える山脈か?」

「そうだ」

「すげーな。標高どれくらいなんだ?」

「5,000m程だ」

「凄いですね」

「そうだな」

 神々しいまでの悠々と聳え立つ山々。そして今俺達の眼下に見えるのは、マーズベル森林。そして、山脈の手前にはマーズベル湖と呼ばれる湖があるのだが、恐らく琵琶湖くらいはある。でもまあ、琵琶湖と違うのは、誰にも汚されていない、CGかよ! って言いたくなるくらい綺麗な水色の湖。

「マジでここ俺達の国にしてもいいのかよ」

「本当に凄いですね」

「山脈もそうだし、この湖や森を開拓してくれ全然良い。この辺りはどの国の管轄でもないのだ。これだけ綺麗なのも魔物が強すぎるから、この自然を保てている」

「ここまで綺麗となんか申し訳ないんだけど」

「問題ない。さて、山脈とは言ったが、我等の棲み処にガッツリ行っても、標高が高いので住みづらいだろう。どの辺りに降りる?」

「できるだけ湖の近くがいいな。あの辺にしよう」

「解った。しっかり掴まっていてくれ」

 ランベリオンにしっかり掴まる。ミクちゃんは天使の翼エンジェル・ウイングを使い、ランベリオンの後についてきた。

 湖から1km程離れた場所にとりあえず降りてみた。地震とかってあるのかな? もしあったら津波に一瞬で飲み込まれてしまいそうなんだけど。

「さて、家を建てる前に、まずは木が邪魔だな」

「そうだな始めはとりあえずそんなに大きくなくていいや」

「どれくらいだ?」

「まあ、100坪くらい」

「分かった。じゃあ木をどけよう」

 俺が大きめの手から斧を二つ出して、ミクちゃんにも渡そうとしたときだった。メリメリメリってすんごい音がする――。

「おいマジか――」

「す、凄い」

 ランベリオンはワイバーンの姿のまま、飛びながら木をその強靭な脚で引っこ抜いていった。大根みたいに引っこ抜いているけど、抜いている木はランベリオンより高い木ばかり。すげー馬鹿力だなと感心させられる。

 そんな要領で辺りの木をバカスカ抜いていくので、気付けば辺りは更地になっていた。

「引っこ抜いた木はどうする? 何か資源として置いておくか?」

「それ使って家建てられるのかな?」

「やってみましょうよ!」

 で、イメージをして掌を向けて家を建てた訳だが、あら吃驚。引っこ抜いた木が一瞬で無くなっている。

「木が完全に無くなったぞ。恐らくそこにあった木を使ったようだな」

「凄いですね!」

「とりあえず中に入ろか」

 で、俺も村で家を建てまくったお蔭で、脳の処理スピードが早くなったらしく、家具やらテーブルやら、キッチン用品やら、マットレスやら観葉植物やらを、全て一気に盛り込んだ。勿論、お風呂やトイレもある。ミクちゃんの部屋にはぬいぐるみなんかも置いたりした。だから、部屋を開けたときめちゃくちゃ喜んでくれたのだった。電化製品を置いてみるのも悪くないが、せっかくだし、ストーブとかではなく、暖炉にしてみた。でもエアコンは付けている。使うかどうか分からないけど。

 ただ、今の状態では電気が無いので、風力発電の為、風車を作ったり、ソーラー発電の為、家の屋根にパネルを置いたりで、電気を使用することにした。ただ、建国をするって言っているので、規模をどんどん大きくしていきたい。

 立地的には水にも恵まれているし、いざ、水を飲むなら無限に天然水が飲めるわけだし最高すぎる。つか水道水でも十分美味しいんだけどね。

「最高ですね!」

「一気にそれっぽくなったな」

 ランベリオンは風車を見上げて感激していた。どうやら、電気などはスキルや魔物を使って供給しているのが常識なので、風力発電という発想はこの世界には無いらしい。確かに、そっちのほうが手っ取り早い気がするけど、どうせなら、この土地に付加価値を付けて、ゆくゆくは観光スポットにしたいと思っている。結局は風車を作った方が生産性は高いのだ。

「ナリユキ殿の国は産業革命が進みそうだな――くれぐれも、環境破壊ばかりするような事は止めてくれよ?」

「しないって。任せておけ。それじゃ次は仲間を教えてくれよ」

「そうだな」

 再び、ランベリオンの背中に乗って、次はランベリオン達の棲み処に案内してもらうことになった。



 

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