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英雄の復活Ⅱ
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「コヴィー・S・ウィズダム……」
「ですか……?」
キョトンとした表情になった者が大半だ。部屋が凍り付いた空気に変わったのも、どう反応していいか分からないからだろう。
「何をしに来たんだ? 地下世界にいるんじゃなかったのか?」
そう問いかけてきたのはランベリオンだ。
「そうだ。目的はどうやら黒龍が持つユニークスキル、破壊神を奪う事だったらしい。何で
ずっと身を潜めていたのか分からないけど、俺の前で黒龍の破壊神を奪い、そのまま黒龍を絶命させた。これが俺が気絶する前に起きた出来事だ」
「気絶――何か攻撃を受けたのですか?」
アリシアにそう問いかけられた俺は首を左右に振った。
「いや。恥ずかしい話ただの恐怖心だ」
「ナリユキ様が――」
「恐怖心で気絶――?」
俺の幹部もそうだけど、青龍さんもレンさんも目を丸くして驚いた様子だった。
「閣下が恐怖ねえ――化物になったと思っていたがまだまだ人間で安心したよ」
と、手元にあるコーヒーを口に運んだマカロフ卿。会議の時は各々好きなドリンクを選んで出席できるんだけど、マカロフ卿はいつもコーヒーを飲んでいる。まあ俺もだけどな。
「正直なところ、我もミク殿もアリシアも相当強くなったと思う。それを遥かに凌駕し黒龍と対等に戦ったナリユキ殿さえ恐怖を覚える程の手練れなのか? コヴィー・S・ウィズダムは」
「そうだな。そもそも黒龍とは対等に戦えていないよ。破壊神を使った状態で戦えたのはデア一人。俺、ミクちゃん、青龍さん、アスモデウスさん、ルシファーはミクちゃんの強化があっても勝てやしない次元だった」
「ナリユキ殿の言う通りだ。デア殿の天衣無縫がなければ、決定的なダメージを与える事はできなかったからな。今回の戦いはデア殿の参戦が大きいと言える」
「青龍さんの言う通りだ。カルベリアツリーのダンジョンを攻略してしまった以上、これ以上ダンジョンに頼ってのレベルアップも難しいから、俺とミクちゃんの伸びしろにはそろそろ限界がある。あとは、実務経験を積んでユニークスキルの覚醒をするくらいしか無いと思っている。コヴィー・S・ウィズダムがもしマーズベルに侵攻して来たら俺達は確実に全滅だ」
俺がそう顎の前で腕を組みながら告げると、皆は固唾を飲みこんでいた。
「だから皆にはもっと強くなってもらうし、俺も強くなれる方法を模索する。まだまだ戦いは終わらない。コヴィー・S・ウィズダムとミロクを倒すまでは」
一瞬、空気が重くなったがそれをぶち破ったのはコイツだった。
「よおし! 皆の者! やってやろうではないか!」
そう言って拳を突きあげたのはランベリオンだった。
「よっしゃあ! 俺はもっと強くなって魔眼を覚醒させたるねん! んでもって魔真王使えるようになったる!」
「それを使えるようになったら魔族の私は少しプライドが傷付きますね」
と、レンさんの冗談を真に受けて苦笑を浮かべるベリト。ベリトも邪眼ではなく魔眼に覚醒してほしいところだ。ランベリオン、アリシア以外にもまだまだ伸びしろのある幹部達はいるし、フォルボスだって鍛え上げれば相当な戦力になる。うちの国にはダイヤの原石ばかりだ。
「私はそうだな。とりあえずこの飛竜を焼き鳥に出来るくらいには実力を上げるか」
と、ランベリオンに喧嘩を吹っ掛けるマカロフ卿。
「我がそのような安い挑発に乗るとでも思ったか」
「何だ? 怖気づいたのか? 焼き鳥になる想像でもしたか?」
と、ニヤニヤと笑みを浮かべながらランベリオンを挑発するマカロフ卿。ランベリオンも「ほほう」と表情を強張らせている。つうかちょっとピキッてる。
「喧嘩なら後でな」
俺がそう呟くとランベリオンは拳を下してフンと鼻を鳴らした。一方、マカロフ卿はしてやったりと笑みを浮かべていた。本当に何がしたいんだこのオッサン。絶対に面白がってるだろ。
「しばらく俺は創世に関する情報収集の外交と、マーズベルの国家戦力増強に注力したい。まずは主要戦力の皆には次なるステップを踏んでもらうため課題を与える。分かりやすい例で言うなら、ベリトは邪眼を魔眼に進化させるって事だな。正直なところ、魔真王には魔王の資質が必要だから、これは先天的なもので後天的に出来るものではないからそこまでは求めない」
「かしこまりました。ナリユキ様――引いてはマーズベルの防衛大臣の役職に恥じぬように精進致します」
「ああ。期待しているぞ。何ならマルファスにでも教わってもいいかもな。どうですか? 青龍さん」
「別に構わない。ベリトが必要なら余から進言しておこう」
「感謝致します。是非宜しくお願い致します」
ベリトはそう言って頭を下げた。
「気にするな。マーズベルの国家軍事力を上げる助力ができるならいくらでもしよう」
「その言葉を聞けるだけで充分ですよ青龍さん」
「そうか」
青龍さんはそう言ってニッと優しい笑みを浮かべていた。
「俺達が出来る事は何かありますか?」
「レンさん達も俺達に混じって戦闘値を上げておいた方がいいかもな。レンさんは攻撃特化だから、攻撃スキルの数を増やす事と、攻撃スキルの攻撃力強化。あと一つは魔眼にもっと慣れる事くらいかな」
「よっしゃ。任せて」
「頼りにしてる。剣技に更に磨きをかけたい人は俺が稽古を付けてやる。俺はルシファーの主要剣技スキルを習得している事もあり力になると思う。ランベリオンとベルゾーグは刀との相性が良いスキルを保有しているし、俺がみっちり叩き込んでやる」
「ああ。宜しく頼む」
そう言って二人は俺に頭を下げてきた。
「マカロフ卿に個人にも課題は与えるけど、民間人の組織力や軍事力を上げてほしい。元スペツナズの軍人で、反乱軍のリーダーなら容易い事だろ?」
俺がそう言うとマカロフ卿は少し不安気な表情を浮かべていた。
「ですか……?」
キョトンとした表情になった者が大半だ。部屋が凍り付いた空気に変わったのも、どう反応していいか分からないからだろう。
「何をしに来たんだ? 地下世界にいるんじゃなかったのか?」
そう問いかけてきたのはランベリオンだ。
「そうだ。目的はどうやら黒龍が持つユニークスキル、破壊神を奪う事だったらしい。何で
ずっと身を潜めていたのか分からないけど、俺の前で黒龍の破壊神を奪い、そのまま黒龍を絶命させた。これが俺が気絶する前に起きた出来事だ」
「気絶――何か攻撃を受けたのですか?」
アリシアにそう問いかけられた俺は首を左右に振った。
「いや。恥ずかしい話ただの恐怖心だ」
「ナリユキ様が――」
「恐怖心で気絶――?」
俺の幹部もそうだけど、青龍さんもレンさんも目を丸くして驚いた様子だった。
「閣下が恐怖ねえ――化物になったと思っていたがまだまだ人間で安心したよ」
と、手元にあるコーヒーを口に運んだマカロフ卿。会議の時は各々好きなドリンクを選んで出席できるんだけど、マカロフ卿はいつもコーヒーを飲んでいる。まあ俺もだけどな。
「正直なところ、我もミク殿もアリシアも相当強くなったと思う。それを遥かに凌駕し黒龍と対等に戦ったナリユキ殿さえ恐怖を覚える程の手練れなのか? コヴィー・S・ウィズダムは」
「そうだな。そもそも黒龍とは対等に戦えていないよ。破壊神を使った状態で戦えたのはデア一人。俺、ミクちゃん、青龍さん、アスモデウスさん、ルシファーはミクちゃんの強化があっても勝てやしない次元だった」
「ナリユキ殿の言う通りだ。デア殿の天衣無縫がなければ、決定的なダメージを与える事はできなかったからな。今回の戦いはデア殿の参戦が大きいと言える」
「青龍さんの言う通りだ。カルベリアツリーのダンジョンを攻略してしまった以上、これ以上ダンジョンに頼ってのレベルアップも難しいから、俺とミクちゃんの伸びしろにはそろそろ限界がある。あとは、実務経験を積んでユニークスキルの覚醒をするくらいしか無いと思っている。コヴィー・S・ウィズダムがもしマーズベルに侵攻して来たら俺達は確実に全滅だ」
俺がそう顎の前で腕を組みながら告げると、皆は固唾を飲みこんでいた。
「だから皆にはもっと強くなってもらうし、俺も強くなれる方法を模索する。まだまだ戦いは終わらない。コヴィー・S・ウィズダムとミロクを倒すまでは」
一瞬、空気が重くなったがそれをぶち破ったのはコイツだった。
「よおし! 皆の者! やってやろうではないか!」
そう言って拳を突きあげたのはランベリオンだった。
「よっしゃあ! 俺はもっと強くなって魔眼を覚醒させたるねん! んでもって魔真王使えるようになったる!」
「それを使えるようになったら魔族の私は少しプライドが傷付きますね」
と、レンさんの冗談を真に受けて苦笑を浮かべるベリト。ベリトも邪眼ではなく魔眼に覚醒してほしいところだ。ランベリオン、アリシア以外にもまだまだ伸びしろのある幹部達はいるし、フォルボスだって鍛え上げれば相当な戦力になる。うちの国にはダイヤの原石ばかりだ。
「私はそうだな。とりあえずこの飛竜を焼き鳥に出来るくらいには実力を上げるか」
と、ランベリオンに喧嘩を吹っ掛けるマカロフ卿。
「我がそのような安い挑発に乗るとでも思ったか」
「何だ? 怖気づいたのか? 焼き鳥になる想像でもしたか?」
と、ニヤニヤと笑みを浮かべながらランベリオンを挑発するマカロフ卿。ランベリオンも「ほほう」と表情を強張らせている。つうかちょっとピキッてる。
「喧嘩なら後でな」
俺がそう呟くとランベリオンは拳を下してフンと鼻を鳴らした。一方、マカロフ卿はしてやったりと笑みを浮かべていた。本当に何がしたいんだこのオッサン。絶対に面白がってるだろ。
「しばらく俺は創世に関する情報収集の外交と、マーズベルの国家戦力増強に注力したい。まずは主要戦力の皆には次なるステップを踏んでもらうため課題を与える。分かりやすい例で言うなら、ベリトは邪眼を魔眼に進化させるって事だな。正直なところ、魔真王には魔王の資質が必要だから、これは先天的なもので後天的に出来るものではないからそこまでは求めない」
「かしこまりました。ナリユキ様――引いてはマーズベルの防衛大臣の役職に恥じぬように精進致します」
「ああ。期待しているぞ。何ならマルファスにでも教わってもいいかもな。どうですか? 青龍さん」
「別に構わない。ベリトが必要なら余から進言しておこう」
「感謝致します。是非宜しくお願い致します」
ベリトはそう言って頭を下げた。
「気にするな。マーズベルの国家軍事力を上げる助力ができるならいくらでもしよう」
「その言葉を聞けるだけで充分ですよ青龍さん」
「そうか」
青龍さんはそう言ってニッと優しい笑みを浮かべていた。
「俺達が出来る事は何かありますか?」
「レンさん達も俺達に混じって戦闘値を上げておいた方がいいかもな。レンさんは攻撃特化だから、攻撃スキルの数を増やす事と、攻撃スキルの攻撃力強化。あと一つは魔眼にもっと慣れる事くらいかな」
「よっしゃ。任せて」
「頼りにしてる。剣技に更に磨きをかけたい人は俺が稽古を付けてやる。俺はルシファーの主要剣技スキルを習得している事もあり力になると思う。ランベリオンとベルゾーグは刀との相性が良いスキルを保有しているし、俺がみっちり叩き込んでやる」
「ああ。宜しく頼む」
そう言って二人は俺に頭を下げてきた。
「マカロフ卿に個人にも課題は与えるけど、民間人の組織力や軍事力を上げてほしい。元スペツナズの軍人で、反乱軍のリーダーなら容易い事だろ?」
俺がそう言うとマカロフ卿は少し不安気な表情を浮かべていた。
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