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噂を広げろⅢ
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昨日は【授け屋】の準備が出来て、ミクちゃんと2人でワインを飲みながら外国でのお忍びデートを楽しんだ。今日からはお店を開店して少しずつ噂を広めていくんだけど、普通に考えたらやる事が大掛かりだし、別にお金を取ってもいいような気もするな。
「いよいよだね」
「そうだな。無料だから躊躇はされないと思うけどそんなにお客さん来ない筈だ。それに過度なキャッチもできないから、ビラ配りばかりでしんどいと思うけど宜しくな」
「大丈夫だよ。任せて!」
そうして俺は鎧を着て騎士の格好して外へ出た。ミクちゃんは白を基調とした戦闘服で、俺の見習いという設定だ。髪をポニーテールにしているのがポイント。正直めちゃくちゃ可愛い。ご馳走様です。
そして、俺の仮の名前は天元という名前にして、ミクちゃんには、数々の魔物を倒した天元先生の戦闘スタイルを無料で伝授! 1週間限定なので今だけがチャンスですよ! と訴えかけてもらう。正直めちゃくちゃ怪しいし、日本でこれをやったら知るか馬鹿! 誰だよ天元って聞いたことがねえ! ってなるけど、この世界では究極の阻害者という強さを一発で見抜くことができる方法がある。つまり、無料だったら誰か知らないけど、鑑定士で視ることができないから、究極の阻害者を持っている筈だしちょっと話でも聞いてみようかな! ってなる筈――。
朝9時になったところでお店をスタートした。
「今なら天元先生の戦闘スキルを無料で教えることができますよ~」
と、まあミクちゃんは可愛いから案の定男共がついてきた。ちょっとイラッとしたけど、9時~12時の間だけで50人程を呼び込むことができた。しかしその中で、サイスト・クローバー侯爵の事件に関心がある人間は5人ほどしかいなかった。つまり1/10の確率だ。
「お疲れ様。思ったより人来たね~」
と言いながら、水とケバブ丼をテイクアウトしてくれたミクちゃん。しかもサラダもある――。
「流石にずっと外ってしんどいし、たまには炭水化物も摂らないとね」
「お――おう」
そう流されてお米を1年ぶりくらい食べることになった。ちょっと太りやすいから控えていたけど、筋肉を育てるには炭水化物は必須だからな。たまにはいいか。
「人は思ったより入った――つかミクちゃんが可愛いから入ったかな」
「――ナリユキ君やきもち焼いてくれているの?」
ミクちゃんはそうニヤニヤしていたので恥ずかしくなった。畜生俺の負けだ!
――いや? 何に負けたの? まあいいや。
「お――そうだな」
俺がそう言うとミクちゃんは満足気な笑みを浮かべていた。この笑顔癒しだな~。
「それにしても1/10の確率は厳しいな~。そこからさらにディアン公爵に興味が無い人となると0人だったもんな~」
そうデータを取っていると、ミクちゃんは温かいお茶を飲みながら覗き込んでいた。
「お客さんが50人。事件に関心があったのが5人。ディアン公爵に興味が無い人が0人――なかなか厳しいね」
「そうだな。でもまあやるしかない。引き続き頑張ろう!」
「そうだね!」
と、ミクちゃんはやる気が満々。正直に言うとミクちゃんの可愛さで足を止める人が多く、ミクちゃんが描いてくれた看板に目が留まる人はほとんどいなかった。寧ろミクちゃんだけの力でお客さんを呼び寄せている。ミクちゃんを少し違う場所でビラ配りさせるとどうなるだろう――。通り過ぎる人が殆どじゃないだろうか?
そう思い、俺は一度ミクちゃんを少し遠い場所でビラ配りをさせてみた。
もうすぐリミットの1時間が経とうとしていた。ミクちゃんが呼び込んだ人数が8人。俺は0人という散々な結果だ。
辺りは暗くなり今日の営業は終了となった。結局ミクちゃんでの呼び込みで来たお客さんが120人。看板に目が留まって来たお客さんが7人しかいなかった。
色々と検証できたのもいいけど、ミクちゃんの呼び込み効果が凄すぎて、どれほどのコピーと看板で宣伝しても可愛さの前では無力と体感した。
「127人か。初日にしては随分とお客さんが来たね。正直0人じゃなくてホッとしたよ」
宿の部屋に戻り2人きりの空間――。
ミクちゃんはそう胸を撫でおろしていた。しかし、俺はそれでは満足できない。ミクちゃんがいなければ7人しか来なかったという恐ろしい数字だ。何故――。
「ナリユキ君――」
そう言ってミクちゃんは俺の事をぎゅっと抱きしめてくれた。
「どうしたの? 随分と元気が無いね?」
そうか――俺落ち込んでいるのか――。自分の無力さに――。そう思うと涙が出てきていた。この世界に来てから自分のビジネスで失敗らしい失敗はなかった。いや、逆に上手くいきすぎていたんだ。ナリユキ・タテワキというブランド力は、ランベリオンを倒してからすぐに拡散した。ユーザーにはあの魔物の国を統治している転生者が作ったコーヒーやワインという事で、興味本位で買ってくれるお客さんもいたりする訳だ。あとは、ルミエールという友ができ、その友のお陰でマーズベルの商品は飛ぶように売れていった。運が良すぎただけなんだ。別に自分の実力でも何でもない――。
俺はそう思うと力が抜けていった。するとミクちゃんがぎゅっと強く抱きしめてくれる。
「大丈夫だよ。落ち着いてからでいいから対策考えよ? 何が駄目だったか」
ミクちゃんの優しい声が温かい気持ちにさせてくれた。
「うん。ありがとう」
「いよいよだね」
「そうだな。無料だから躊躇はされないと思うけどそんなにお客さん来ない筈だ。それに過度なキャッチもできないから、ビラ配りばかりでしんどいと思うけど宜しくな」
「大丈夫だよ。任せて!」
そうして俺は鎧を着て騎士の格好して外へ出た。ミクちゃんは白を基調とした戦闘服で、俺の見習いという設定だ。髪をポニーテールにしているのがポイント。正直めちゃくちゃ可愛い。ご馳走様です。
そして、俺の仮の名前は天元という名前にして、ミクちゃんには、数々の魔物を倒した天元先生の戦闘スタイルを無料で伝授! 1週間限定なので今だけがチャンスですよ! と訴えかけてもらう。正直めちゃくちゃ怪しいし、日本でこれをやったら知るか馬鹿! 誰だよ天元って聞いたことがねえ! ってなるけど、この世界では究極の阻害者という強さを一発で見抜くことができる方法がある。つまり、無料だったら誰か知らないけど、鑑定士で視ることができないから、究極の阻害者を持っている筈だしちょっと話でも聞いてみようかな! ってなる筈――。
朝9時になったところでお店をスタートした。
「今なら天元先生の戦闘スキルを無料で教えることができますよ~」
と、まあミクちゃんは可愛いから案の定男共がついてきた。ちょっとイラッとしたけど、9時~12時の間だけで50人程を呼び込むことができた。しかしその中で、サイスト・クローバー侯爵の事件に関心がある人間は5人ほどしかいなかった。つまり1/10の確率だ。
「お疲れ様。思ったより人来たね~」
と言いながら、水とケバブ丼をテイクアウトしてくれたミクちゃん。しかもサラダもある――。
「流石にずっと外ってしんどいし、たまには炭水化物も摂らないとね」
「お――おう」
そう流されてお米を1年ぶりくらい食べることになった。ちょっと太りやすいから控えていたけど、筋肉を育てるには炭水化物は必須だからな。たまにはいいか。
「人は思ったより入った――つかミクちゃんが可愛いから入ったかな」
「――ナリユキ君やきもち焼いてくれているの?」
ミクちゃんはそうニヤニヤしていたので恥ずかしくなった。畜生俺の負けだ!
――いや? 何に負けたの? まあいいや。
「お――そうだな」
俺がそう言うとミクちゃんは満足気な笑みを浮かべていた。この笑顔癒しだな~。
「それにしても1/10の確率は厳しいな~。そこからさらにディアン公爵に興味が無い人となると0人だったもんな~」
そうデータを取っていると、ミクちゃんは温かいお茶を飲みながら覗き込んでいた。
「お客さんが50人。事件に関心があったのが5人。ディアン公爵に興味が無い人が0人――なかなか厳しいね」
「そうだな。でもまあやるしかない。引き続き頑張ろう!」
「そうだね!」
と、ミクちゃんはやる気が満々。正直に言うとミクちゃんの可愛さで足を止める人が多く、ミクちゃんが描いてくれた看板に目が留まる人はほとんどいなかった。寧ろミクちゃんだけの力でお客さんを呼び寄せている。ミクちゃんを少し違う場所でビラ配りさせるとどうなるだろう――。通り過ぎる人が殆どじゃないだろうか?
そう思い、俺は一度ミクちゃんを少し遠い場所でビラ配りをさせてみた。
もうすぐリミットの1時間が経とうとしていた。ミクちゃんが呼び込んだ人数が8人。俺は0人という散々な結果だ。
辺りは暗くなり今日の営業は終了となった。結局ミクちゃんでの呼び込みで来たお客さんが120人。看板に目が留まって来たお客さんが7人しかいなかった。
色々と検証できたのもいいけど、ミクちゃんの呼び込み効果が凄すぎて、どれほどのコピーと看板で宣伝しても可愛さの前では無力と体感した。
「127人か。初日にしては随分とお客さんが来たね。正直0人じゃなくてホッとしたよ」
宿の部屋に戻り2人きりの空間――。
ミクちゃんはそう胸を撫でおろしていた。しかし、俺はそれでは満足できない。ミクちゃんがいなければ7人しか来なかったという恐ろしい数字だ。何故――。
「ナリユキ君――」
そう言ってミクちゃんは俺の事をぎゅっと抱きしめてくれた。
「どうしたの? 随分と元気が無いね?」
そうか――俺落ち込んでいるのか――。自分の無力さに――。そう思うと涙が出てきていた。この世界に来てから自分のビジネスで失敗らしい失敗はなかった。いや、逆に上手くいきすぎていたんだ。ナリユキ・タテワキというブランド力は、ランベリオンを倒してからすぐに拡散した。ユーザーにはあの魔物の国を統治している転生者が作ったコーヒーやワインという事で、興味本位で買ってくれるお客さんもいたりする訳だ。あとは、ルミエールという友ができ、その友のお陰でマーズベルの商品は飛ぶように売れていった。運が良すぎただけなんだ。別に自分の実力でも何でもない――。
俺はそう思うと力が抜けていった。するとミクちゃんがぎゅっと強く抱きしめてくれる。
「大丈夫だよ。落ち着いてからでいいから対策考えよ? 何が駄目だったか」
ミクちゃんの優しい声が温かい気持ちにさせてくれた。
「うん。ありがとう」
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