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Qとの対峙Ⅲ

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 間違いなく奴の姿はある。しかし不思議だ。何故服が焦げていない――。まさか喰らっていないのか?

 俺が近付こうとしたときだった。ピクリとディアン公爵の指が動いた。

「今のはなかなか効いたぞ?」

 そう言ってディアン公爵は俺の方を振り向きそう言った。奴は防御系統のスキルを体の表面に膜のように張っていたのだろうか? そうじゃないとダメージが無いというのは可笑しい。効いたという事はアクティブスキル無効のスキルは持っていない事になるが――いや、それこそ演技かもしれないな。

「普通じゃ貴様は死なんらしいな」

「アルティメットスキルを試してみるか?」

「ほざけ」

 俺がそう言うとディアン公爵はスカーの後ろに回り込み宙に浮きながら頭を掴んだ。

「クソ! 何をする!」

 スカーはそう言ってもがいていた。手を振りジタバタとしているが振りほどくことができないようだ。

 俺が援護にしに行こうとしたそのときだった――。

 ズン――。

 突如としてスカーが気絶を始めた。

「一体何をしたんだ?」

「魔眼で視れば分かるんじゃないか?」

 そう言われたのでスカーの体内を見た。MPがほぼすっからかんになっている。

「MPを奪われたのか――?」

「そうだ。これも殺戮の腕ジェノサイド・アームの力だ。そしてその取り組んだMPを――」

 嫌な予感がした。そう言って向けられた右手から放たれる巨大な赤いエネルギー波は、禍々しく邪気に満ちた黒い雷を纏っていた。

 俺はすぐさま地壊クラッシュを使って地面に穴を開けて避難した。冗談じゃない。こんな強烈な攻撃を喰らったらひとたまりもない。

 耳をつんざくような轟音だった。ものすごいエネルギーなのは十分に分かるが、如何せん耳が痛くなるような音だった。

 数十秒すると音は止み、エネルギー波も消えたようだった。

「どこにいった?」

 ディアン公爵はそう言って辺りをキョロキョロとしていた。

「ここだ」

 俺はそう言って地面から姿を現すと「成程」と頷いていた。

「地面に逃げ込んだわけか」

「ああ。流石の俺でも今の攻撃を喰らったらどうなるか分からんからな」

 俺はそう言って辺りを見渡した。当然のように辺りの樹々は吹き飛んでいた。それも肉眼では判断できない程の距離がある。数キロはくだらないだろう。長さは勿論凄まじいのは勿論、横の幅も凄かった。50m近くの横幅なんて見たことが無い。アクティブスキルにしては威力が可笑しい――。

「賢明な判断だな。まあ今の威力を出すには、自分のMPだけでは厳しいから、拝借したスカーのMPも使って放った」

「その殺戮の腕ジェノサイド・アームとやらは、奪ったMPをエネルギーとして変換できるのか」

「そういう事だ」

 殺戮の腕ジェノサイド・アーム――想像以上に厄介なアーティファクトだ。こんな出鱈目なスペックの代物を十賢者じゅけんじゃの2人が造ったのか。となると、十賢者じゅけんじゃの10人のうち、2人が創世ジェスに関わっている事になる。

「そのアーティファクトは十賢者じゅけんじゃが造ったと言ったな?」

「ああ」

「誰と誰なんだ?」

「言う訳がないだろ」

「その2人は敵ってことでいいんだな?」

「まあそうなるな」

「成程。理解した」

 十賢者じゅけんじゃ――俺が会ったことがあるのは、こっちに来て会ったアーツという森妖精エルフの爺だけだ。あの爺は心に淀みなどは無かったが、人体の構造を知っている者でないと造ることができないと考えると、あのアーツという爺が殺戮の腕ジェノサイド・アームに製造に関わっていても可笑しくは無い。ただそれを医学博士の人間がやるのか? いやあるか――殺戮の腕ジェノサイド・アームによって人類の更なる躍進とか適当な事を言って始めてた計画とか言われたら、ああそうですかってなるもんな。ただ、悪用されているなら意味が無い。近年で言うと、マカロフ卿が転生者としてこの世界に現れて十年ちょっとだったが、オスプレイや、戦闘機などの空飛ぶ鉄の塊での移動手段や攻撃手段が増えた。それによって各国の戦争が激化した。まあ俺としては他国がどうなろうと知った事では無いが、俯瞰的に見れば、技術の進歩は嬉しい事ではあると同時に災いをもたらす。

創世ジェスは一体何を企んでいるんだ?」

「特に何も企んでなどいない」

 完全な嘘だ。何かを企んでいなければそもそも殺戮の腕ジェノサイド・アームなんて代物を造らない。

「ただ言えるのは世界を動かすのは我々の役目だということだ」

「俺からしたらどうでもいいが、脳内お花畑の野郎の言う事はあまり聞きたいとは思わないな」

「お花畑ではない。実際に我々が行ってきた活動は人類の更なる躍進と、世界の平和のために行われている」

「平和か――。今でも反吐が出る程平和だと思うが?」

「我々からすればまだまだ」

「そうか。まあイカれた奴の事なんてどうだっていい。俺達は任務を全うするだけだ。アンタの仮面を剥ぎ取り、依頼主のところへ連れていくだけだ」

「ほう。しかし今のところ防戦一方になっているぞ?」

「余裕でいられるのも今のうちだ」

殺戮の腕ジェノサイド・アームの強力さを知って尚余裕か――嫌いではないぞ?」

「ほざけ」

 俺はそう言って地面を蹴り上げた。本番はここからだという事を思い知らせてやる。



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