311 / 565
裏ルートⅡ
しおりを挟む
あれから数時間程移動して世界樹の近くまで来ていた。メルム・ヴィジャ曰く世界樹の幹まで5km前後らしい。島自体が前の世界で例えると北海道くらいの大きさがあり、島の南側からほぼ中心までの大移動を行った。
「ここです」
メルム・ヴィジャがそう言って指した場所はツタの葉で隠れた、成人男性が1人入ることができるくらいの穴だった。そして真っ暗で何も見えない。
「本当にここにあるのか?」
アヌビスは怪訝な表情を浮かべて穴を覗き込んでいた。当然私達も怪しいとしか思っていない。
「ええ――ここの穴は直下型になっています。ここにいる者の実力なら無事に着地できるかと」
「下までどれくらいの距離があるのだ?」
ランベリオンも真っ暗な穴を覗き込んでメルム・ヴィジャに問いかけた。
「貴様には話さん」
メルム・ヴィジャはそうランベリオンにそっぽ向く。ランベリオンは原則誰にでも好かれるタイプの魔物だ。たまに図々しいところもあるけど、不思議とそれが嫌じゃない。なので、人間関係でのしがらみなど無さそうに思えるけど――ずっと引きずられていそうね。私達――。
「メルム・ヴィジャ」
アヌビスはそうメルム・ヴィジャの事を睨めつけた。
「申し訳ございません。下まで300m程です」
「結構な高さだな。まあ余には関係ない事だが。よし、メルム・ヴィジャ。先に行け」
「かしこまりました」
メルム・ヴィジャはそう言って躊躇なく穴の中へと入って行った。
数秒経ってからアヌビスは大声でこう聞いた。
「聞こえるか!?」
それからまた数秒してからアヌビスは「了解だ」と言ってOKサインを手で作っていた。私には風の音しか聞こえていなかったので、異常聴覚のスキル効果で聞き取っていたのだろう。それに真っ暗なのにメルム・ヴィジャにOKのサインを送っているという事は、メルム・ヴィジャは真っ暗なところでもこの指の形が分かる目を持っている事になる。多分これはメルム・ヴィジャに元々備わっている生物としての特性だ。
「よし、行こう。300mか――ミユキ・アマミヤ大丈夫か?」
「身体向上使っても怪我しそうだけど」
「不死鳥よ。加護を付けてやれ」
「うむ」
加護――? 一体何の事だろうか?
「ミユキ行くぞ。不死鳥の加護」
フーちゃんは私にそう言って私にスキルをかけた。身体が宙に浮き、火に関するあらゆるステータスも上がった。宙に浮くだけでこんなに大それたことをしなくてもいいのに。
「ありがとうフーちゃん」
「構わん」
フーちゃんはそうニコッと笑みを浮かべた。
「よし、行くぞ」
アヌビスはそう言って穴の中へと入って行った。その後にランベリオン、フーちゃんが自身の翼を背中から生やして落下した。私もそのまま中に入った。落ちて数秒すると数十メートル先で人の気配がしたので、宙で減速しながら着地した。
「よし揃ったな」
アヌビスがそう呟いたので私も含めて皆が頷いた。辺りを見てみると、地上から天井までの高さが30m程あるので、巨人族が入っても十分なスペースが得られる空間だ。
「ここがそうなの――?」
「随分と広い空間だな」
私の後にアヌビスがそう呟くとメルム・ヴィジャが口を開いた。
「楽園の民には巨人族もいるという話です」
「それは確かにそうだ。私も閉じ込められている時に巨人族を見かけたことがある。ただ、Aのように仮面をつけている者はいなかったな。巨人族ならではの仮面なら被っていたが」
「そうなると、巨人族に創世の幹部はいないってことだよね?」
「そうなるな」
フーちゃんはそう頷いていた。
「幹部はどういう条件を満たせばなれるのだろうか?」
「分からないわね――まあ今考えても仕方ないけど」
「話なら歩きながらにしろ!」
先に、メルム・ヴィジャの後について行っているアヌビスにそう怒られた。
「ごめんなさい。今行くわ」
私がそう言うと「散歩じゃないんだぞ」と小声でぼやかれていた。いや、本当にごめんなさい。
そうして15分程歩いたところだった。なので距離にして1km程だろう。私達の前に現れたのは巨大な鉄の門だった。巨人族が入ることができるよう、門の高さは20m程あり、幅は8m程と随分と巨大な門だ。
「メルム・ヴィジャよ。入り方はどうするんだ? 結界が張られているぞ?」
「強行突破しかないかと思われます」
流石に開ける方法はまで知らないのね。
「でも強行突破ってどうするの?」
私がそう問いかけてもメルム・ヴィジャは黙ったままだった。まあそうだよね――苦笑いしか出てこない。
「我が破壊しましょうか?」
メルム・ヴィジャがそうアヌビスに問いかけた。
「そんな派手な登場したら気付かれるだろ。それに結界が張ってあるんだ。感知されてしまう」
「では、どのような手段で?」
メルム・ヴィジャの問いかけにアヌビスは不敵な笑みを浮かべた。
「まず結界をすり抜けよう」
アヌビスがそう言うとフーちゃんが「私の出番だな」と言って前に出た。
「頼んだぞ」
「任せておけ」
フーちゃんは得意気にそう言うと、門に優しく触れた。何やら撫で回しているので私には見えない感知型の結界
に触れているようだ。
「よし」
フーちゃんはそう言って戻って来た。
「これで感知の結界をすり抜けることができるぞ? ただ門はどうするのだ?」
「門は余が開ける。魔眼で見たところ巨大な錠をかけているだけのシンプルな構造だ。裏から入り込めばいい」
「スキルを使うのか?」
フーちゃんの問いかけに「ああ」と頷くアヌビス。
「余は視認している範囲内にある影を移動できるスキルがあるのだ。魔眼のスキル効果の透視があれば当然ではあるが、門の向こう側を確認できる。まあ待っていろ」
アヌビスはそう言って一呼吸置いた。
「冥影の移動」
アヌビスはそう言って自分の影に潜り込んでどこかへ姿を消してしまった。門の向こう側にあるどこかの影に移動したのだろう。数秒経つとガシャンという物音が聞こえた。そして、門が開閉される音が鳴る――。
「開いたぞ。敵はいないから先に進める」
アヌビスがそうニッと笑って見せた。私達はそのスキルの有用性に思わず拍手をしていた。そして、このワンコロが格好いいと思えた。
「褒めらるのは嬉しいがワンコロは余計だ」
そうだ――アヌビスは人の心が読めるんだった――。
「ここです」
メルム・ヴィジャがそう言って指した場所はツタの葉で隠れた、成人男性が1人入ることができるくらいの穴だった。そして真っ暗で何も見えない。
「本当にここにあるのか?」
アヌビスは怪訝な表情を浮かべて穴を覗き込んでいた。当然私達も怪しいとしか思っていない。
「ええ――ここの穴は直下型になっています。ここにいる者の実力なら無事に着地できるかと」
「下までどれくらいの距離があるのだ?」
ランベリオンも真っ暗な穴を覗き込んでメルム・ヴィジャに問いかけた。
「貴様には話さん」
メルム・ヴィジャはそうランベリオンにそっぽ向く。ランベリオンは原則誰にでも好かれるタイプの魔物だ。たまに図々しいところもあるけど、不思議とそれが嫌じゃない。なので、人間関係でのしがらみなど無さそうに思えるけど――ずっと引きずられていそうね。私達――。
「メルム・ヴィジャ」
アヌビスはそうメルム・ヴィジャの事を睨めつけた。
「申し訳ございません。下まで300m程です」
「結構な高さだな。まあ余には関係ない事だが。よし、メルム・ヴィジャ。先に行け」
「かしこまりました」
メルム・ヴィジャはそう言って躊躇なく穴の中へと入って行った。
数秒経ってからアヌビスは大声でこう聞いた。
「聞こえるか!?」
それからまた数秒してからアヌビスは「了解だ」と言ってOKサインを手で作っていた。私には風の音しか聞こえていなかったので、異常聴覚のスキル効果で聞き取っていたのだろう。それに真っ暗なのにメルム・ヴィジャにOKのサインを送っているという事は、メルム・ヴィジャは真っ暗なところでもこの指の形が分かる目を持っている事になる。多分これはメルム・ヴィジャに元々備わっている生物としての特性だ。
「よし、行こう。300mか――ミユキ・アマミヤ大丈夫か?」
「身体向上使っても怪我しそうだけど」
「不死鳥よ。加護を付けてやれ」
「うむ」
加護――? 一体何の事だろうか?
「ミユキ行くぞ。不死鳥の加護」
フーちゃんは私にそう言って私にスキルをかけた。身体が宙に浮き、火に関するあらゆるステータスも上がった。宙に浮くだけでこんなに大それたことをしなくてもいいのに。
「ありがとうフーちゃん」
「構わん」
フーちゃんはそうニコッと笑みを浮かべた。
「よし、行くぞ」
アヌビスはそう言って穴の中へと入って行った。その後にランベリオン、フーちゃんが自身の翼を背中から生やして落下した。私もそのまま中に入った。落ちて数秒すると数十メートル先で人の気配がしたので、宙で減速しながら着地した。
「よし揃ったな」
アヌビスがそう呟いたので私も含めて皆が頷いた。辺りを見てみると、地上から天井までの高さが30m程あるので、巨人族が入っても十分なスペースが得られる空間だ。
「ここがそうなの――?」
「随分と広い空間だな」
私の後にアヌビスがそう呟くとメルム・ヴィジャが口を開いた。
「楽園の民には巨人族もいるという話です」
「それは確かにそうだ。私も閉じ込められている時に巨人族を見かけたことがある。ただ、Aのように仮面をつけている者はいなかったな。巨人族ならではの仮面なら被っていたが」
「そうなると、巨人族に創世の幹部はいないってことだよね?」
「そうなるな」
フーちゃんはそう頷いていた。
「幹部はどういう条件を満たせばなれるのだろうか?」
「分からないわね――まあ今考えても仕方ないけど」
「話なら歩きながらにしろ!」
先に、メルム・ヴィジャの後について行っているアヌビスにそう怒られた。
「ごめんなさい。今行くわ」
私がそう言うと「散歩じゃないんだぞ」と小声でぼやかれていた。いや、本当にごめんなさい。
そうして15分程歩いたところだった。なので距離にして1km程だろう。私達の前に現れたのは巨大な鉄の門だった。巨人族が入ることができるよう、門の高さは20m程あり、幅は8m程と随分と巨大な門だ。
「メルム・ヴィジャよ。入り方はどうするんだ? 結界が張られているぞ?」
「強行突破しかないかと思われます」
流石に開ける方法はまで知らないのね。
「でも強行突破ってどうするの?」
私がそう問いかけてもメルム・ヴィジャは黙ったままだった。まあそうだよね――苦笑いしか出てこない。
「我が破壊しましょうか?」
メルム・ヴィジャがそうアヌビスに問いかけた。
「そんな派手な登場したら気付かれるだろ。それに結界が張ってあるんだ。感知されてしまう」
「では、どのような手段で?」
メルム・ヴィジャの問いかけにアヌビスは不敵な笑みを浮かべた。
「まず結界をすり抜けよう」
アヌビスがそう言うとフーちゃんが「私の出番だな」と言って前に出た。
「頼んだぞ」
「任せておけ」
フーちゃんは得意気にそう言うと、門に優しく触れた。何やら撫で回しているので私には見えない感知型の結界
に触れているようだ。
「よし」
フーちゃんはそう言って戻って来た。
「これで感知の結界をすり抜けることができるぞ? ただ門はどうするのだ?」
「門は余が開ける。魔眼で見たところ巨大な錠をかけているだけのシンプルな構造だ。裏から入り込めばいい」
「スキルを使うのか?」
フーちゃんの問いかけに「ああ」と頷くアヌビス。
「余は視認している範囲内にある影を移動できるスキルがあるのだ。魔眼のスキル効果の透視があれば当然ではあるが、門の向こう側を確認できる。まあ待っていろ」
アヌビスはそう言って一呼吸置いた。
「冥影の移動」
アヌビスはそう言って自分の影に潜り込んでどこかへ姿を消してしまった。門の向こう側にあるどこかの影に移動したのだろう。数秒経つとガシャンという物音が聞こえた。そして、門が開閉される音が鳴る――。
「開いたぞ。敵はいないから先に進める」
アヌビスがそうニッと笑って見せた。私達はそのスキルの有用性に思わず拍手をしていた。そして、このワンコロが格好いいと思えた。
「褒めらるのは嬉しいがワンコロは余計だ」
そうだ――アヌビスは人の心が読めるんだった――。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
326
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる