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客人Ⅳ

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「実は近々カルベリアツリーのダンジョンに潜ろうと思っておりました」

「成程。確かそのときはノアを倒せなかったんだな?」

「そうですね。アリシアがノアに触れると、スキルを無効化にでき、不死の体イモータル・ボディは発動しないですからね」

「確かにそうらしいな。ただそれだと味方だったノアを殺すことになるんじゃないか?」

「まあそうですね。でも、記憶は継承されてリスポーンするらしいので大丈夫ですよ」

「成程な。あと、もう一つ疑問だがそれだとノアが幽閉されることになるはずでは?」

「ミクに結界を弱めてもらったら、いつでも出れますので大丈夫ですよ」

「――。何というか全体的にインチキやっているみたいだな」

 青龍リオ・シェンランさんはそう呟いていた。

「まあ否定はしません。なので、カルベリアツリーのダンジョンの701階層以降のボスは全員味方につける気です」

「そうなると、世界一平均戦闘値が高い国になるな」

「え? そうなんですか?」

「800層は龍族なんだろ? ということは少なくとも6,000前後の戦闘値になる」

「龍族の戦闘値ってそんなに高いんですか?」

「最高位の種族だからな」

 青龍リオ・シェンランさんはそう言ってえっへんと威張っていた。いや、実際には別に腕を組んだりしているわけではないけどな。褒められて明らかに嬉しそうなのだ。

「ただ、コヴィー・S・ウィズダムが開発に協力した魔物だ。ノアのような存在がいる事を考えると、アリシアのようなのスキルの味方がいない限りは、カルベリアツリーのダンジョンは攻略できないな」

「俺達の前の世界だとクソゲーっていうんですよ」

「クソゲーか。確かゲームという娯楽がそっちの世界にあるらしいな」

「そうなんですよ。なかなか楽しいですよ。そのゲームのなかにある創造物が、文明の発展に繋がったりますからね」

「そう考えると、お主たちの世界の人間というのは、優秀なんだな。実際、マカロフ卿がこの世界に顔を出してから、この世界は大きく変わった。ただ、残念な事に武装国家が余計に力を付けて好き放題にしているところが多いのが現状――。その現状を打破してもらうためにも、ナリユキ殿には 六芒星ヘキサグラムに入ってもらったというのが理由もあるので、どんどん余達の施策もブラッシュアップしてほしいのだ」

「ブラッシュアップって――。それ俺達の世界の言葉じゃ――」

「使い方あっているだろ?」

「確かに」

 すげーな。普通に吃驚したわ。ランベリオンといい、人間と深く関わっている魔物は本当に聡明だな。いや、単純に知識に貪欲なのかもしれない。

「まあ、私で何か御力になれるのであれば是非――」

「本当は知性・記憶の略奪と献上メーティスをやってくれればいいものだがな」

 そう言ってニヤっと笑みを浮かべて来たので無視しよう。

「お断りします」

「だろうな。さてそろそろ国を案内してもらうか」

「いいですよ。行きましょう」

 俺は青龍リオ・シェンランさんを案内した。

地風竜ローベスクか。なかなか珍しい魔物がいるでないか」

「そうだよ。さあ2人共乗って」

 ノアに頼んで地風竜ローベスクの馬車を用意してもらった。当然運転するのはノア。地風竜ローベスクの馬車で、マーズベルの観光を行いたい人に向けてこの事業を展開している。地風竜ローベスクの躾がいいお陰で、マーズベル1日丸々観光ツアーは、ものすごく定評があり、近隣の国であるカーネル王国やレンファレンス王国では、人気になっている。それに、一日回った後は、他の国にはあまり無い、日本風の宿と、和食のフルコース、温泉といった日本の文化を発信しているお陰で、このフルプランコースは人気だ。

 実際、別れの挨拶はできなかったものの、レンさん達は十分に満喫して、冒険者パーティーを辞めてマーズベルに住みたいとか言っていたらしい。まあ居心地の良さを売りにしているからな。けどまあ、自分達は色々な国に行きたいと思っているらしいから、最終的には、カーネル王国に戻ってギルドの依頼をこなすことにしたらしい。

 地風竜ローベスクの馬車で移動しながら、まずはリリアンの街並みを見てもらうことにした。とはいっても食べ物屋が建ち並んでいるだけだ。国民の家だけが並んでいる場所と、食べ物や飲み物が楽しめる場所の2つに分けて、中央に50メートルの時計塔、リリアン・クロックがある。名前が無かったので最近付けた。

「凄い人だな。当然国民じゃない人もいるんだろ?」

「そうですね。食べ物屋、飲み屋も人気で、国民の皆は楽しそうに働いておりますし、観光客からも美味しいと評判なようで。私の一押しはあのお店です」

「ん? あれは確かケバブという食べ物だな?」

「良くご存じで。あのケバブの肉は私の大好きなビガーポークを使用しておりますので、きっと気に入っていただけるかと」

「ビガーポークはこの辺りの名産だったな。よし買おう」

 一度馬車から降りて、青龍リオ・シェンランさんは、アードルハイム帝国に捕まっていた闇森妖精ダークエルフが運営するビガーポークのケバブ屋に向かい、銀貨10枚で購入していた。

「美味い! ローストしたことによって、ビガーポークの味が違った味わいで口の中に広がるな」

「実は一番人気なんですよ。売上がいいところは他にあるんですけど、一日の売上だけでいくとダントツですね。どっかで頭打ちはするでしょうが、今のところ1,000個くらい売れています」

「ぼろ儲けだな」

「そうですね。手軽に食べれて回転率が高いし、ビガーポークのローストのケバブっていう、割と珍しい物を売りにしているので、観光客は絶対に食べたくなるんですよ」

「ビガーポークのブランドを存分に使っているな。確かに、銀貨10枚なら少し値は張るが、そこに付加価値に与えているので出し惜しみしないだろうな。税はきちんと取っているのか?」

「勿論。材料費と売上の10%程貰っていますよ」

「成程。それを国の発展の為に回しているのだな?」

「そうですね。それによって行き場の無いをたくさんマーズベルに入れることができますからね」

「凄い懐の持ち主だ。国の負債は今のところ無いのだろ?」

「黒字経営ですからね。手から何でも出せる能力持っていて、赤字って逆に難しいですよ」

「成程な。まあ余の国もお主の国にガンガン輸入を依頼する。とりあえずワインと日本酒を提供してくれ」

「勿論です」

 こうして、青龍リオ・シェンランさんの案内を順調に進めた。勿論風車とかも色々見てもらい、夜になったら青龍リオ・シェンランさんとアテナさんは帰った。

 最近は、案内だとか交渉だとかが多く、書類がまた山積みになっているのは言うまでもない。あと、☆を持っていない部下達にも1つは付けてあげたいところだ。ベルゾーグに関しては絶対に授与しないと。



 

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