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アードルハイムからの来訪者Ⅲ

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「次から次へと色々な問題が起きますね」

 ラングドールはそう苦笑いを浮かべていた。

「まあ国主やっていたら仕方ない事だろ。大した問題じゃない。気になるのは、やっぱりマーズベルに潜り込んでいるって事か?」

「そうですね。どこで情報が漏れたのでしょうか? 国民を疑うのは気が引けますが、マーズベルにいる人で裏切り者がいないのは分かっている事ですし」

「何で分かるんですか?」

 ラングドールはそうアリシアの発言に疑問を抱いていた。

「泥臭いですが、人魚姫マーメイドの姫であるアリスが裏切者を見つけし神官ジューダス・プリーストというスキルを持っているので、裏切り者や嘘をついている人物が分かるのです」

「もしかして、そのスキルで全員調べてたのですか?」

「ええ。勿論、カーネル王国のレン様達もお調べ致しました。ですので、私達の味方には原則スパイの人物はいないと考えております。なので、接点がない人物が私達の情報をどこかでキャッチしているのだと思います」

「成程――マーズベルにスパイを送り込んでもすぐにバレるということですね」

「そういうことです。例えば、レン様の偽装フェイクで何かを偽っていても、質問によっては見破ることができる効果となりますので」

「世界一安全な国かもしれないですね。アードルハイムはそれができないので鎖国的でしたし、マカロフ卿の力を借りて軍事国家を築き上げていました。それに罪の無い人間に対しても酷い拷問も多かったですからね。怪しい人は徹底排除という思想でしたから」

「マーズベルではアリスがいる限りそのような事は行わずに済みます。それにナリユキ様にもガープのスキルがありますから、嘘をついても過去の記憶でスパイかどうかは分かります」

「確かに――どうですか? 団長のスキルは」

 ラングドールはそう俺に訊いてきた。

「正直言ってめちゃくちゃ使えるぞ。アードルハイム皇帝のスキルは使ったことないから分からないけどな」

「2つとも強力なスキルですからね。アードルハイム皇帝のスキルに関しては、世界中でも危険視されていたスキルなのです。どれだけ強い人でも、その強い人の身の周りを巻き込んでしまえば、相手は降伏するしかないですからね。それに、アードルハイム皇帝は狡猾な人でしたので、ユニークスキルだけでもS級と対等に戦えました。仮にナリユキ様が悪魔との機密契約イビル・コントラクトを通常の戦闘でも使い始めたらどうなることやら……世界ではナリユキ様の事を国主兼指定危険生物として定めるかもしれませんね」

「まあ原則使わないよ。マーズベルは六芒星ヘキサグラムのうちの一国となった今、約束は破れないよ。それより内通者は結局誰なんだ? って話なんだけどラングドールはどう思う?」

 俺の問いかけに「そうですね」と顎に手をつき考え込むラングドール。

「ナリユキ様達は確かカーネル王国によく行き来しているんですよね?」

「ああ」

「で、あればカーネル王国に内通者がいるのではないでしょうか?」

「そうなるよな。でもカーネル王国の冒険者とかは全員調べたんだがシロだったんだよな」

「もっと他にお心当たりはないのですか?」

「正直アリスに訊かないと分からないな。思い当たるところは一通り探したんだ」

「で、あれば何らかのスキルでアリス殿のスキルを妨害しているとしか思えないですね」

「やっぱりそうなるよな。だからどう炙り出すかって話になる。正直なところ、俺が一人一人の記憶を覗くしか方法は無いと思っているんだ」

「ただ、それでも妨害されていれば時間の無駄になってしまいますよね?」

「そういう事だ」

「分かりました。私も何か対策を模索してみます。現状お答えできるようなアイデアは持ち合わせていないので」

 ラングドールはそう申し訳なさそうに答えた。

「記憶を一度奪い去ってしまうスキルだから、相手は警戒するだろうし、無理やりやったらマーズベルの評判が下がってしまうから、ガープのスキルで全員を調べるってのは当然難しい。協力してくれる人が内通者っていう確率は少ないしな」

「確かにそうですね。アードルハイムに戻ったら部下に役立ちそうなスキルを持っている人がいないか探してみます」

「ああ。頼む」

 俺がそう言うとラングドールはコーヒーを啜った。

幻幽蝶げんゆうちょうの対策が練られているそうですが、その点はどうするんですか?」

「う~ん。今のところどうするかは考えれていないな。医療施設で働いている森妖精エルフに聞いてみようかなと。幻幽蝶げんゆうちょうの効果が分からないしな」

「そうですか――感染者はどれくらいいるのですか?」

「それが院内では100人程感染しているんだ。幻幽蝶げんゆうちょうで治すことはできると思うけど」

「でもそれだと対策できていますよね? もしかして既に何か仕掛けられているのではないでしょうか?」

 ラングドールの単純な疑問に俺はハッとした。そうだ! こんなに悠長に喋っていては駄目だと! あの手紙が送ったのはつい数日前の事だろう――。で、あればすでにマーズベルに何か仕掛けられているかもしれない!

「サンキュ! 俺ちょっと施設見てくるわ!」

 俺はそう言ってラングドールとアリシアとアリスを置き去りにしてミクちゃんを思い浮かべて転移テレポートをした。

 



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