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ヴェドラウイルスⅣ

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 ラーメン屋、たこ焼き屋、和食屋、喫茶店、武器屋、花屋、銭湯――。

「花屋? 男で花屋ってのは珍しいな」

「そうなのですか?」

 俺の発言にキョトンとしているベリト。

「誰かにプレゼントをあげようとしていたんじゃないかな?」

「男性の方からお花をプレゼントされると嬉しいですからね」

 ミクちゃんとネオンさんがそう証言をしてきた。確かにプレゼントならあり得るか。

「プレゼントを渡そうと思った矢先にヴェドラウイルスに感染するなんて災難だね」

 ミクちゃんはそう言っていたが、レンさんが「ちゃうちゃう」と言いながら首を横に振った。

「問題はどこでいつ感染してたかや。それが分からへん限り油断はできへんから同情するんも止めておいた方がええ」

「そんなに酷い言い方しなくても――」

 レンさんの反論にミクちゃんは肩を落としていた。

「べりーちゃんは優しすぎる。マーズベルはアードルハイムを潰して一気に注目を集めた。それは普通の人からとったら大変有難いことやろう……けど同時に甘い汁を吸っていた輩もいたわけや。あの技術の取り入れよう見たやろ? そもそも、監視カメラがある国なんて、早々あるもんじゃない。それを考えただけで、アードルハイムが財力があったんは確かや。て、考えると裏で大儲けしていたんが、マカロフ卿だけやないってのは予想できる。まあそもそも怪しいのはログウェル一択やけどな」

「私もレン様と同意見です」

 レンさんの考えにベリトも同意をした。ミクちゃんは「確かにそうだけど……」と複雑な表情を浮かべている。

「寝てるんやったらあの男に知性・記憶の略奪と献上メーティスを使うか」

「確かにそれが一番手っ取り早いな。明日、患者の所へ行くか。レンさんついて来てもらえるか?」

「勿論ええですよ。俺の魔眼で感染者の状態を視るんでしょ?」

「それなら私がやります。これは自国の問題ですから――透視スルーは私の青の瞳ブルーリー・アイズで視ることができます」

 俺が説明しようとするとレンさんが先に答えてくれた。

「アカン。アリスちゃんは直接感染している可能性は0なんや――。勿論俺達が感染していれば別やけど、わざわざ直接会いに行く意味がない――でしょ? ナリユキさん?」

 意図を理解されてはいるが、要は君はもう感染している可能性高いのだからどうでもいいでしょ? だったら同じだから協力してくれよ――という意味でも汲み取ることができる。悪い言い方だがこれは残念ながら真実――。

「そうだ。本当に申し訳無いと思っている」

 俺はゆっくりと頷いてそう答えた。

「悪い言い方すりゃお前はもう感染している可能性が高いねんからついて来てってことや。けど、それを俺は分かった上で合意した。何よりナリユキさんが言っているんは合理的やし、嫌な気持ちにはなってへんよ」

「そうでしたか……何から何まで申し訳ございません」

 アリスが暗い表情をするとレンさんはケロッとしていた。

「心配してくれて有難うな。でも任せといて」

「レンさん本当にごめん」

「私からもすみません」

 俺とミクちゃんがそう謝罪すると、レンさんはむっとした表情を見せた。

「謝らんでええって。そういう時は有難うって言うんや。俺がマイナスな提案に対してマイナスな回答しとるか? してへんやろ? じゃあプラスな言葉で返そうや。有難うってな」

 マスク越しで分かりづらいがレンさんの表情は容易に想像できた。目が思いっきり笑っている――それはただ純粋な屈託ない笑顔だ――。俺は恵まれるている――冷酷な頼み事な筈なのに俺の意見を快く受け入れてくれている。しかもこの人は他国の人間だ。ただの冒険者だ――。そう思うと目頭が熱くなってきた。

「有難うレンさん」

 俺がそう言うとニッと笑みを浮かべるレンさん。

「それと――アンタ格好良すぎるよ」

 俺はそうポロっと口に出してしまった。するとレンさんは「止めろや恥ずい」と露骨に照れていたので、アズサさんやノーディルスさんにからかわれていた。

 俺、ミクちゃん、ベリト、アリスは敬意でいっぱいだったが、そのやりとりに自然と笑みがこぼれていた。深刻な話にも関わらずレンさんは俺達マーズベルの4人に笑いを与えてくれたのだ。

「今回皆様――特にレン様には再び色々と御力を借りる事になりますがどうか宜しくお願い致します」

 ベリトがそう頭を下げると。

「もう分かったって。それよりその男の人の名前は何て言うですか? 鑑定士で確認できているんでしょ?」

「ああ。イーサンという男性だ。所有しているスキルとかは分かっているけど、どこの国の人かは分からない」

「そうか――ベリト。集めることができた情報は行った場所くらいか?」

「ええ。ですので明日は私で聞き込みを行いたいと思います。ナリユキ様とレン様でその男の素性と、ウイルスの状態を見極めて、私の方ではこの男が客観的に見てどう思われていたか――それらを擦り合わせれば何か見えてくるかもしれないと考えております。ナリユキ様だけでなく、恐らくミク様も私と同じ事を考えているかと思われます」

 アンタ凄いね。全くその通りだよ。

「その通り。俺が言いたいこと全部ベリトが言ってくれている」

「まあ凄いとしか言いようないね」

 ミクちゃんは一緒にいた時間が長いから分かるがベリトは言うてまだそんなに一緒に過ごしていないぞ? いや、まあ年齢だけで言うと俺の何百倍も生きているから普通か。

「じゃあまた明日の朝9時に俺とレンさんは集合しよう」

「うっす」

「では――」

「うちらもベリトさんと一緒に聞き込みしていいですか? 何もやってへんの何か嫌なんです」

 アズサさんがそう言ってくれたので、ノーディルスさんとネオンさんを見てみると、真っ直ぐ俺の目を見て来た。

「ああ。宜しく頼む。いいなベリト?」

「はい。勿論です。皆様ありがとうございます」

 ベリトがそう頭を下げると3人は「いえいえ」と言いながら微笑んでくれていた。

「では解散」

 こうして久々に濃い一日が過ぎた。ランベリオン、アマミヤ――無理はしないでくれよ。


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