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真の実力Ⅲ
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意識が朦朧としてきている。痛い――。
そして一番は、今の攻撃で魔真王が解除されてしまった。今にも眠りにつきそうだ。
「何としてでも奴を食い止めるのだ!」
「カルディアばかりに任せてはおれん! 我の力を存分にぶつけてやる! 粉砕してくれるわ!」
スカーとカリブデウスがそう言って神樹の巨人に向かって行った。2人の瞳には覚悟が宿っていた。まるで燃え尽きるのを分かっているような目だ。
「よせ――止めろ――」
そう声にしてみたが2人に俺の声は届かない。体は大声を出せるほどの余裕が無いみたいだ。
「クソ――このままだと犬死にするぞ」
実際、神樹の巨人の攻撃を全て避けることができずに直撃してしまっている2人。一発喰らっただけで走馬灯が見える程の威力の筈だ。なのにあの2人は全身血まみれになりながらも立ち向かっていく。フラフラになりながらもだ――。
「だ……大丈夫か……?」
そう声をかけてきたのはスカーは俺の右隣りに立った。
「あんな化物と戦っていたのか。よく腕を吹き飛ばしたものだ」
カリブデウスはそう言って俺の左隣に立つ。
「どうしてお前達――」
俺は重い体を起こして、全身血まみれの2人にそう問いかけた。
「どうしてって――拙僧の仲間だろう? 仮にもパーティーだ」
「腹は立つが同じ釜の飯を食っているからな。それにあんな化物と戦っていたのは、お前が強いという証明だ。実力を認めざるを得ない」
カリブデウスはそうらしくない回答をしてきた。神樹の巨人と戦っていれば、自分が確実に死ぬことを悟っているのだろう。
「いや俺は無力だよ……」
俺がそう言うと、カリブデウスとスカーは目を丸くさせて驚いていた。
「らしくないことを」
「事実だ。ここ最近負けてばかりだからな」
俺が息を切らしながらそう言うと、カリブデウスが俺を睨めつけてきた。そして――。
パン!
と、痛烈な痛みと衝撃が頬に感じた。カリブデウスに俺はビンタをされたようだ。
「弱音を吐くな! 目の前の敵に集中しろ! やれる事を全力でやり遂げるのだ! 我はいくぞ」
そう吐き捨ててカリブデウスは翼を広げて神樹の巨人に向かった。
「諦めるな。確かに魔真王は解けているかもしれないが、まだ動けている!」
スカーが俺にそう俺を鼓舞した。確かに、前ならば使ったら暴走するし、魔真王が解けた瞬間動けなくてそのまま眠りについてしまう。けど、今は何故か動くことができている――。それは奇跡なのか、成長なのかは定かではない。
「拙僧も立ち向かうぞ。カリブデウスの護衛をせねば」
スカーはそう言って神樹の巨人の足元で獄炎で攻撃を行っていた。当然、神樹の巨人は足元にいるスカーを踏みつけようとしていた。
「クソ――」
体が動かない。そう思っていた時の事だった。
カリブデウスが神樹の巨人の拳を喰らい、スカーが神樹の巨人の足で踏みつけられてしまった。
「な……」
ここから見える光景はまさに絶望的だった。地面に横たわる2人の心臓の動きが止まっていた。
「今の攻撃だと2人は無事ではないだろうね。さあ君はどうする? 今の君じゃ残念ながら僕には勝てないよ。ものすごく楽しかったけどね」
レガトゥスの台詞と共に、神樹の巨人は雄叫びをあげていた。この心から湧き上がる激情は一体何だ? 俺は自分の弱さに益々嫌気がさした。それと同時に自分の弱さに怒りを覚えた。元々は俺達が売った喧嘩だ。怒りたくなるのは相手の方だろう。俺も何人か殺してしまったしな――だから余計に悔しいんだ。俺が2人を守ることができなかった――ただそれだけが悔しかった。
「俺は途中で戦う事を放棄した。次はどうするかを考えなかった。それが何よりの敗因だ。だから俺は全力で潰す!」
「仲間への弔いかい?」
「それもあるな。しかし、売った喧嘩で仲間を殺されてお前を恨む道理は無いと思っている。問題はお前という存在に勝つか負けるか。自分との戦いでもある」
すると、レガトゥスは口元が緩んだ。
「プライドの塊かと思えば案外素直なんだね。益々気に入ったよ」
「それはどうも」
自分への怒りが収まらず、気付けば体がまた軽くなっていた。魔眼の効力も少し回復している。顔に無かった紋様が、また広がっていく感覚もした。つまり俺はまた魔真王が発動したんだ。
「もう一度浴びせてやるよ。その神樹の巨人とやらを粉々に砕いてやる」
「やってみなよ」
レガトゥスが神樹の巨人に指示を出して、神樹の巨人の手で俺を叩きつけようとしていた。
俺はありったけのMPを手に集中させた。
「魔真王の混沌玉!」
俺は渾身の力を込めた悪の混沌玉の上位互換。魔真王の混沌玉を放った。俺は被害を少なくするために、エネルギーの球体そのもの大きさは10m程の小さいサイズにした。しかし込められているエネルギーは悪の混沌玉の数倍の威力を誇る。これで神樹の巨人が生きているならばまた別の方法を考えるしかない。
「何だこのとてつもないエネルギーは!?」
「消えろ」
俺がそう言うと神樹の巨人に直撃するなり、神樹の巨人の腹部を貫いた。そして魔真王の混沌玉はそのまま空へと飛んでいく。
完全に倒れ込んだ神樹の巨人。息を切らしながらも笑みを浮かべて立っているレガトゥス――。
どうだ。やったか――?
そして一番は、今の攻撃で魔真王が解除されてしまった。今にも眠りにつきそうだ。
「何としてでも奴を食い止めるのだ!」
「カルディアばかりに任せてはおれん! 我の力を存分にぶつけてやる! 粉砕してくれるわ!」
スカーとカリブデウスがそう言って神樹の巨人に向かって行った。2人の瞳には覚悟が宿っていた。まるで燃え尽きるのを分かっているような目だ。
「よせ――止めろ――」
そう声にしてみたが2人に俺の声は届かない。体は大声を出せるほどの余裕が無いみたいだ。
「クソ――このままだと犬死にするぞ」
実際、神樹の巨人の攻撃を全て避けることができずに直撃してしまっている2人。一発喰らっただけで走馬灯が見える程の威力の筈だ。なのにあの2人は全身血まみれになりながらも立ち向かっていく。フラフラになりながらもだ――。
「だ……大丈夫か……?」
そう声をかけてきたのはスカーは俺の右隣りに立った。
「あんな化物と戦っていたのか。よく腕を吹き飛ばしたものだ」
カリブデウスはそう言って俺の左隣に立つ。
「どうしてお前達――」
俺は重い体を起こして、全身血まみれの2人にそう問いかけた。
「どうしてって――拙僧の仲間だろう? 仮にもパーティーだ」
「腹は立つが同じ釜の飯を食っているからな。それにあんな化物と戦っていたのは、お前が強いという証明だ。実力を認めざるを得ない」
カリブデウスはそうらしくない回答をしてきた。神樹の巨人と戦っていれば、自分が確実に死ぬことを悟っているのだろう。
「いや俺は無力だよ……」
俺がそう言うと、カリブデウスとスカーは目を丸くさせて驚いていた。
「らしくないことを」
「事実だ。ここ最近負けてばかりだからな」
俺が息を切らしながらそう言うと、カリブデウスが俺を睨めつけてきた。そして――。
パン!
と、痛烈な痛みと衝撃が頬に感じた。カリブデウスに俺はビンタをされたようだ。
「弱音を吐くな! 目の前の敵に集中しろ! やれる事を全力でやり遂げるのだ! 我はいくぞ」
そう吐き捨ててカリブデウスは翼を広げて神樹の巨人に向かった。
「諦めるな。確かに魔真王は解けているかもしれないが、まだ動けている!」
スカーが俺にそう俺を鼓舞した。確かに、前ならば使ったら暴走するし、魔真王が解けた瞬間動けなくてそのまま眠りについてしまう。けど、今は何故か動くことができている――。それは奇跡なのか、成長なのかは定かではない。
「拙僧も立ち向かうぞ。カリブデウスの護衛をせねば」
スカーはそう言って神樹の巨人の足元で獄炎で攻撃を行っていた。当然、神樹の巨人は足元にいるスカーを踏みつけようとしていた。
「クソ――」
体が動かない。そう思っていた時の事だった。
カリブデウスが神樹の巨人の拳を喰らい、スカーが神樹の巨人の足で踏みつけられてしまった。
「な……」
ここから見える光景はまさに絶望的だった。地面に横たわる2人の心臓の動きが止まっていた。
「今の攻撃だと2人は無事ではないだろうね。さあ君はどうする? 今の君じゃ残念ながら僕には勝てないよ。ものすごく楽しかったけどね」
レガトゥスの台詞と共に、神樹の巨人は雄叫びをあげていた。この心から湧き上がる激情は一体何だ? 俺は自分の弱さに益々嫌気がさした。それと同時に自分の弱さに怒りを覚えた。元々は俺達が売った喧嘩だ。怒りたくなるのは相手の方だろう。俺も何人か殺してしまったしな――だから余計に悔しいんだ。俺が2人を守ることができなかった――ただそれだけが悔しかった。
「俺は途中で戦う事を放棄した。次はどうするかを考えなかった。それが何よりの敗因だ。だから俺は全力で潰す!」
「仲間への弔いかい?」
「それもあるな。しかし、売った喧嘩で仲間を殺されてお前を恨む道理は無いと思っている。問題はお前という存在に勝つか負けるか。自分との戦いでもある」
すると、レガトゥスは口元が緩んだ。
「プライドの塊かと思えば案外素直なんだね。益々気に入ったよ」
「それはどうも」
自分への怒りが収まらず、気付けば体がまた軽くなっていた。魔眼の効力も少し回復している。顔に無かった紋様が、また広がっていく感覚もした。つまり俺はまた魔真王が発動したんだ。
「もう一度浴びせてやるよ。その神樹の巨人とやらを粉々に砕いてやる」
「やってみなよ」
レガトゥスが神樹の巨人に指示を出して、神樹の巨人の手で俺を叩きつけようとしていた。
俺はありったけのMPを手に集中させた。
「魔真王の混沌玉!」
俺は渾身の力を込めた悪の混沌玉の上位互換。魔真王の混沌玉を放った。俺は被害を少なくするために、エネルギーの球体そのもの大きさは10m程の小さいサイズにした。しかし込められているエネルギーは悪の混沌玉の数倍の威力を誇る。これで神樹の巨人が生きているならばまた別の方法を考えるしかない。
「何だこのとてつもないエネルギーは!?」
「消えろ」
俺がそう言うと神樹の巨人に直撃するなり、神樹の巨人の腹部を貫いた。そして魔真王の混沌玉はそのまま空へと飛んでいく。
完全に倒れ込んだ神樹の巨人。息を切らしながらも笑みを浮かべて立っているレガトゥス――。
どうだ。やったか――?
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