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アードルハイム帝国兵来訪Ⅲ

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「確かに――あんたも死んだのか?」

「胸糞悪い話だが拷問された上に殺された。ガープよ。ナリユキ・タテワキと私ならどっちが強い?」

「ナリユキ・タテワキだ。ナリユキ・タテワキが5,200で、お前は5,000だからな」

「僅差ってところか。究極の阻害者アルティメット・ジャマーのせいでスキルが視れないのは痛いが仕方ないか。で? 他の奴等はどうなんだ?」

「そこの少年が5,200。黒髪の少女が4,900、ランベリオンが4,600、お前が戦った雷黒狼王ベオウルフが4,500、森妖精エルフが4,700、獣人が2,000といったところだな」

「なんだ。4,000越えばかりいるじゃないか。通りで今まで人間が近付けなかったわけだ」

「私2,000しかないの?」

 と、肩を落としているミーシャ。うんドンマイ。貴女のランクA級だもん。

「アリシア。合っているのか?」

「はい。私の念波動でも同じ数値です。このスキルは知力も戦闘値に含まれますので」

「まあ俺とノアはスキル的に無敵だからな」

「そうだね。でもナリユキはボクが嫌な事ばかりしてくるから、精神的に無理だよ」

「鍛えたら俺の手に負えないけどな」

 俺がノアと話をしていると、マカロフは若い兵士に葉巻を渡した。

「で、話を戻すようだが本当にフィオナっていう女性は来ていないんだよな」

 マカロフはそう柔らかく言ってきたが、俺からすれば「嘘を付いているだろ?」という脅しのような目つきだった。

「それはこの私が保証するよ」

 そう言って屋敷から出てきたのは、ルミエール、クロノスさん、ルイゼンバーンさんだった。

 これには流石に驚いたようで、アードルハイムの兵士達もザワザワとしていた。

「カーネル王か。こんなところで何を?」

 ガープがそう言うと「いやいや~」といつもの飄々とした立ち振る舞いで俺の近くに寄って来た。少し空気が柔らかくなったようだ。本当この人は凄いな。

「僕達は彼等に以前助けてもらったことがあるので、マーズベル共和国に来ていたのです。一泊しておりますので二言はありませんよ」

「行くぞマカロフ。今日のところは引き上げよう」

 ガープがそう言うと、マカロフは少し不服そうだった。

「本当にいいのか? どうなっても知らんぞ」

「それくらい理解してくれるだろ」

「まあ私がそっちの事情に口を深く挟む必要は無いが本当にいいんだな?」

「ああ。ナリユキ・タテワキ殿、並びにマーズベル共和国の方々。朝早くから押しかけて申し訳なかった」

 ガープがそう言うと、兵士達は怪鳥に乗った。勿論、死体を担いでいる兵士が1人いる。当然だが彼は少し乗るのが遅れていた。

 その後、マカロフ卿もガープも怪鳥に乗って、ガープの「退散!」の号令で兵士達は怪鳥に付けている手綱をしならせた。

 あっという間に100人前後の兵士達はこの場からいなくなった。まるで嵐が過ぎ去ったようだったが大分ホッとしている。

「凄かったですね」

「あのマカロフ卿という者、相当な手練れだな。スキルを使わないと勝てる気がせん」

 ベルゾーグはそう言って苦笑いをしていたが、それはそうだと言いたい。

「危なかったねナリユキ」

「助かったよルミエール」

 そうやり取りしていると、ランベリオン、ベルゾーグ、アリシア、ミーシャ、ルイゼンバーンさんはポカンとしていたので――。

「まあ昨日酒を飲んでいて、お互いに呼び捨てすることに決めたんだよ。そんなに不思議そうな目で見るなよ」

「我でも呼び捨てしたことないのに――」

 いや、したかったならすればいいじゃん。まあランベリオンなりにルミエールに気を遣っているんだろうな。

「で、良かったのかよルミエール。あんな大嘘ついて」

「これで貸しができたね」

 ルミエールのニッコリ爽やかスマイルに頭を抱えた。

「やられた!」

「だってアードルハイムって凄く面倒臭い国なんだよ? こっちも国民を預かっているんだからちゃんと恩恵は貰わないとね」

「分かったよ。でもありがとうな。あのマカロフ卿って奴、思った以上に面倒臭い奴だから、ルミエールが来なければ引き下がらなかったよ」

「でしょ? 私は一目でそれが分かったからこれは入らないとマズイなって思ったわけさ。それより朝食が欲しい。ミーシャさん準備はできているのかい?」

「勿論です! さあ! 皆さんで朝食を摂りながら話を整理しましょう!」

 そうミーシャが言って俺達は屋敷の中へ入り、食堂へと向かった。

 食堂と言っても、ルミエールのような他国のお偉いさんと会食をすることもあるだろうから、俺が思う高級レストラン的な感じにはした。

 光沢のあるウッドテーブルの上にテーブルクロスを引いて、某有名珈琲店の赤い椅子のような座り心地の白い椅子を置いている。

《ベリト聞こえるか?》

《はい、聞こえます。ご無事何よりです》

《問題ないよ。アードルハイム帝国はとりあえず帰ったようだ。お前たち三人も飯にするか?》

《いえ。すでに食べましたので大丈夫です。それより許可を頂きたいことがあります》

《なんだ?》

《しばらく今隠れている場所で、フィオナと2人で隠れていたいのです。そして、ナリユキ様には部下に命じてほしいことがあります》

《いいぞ、言ってみろ》

《不審物が無いかを調査して頂きたいのです。マカロフ卿とは直接顔を合わせた事はありませんが、彼は非常に慎重な性格をしております。レイドラムにドローンと呼ばれる小型の偵察アーティファクトを渡していました。ですので、マカロフ卿は帰ると言いつつも、その偵察アーティファクトをリリアン、又はマーズベル共和国に放っている可能性があります》

 ――。確かにあの顔は絶対に諦めていないな。ドローンってのも元軍人だから、ラジコンのようなやつか、昆虫を模した小型ドローンを開発していても何ら不思議ではない――。

《よし分かった。ランベリオン達にその仕事を振る。フィオナはまだ不安定だから頼んだぞ? 同じ境遇だから、お前が一番彼女に寄り添えるはずだ》

《任せて下さい》

《じゃあな》

 俺はそう言って念話を終えた。

「聞いていた限り大変そうですね。ドローンか――。うっ――。ってなりますね」

 ミクちゃんもそう言って溜め息をついていた。

「まあ、ベリトやフィオナを引き受けたらそうなってしまうよ。上手く立ち回る作戦を立てないとね」

 対面座っているルミエールはそう言ってきた。やっぱり楽しいことばかりではないな。いや分かっていたことだけど。
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