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来るⅡ

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「彼は複数の亡霊から拷問を受けて死んだようです。亡霊に関しては報告を受けましたよね?」

「ああ。にわかに信じ難いが報告は受けている。それで死んだと? ヴァンはどんな拷問を受けたのだ?」

「ヴァン様は四肢を全て切断されておりました。しかし、ヴァン様が動くなったとき、元通りになっておりました。死因に関してはよく分かりません」

 ロビンソンさんがそう言うと、帝国兵は鼻で笑うなり剣を向けてきた。

「ふざけやがって。そんな十にも満たない子供のような作り話をよく語れたものだ。貴様等が殺したんだろう!」

「私達に武力など持ち合わせておりません」

「できるではないか。そこの怪しい仮面をつけた3人組に、金を渡してヴァンを殺すことなど容易いではないか。やはり金を隠し持っていたのだろう!」

 まあ私達が殺してしまったことはあっているね。でも金銭のやり取りはしていない。

「聖女様達は無関係です!」

 ロビンソンさんがそう言うと、帝国兵は「ほう」と小さく呟きながら、何やら不気味な笑みを浮かべた。

「私達に逆らうということでいいのだな?」

 帝国兵がそう言うと、他の帝国兵達も剣を抜いた。

 予想はしていたけどここまでこじつけが酷いとは――。すぐに反抗しているだの、不遜な態度をとっているのだのと言って民間人を殺しているのか。そんなことをしても国は発展していかないのに――。この様子だと優秀な技術者とかも殺されていそう。

「待って下さい。私と勝負をしませんか? もし私が負けた場合はなんでもします」

 すると、その兵士はほうといやらしく笑みを浮かべていた。

「何でもするのだな?」

「ええ。その代わり、私が勝った場合は二度とここに訪れないと誓ってください」

「いいだろう。この私にそのような口をきけるの大したものだ。これでも私は軍団長の候補だったこともあるのだ」

 ――多分こういう人ってすごく嫌われるよね。まあ私が勝つしどっちでもいいけど。

「聖女様と呼ばれていることから、優れた治癒ヒールも使うとみた」

「当たっていますね。別に私は優秀な力を持っているとすら思っていませんけどね」

「あくまで謙遜するのか。向上心だけは気に入った」

 すると、兵士は剣を一端鞘に納めて馬から降りてきた。

「その生意気な小娘の口を黙らせてやりましょう!」

「やってやって下さい!」

 と、兵士達はえらく盛り上がっている。鑑定士を使えば私達が究極の阻害者アルティメット・ジャマーを持っていること分かるのにな。でも、この人達なら究極の阻害者アルティメット・ジャマーの存在すらも知らないか。

 兵士が私に近づいてきて剣を抜いたので、私もレイピアを取り出す。

「ほう。珍しい武器を持っているじゃないか」

「無駄話はよして早くやりましょう」

 すると、その帝国兵は眉をピクピクと動かしながら苦笑いを浮かべていた。

「減らず口を言っていられるのも今のうちだ!」

 兵士はそう言って斬りかかってきた。

 遅い――。私はこの帝国兵の攻撃をひたすらかわした。この世界で身体能力が大幅に向上しているとはいえ、学生時代の私でも勝てるんじゃないか? と思うような太刀筋だった。

「どうしましたか? 一生当たらないですよ?」

「当たりさえすれば!」

 そう言いながら剣撃を繰り出す帝国兵。当たりさえすれば何とかなると思っているのだろうか?

「当たりさえすれば何とかなると思っているのですか?」

「それはそうだろう。現に貴様は避けるだけで攻撃ができていないじゃないか」

 まあ、攻撃していないだけなんだけど。

「はあはあ――」

 帝国兵は息を切らしながら攻撃の手を止めた。

 その隙に私が帝国兵の腹部にレイピアを刺した。

「がっ!? き――貴様卑怯だぞ」

「戦いに卑怯なんてありませんよ。ほら勝てば私を好きにすることができんるんですよ?」

 そう煽ると帝国兵は力を振り絞って私の首にめがけて剣を振ってきた。

「死ね!」

 私が避けずにいると――。

「危ない!」

 ロビンソンさんがそう叫んでいた。 

 帝国兵は私の首に刃が触れたので、ニヤリと勝ち誇った表情を浮かべていたが――。

「貴方たちとは次元が違うのです。そんな子供遊びみたいな攻撃で、私の首が飛ぶとでも?」

 帝国兵の剣は私の首に触れるなり折れてしまった。

「な――」

 私は次に帝国兵の腕を斬り飛ばした。

「うぎゃああああ!」

 と下衆な叫びが響き渡る。

「ほらもうあなたの負けですよ? 降参したらどうですか?」

「て――帝国兵が負けを……」

 私は容赦なくもう片方の腕を斬り飛ばした。

「うあああああああ」

「ほら。ちゃんと喋れるじゃないですか。負けを認めなさい。そして、ここに二度と訪れない事を約束しなさい。貴方達も上司がやられて黙っているのですか? いつでもかかって来てもいいでんすよ?」

 私がそう睨めつけると、帝国兵達は怖気づいていた。私がここまでやるのは、フィオナさんを傷つけたという私怨があるからだ。私は下衆さを垣間見たら容赦なく斬ることにする。それに私は――。

「なっ――。手が!」

 私は死者以外ならどんな重症でも治すことできる高度の治癒ヒールがある。

「そうですね。ちゃんと書面に襲わないというサインを書いてもらわないといけませんね。だから治しました」

 すると、帝国兵は私に掌を向けてきた。恐らくスキルを発動するのだろう。再度容赦なく両腕を斬り落とした。

「私が治癒ヒールしなければ貴方の腕は再生しないんですよ? 分かって私に攻撃をしようとしたのですか?」

 すると、心が折れたのか。帝国兵は失禁をしていた。

「あ――悪魔」

「そんな事言わないでくださいよ。腕を元通りにしなくてもいいのですか?」

「ひっ――」

「大丈夫ですよ。ちゃんと私が言ったことを守れば無事に帰してあげるのですから」

「ま――守ります。だから――その」

 完全に戦意喪失しているようだ。私は帝国に治癒ヒールをして両腕を元通りにした。勿論体力も回復している。

「ではこの紙にサインをお願いします」

 私が見せた紙はこの町に今後訪れないという文言が書かれた書面だった。

 帝国兵は筆を取り出すなり、書面に自分の名前でサインをして。どうやらケールという男らしい。

「さあ、さっさと立ち去って」

 私がそう冷たく睨めつけると、兵士達は慌ててこの場を立ち去った。

 ここまで私が冷たくなれるのも治癒ヒールの影響が大きい。

 後ろを振り返ると、何故か目を輝かせているノア君とアリスちゃん。ほっとした様子のロビンソンさん達と、隠れて様子を見ていた町の人達の姿があった。

 
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