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真実Ⅰ

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「本当に?」

 アマミヤの目には一杯の涙が溢れていた。

「あれだけ痛かったのに今は――」

 俺は気付けば頭を撫でていた。これほど泣いているアマミヤを見るのは大学生ぶりだ。

「アリシアに感謝しろよ」

「はい――」

 そうやって俺の胸のなかでしばらく泣いていた。

「タテワキさん。そして皆さん――。私が何故、アードルハイムの帝国兵として従事していたかをお話しします」

 さっきまで泣いていたかと思えば、アマミヤの目はキリッとしていた。

 大きく息を吸って吐く。

 そのゆっくりとした動作に、皆は固唾を飲んでいた。

「私は、アードルハイム皇帝に関する情報、アードルハイム皇帝に反するような行動をとると、私の心臓に強烈なダメージを与えるというルールを課せられていました。そして、もう1つ――。私がアードルハイム皇帝に関する情報や裏切り行為が重いと下された場合。私と、私が大事にしている孤児院の子供たち2人の命を奪うというルールでした。本来なら、ルールを暴露しようとした時点で、私の心臓に強烈な痛みがくるのですが、今はそれがないので、完全に無効化されているのだと再認識致しました。勿論、私が帝国兵国になってからは、数々の人々を殺めているので、自分の保身のためとは言え、到底許されるべき行為ではありません」

「やっぱり国民が皆奴隷というのはそういうことだったのね。仮に帝国兵になっても辛い思いをするなんて。以前ロビンソンというご老人がそう言っていた」

「そう――。貴女は確かあの村で帝国兵とロビンソンさんがひと悶着を起こしていたから知っているのよね。あのご老人が言っていたのはそういう意味よ。国民は監視されている、そして帝国兵は呪いという名のスキルでルールを課せられている。反抗する者は殺される。野心が強い人間ほどそれ行われるわ。カレス・ロビンソンさんは何故かそのルールに適用はされていなかったけど、捕まった後は酷い目にあったと聞いている」

「そのカレス・ロビンソンさんってのは?」

「ナリユキさんはラングドールさんの事知っていますか?」

「ああ。第5騎士団の団長だろ?」

「そう。その前がカレス・ロビンソンさんという人で、彼女の無念を晴らすために、反乱軍の団長と手を組んだのよ」

 ん? 手を組んだ? アマミヤは団長の事を知っているのか?

「なあ。今の言い草だと反乱軍の団長を知っているような感じだったが?」

「知っていますよ。私は盗み聞きしたからたまたま知っているだけですけどね。その団長はこの国にとって最も重要人物だから見て見ぬふりをしていました――。けど、マカロフ卿がアードルハイム皇帝の命令――。というか莫大な資金を提供したから、スパイを送り込むことになってしまいました」

 反乱軍の団長――。一体誰なんだ?

「一体その反乱軍の団長ってのは誰なんや?」

 レンさんはそう言って、アマミヤをジトリと見つめた。

「ガープよ」

「は?」

 レンさんのリアクションは素そのものだった。レンさん風に言うと「そなわけあるかい!」の意味も込められたようなリアクションだった。

「一番忠実そうなガープが反乱軍の団長か」

「驚きだね」

 俺の言葉にミクちゃんがそう反応していた。けれども不思議なのは――。

「なあ、アリス。ガープを視た時に裏切者を見つけし神官ジューダス・プリーストの反応は?」

「それは私が、反乱軍の団長ですか? という質問をしないと出てこないですからね。あの手のタイプは普段から自分は反乱軍の団長――。と思い込んでいる可能は低く、立場を上手く使い分けている可能性があるので、質問しないとまず分からないですね」

「やっぱりそうか。裏切者を見つけし神官ジューダス・プリーストは裏切り者を見つけるものだから、見るだけで判別するとなると、アリスが仲間と認識していなければ見抜くことはできないしな」

「そういう事ですね」

 て――。話していたけど待て――。

 あの悪魔のようなイラスト――。ドローン――。間違いない。

「これで全ての合点がいく」

 俺がそう話すと、皆俺の顔に注目するなり怪訝な表情を浮かべていた。

「あのドローンのサイン。誰が送ったか分かったぞ」

 俺がそう言うと、ミクちゃん、アリシア、アリスは驚いていた。

「簡単じゃないか。あの悪魔が泣いていたイラスト」

「差出人はガープということですね。反乱軍の団長でもありながら、帝国軍第1騎士団の団長の彼は、マーズベルの戦力があれば、アードルハイム帝国軍に大打撃を与えることができる。ひいては、アードルハイム皇帝を討ち取ることができると考えていた」

「その通り」

「でも何でドローンは2機あったんだろう?」

「それはやっぱりもう片方はマカロフ卿が置いていった偵察用だ。ガープが落としたタイミングは分からないが、マカロフ卿の後にドローンを投下していても、念には念を――。とか適当な事を言っても不思議ではない。公衆の面前でも違和感のない行動だ」

「成程。それだと合点がいくね」

 ミクちゃんがそう納得した後、アマミヤが付け足した。

「付け加えるなら、ガープも恐らくアードルハイム皇帝のスキルによって、何らかのルールが課せられているはず。きっとそれで苦しんでいるの――。だから、そのサインをタテワキさんに送ったということも考えられる。反乱軍の団長ということは、ラングドール団長の想いも受け止めているからその分の責任もあるから、何が何でも成し遂げないといけない――。あとは個人の問題ね。2つの意味が混じりあってそのサインになったと考えるのが妥当」

 アマミヤがそう考察していた。こうなったら――。

「ベリトも戦闘中だ。アマミヤはアリスと一緒にいてくれ。俺達はまた戦場へ戻る。アリシア!」

「かしこまりました」

「タテワキさん私――」

「待っててくれ。念話で仲間を向かわせるから、迎えに来たら皆と一緒にいてくれ」

「ありがとうございます」

 アマミヤはそう言って俺に一礼をした。

「皆さんありがとうございます。そして気を付けて行ってきてください」

「ああ」

「アマミヤさんまた後で!」

 俺がそう言った後に、ミクちゃんが続けて挨拶をした。するとアマミヤは涙を浮かべながらニッコリと微笑んでいた。
 

 



 
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