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英雄の復活Ⅳ
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俺と青龍さんでミクちゃんの病室へと転移イヤリングで移動した。ミクちゃんはベッドで寝たきりの状態ではあるが、穏やかな表情で眠りについてた。顔色も悪くない。至って健康だ。
「ナリユキ様、青龍様。大変失礼致しました。遅くなりました」
この施設の責任者――まあ簡単に言うと今はこの医療施設の院長を務めさせているリーズが、助手の森妖精二人を連れて来て慌てて入室してきた。
「いや、早いだろ」
俺と青龍さんが口を揃えてそう伝えると、「そうでしたか?」と首を傾げてたリーズ。
「まずは復活おめでとうございます。ご無事で何よりです」
「ありがとう。そんでミクちゃん、アスモデウスさん、デア、ルシファーの容態はどんな感じだ?」
「ミク様、デア様、アスモデウス様は容態は安定しており、特に心配するような点は今のところございません。皆さまZ級ということもあり、回復スピードが恐ろしく早いです。ただ、ルシファー様に関しては体の損傷が酷かったのでお目覚めになるまでは数日かかると思います」
「そうか。ありがとう」
「とんでもございません。ナリユキ様はお身体の調子はどうですか?」
「悪くないよ」
「左様でございましたか。それは何よりです」
とリーズは安堵した表情を浮かべていた。
「じゃあ俺達は他の皆の様子もちらっと見て帰る事にするよ」
「同行させていただきます」
と、リーズがついて来ようとしたので――。
「大丈夫。俺達だけでいいよ。持ち場に戻って」
「かしこまりました。ご配慮頂きまして誠にありがとうございます」
「じゃあ行くわ」
俺はリーズにそう言い残してこの部屋を出た。あとは天眼で皆の様子を見ておけば問題ないだろう。
その後に、アスモデウスさん、デアの様子を見た後ルシファーの部屋へと訪れた。勿論、パイモンはこの医務室にずっとルシファーを見守っているという状況だ。
ルシファーの容態としては顔色は良くはない。心電図も健常者と比較して大分緩やかだった。生死の瀬戸際とまではいかないが、身体への損傷が激しいのが一目で分かる。顔の一部と上半身には包帯が巻かれていた。リーズの治癒をもってしてでも、包帯などの原始的な処置が必要だったという訳だ。
「大分酷いようだな」
俺がそう呟くとパイモンが俺を睨めつけてきた。
「お前達が巻き込んだんだろ! 責任を取れ!」
と、パイモンは俺に酷く強い当たりをしてきた。まあ無理も無い。自分の主がこんな状態で帰ってきたら、気が気ではないのは当然の事だ。
「申し訳ない」
俺がそう深々と頭を下げるしかなかった。
「もういいよ。出て行って」
パイモンの言葉に何か言いたげだった青龍さんだったが、グッとこらえて「行こうか」と言ってくれた。
「ええ」
パイモンは泣いてはいなかったが顔がぐしゃぐしゃになる程泣いた形跡があった。最初は主のあんなボロボロになった姿を見て、どうか死なないでと願っていたに違いない。そして、命に別状は無いと聞いて少しずつ平静を取り戻した――。そんなところだろう。
俺達は院内のエントランスにある売店でコーヒーを購入して後、ソファーに腰をかける事にした。勿論、俺達が座っていると、院内にいるスタッフや患者からの視線を感じるが、青龍さんがいる事もあってか、話しかけてくる人達はいなかった。
「酷く怒られたな」
青龍さんの第一声はそれだった。
「まあ無理も無いでしょう。巻き込んでしまったのは事実ですし。青龍さん、何か言いたげでしたよね?」
「ナリユキ殿を擁護しようとしたのだ。しかし、ルシファーとパイモンは元々魔界の住人。地上の問題に巻き込んだのは事実だ。だから、ナリユキ殿を擁護してもそれは余の感情に過ぎないので、パイモンからすればどうでもいいのだ。だから擁護せず、黙って出ていく事を選択した」
「成程」
「パイモンの気持ちに少しでも寄り添う。従う。それが賢明な判断だと余は思った」
「まあ、殴りかかってこなかったのは意外でしたけどね」
「確かにな」
青龍さんはそう言って笑みを浮かべた。
「それにしてもルシファーの怪我はなかなか酷いものだったな」
「ええ――。俺がコヴィー・S・ウィズダムと対峙した時はもっと酷い怪我でしたよ。何で立っていられるのか分からないくらいに――」
「そのようだな」
「ルシファーの力が無ければ俺は英雄ノ神を使う事ができなかった。ルシファーがあの場面で起き上ったから大きく運命が変わったんです」
「もしナリユキ殿が倒れてしまい、そのまま黒龍が暴れていたらどうなっていた事やら――」
「世界の終わり――だったかもしれませんね」
そう考えていた時。ある事がよぎった。ミロクは動かなかったのだろうか? という疑問だ。ミロクはミロクなりに正義があるのであれば、黒龍が世界を荒らすのはミロクの正義に反する気がするけど――。
「どうした? ナリユキ殿」
「いや、何でもないです。そろそろ行きましょうか」
「ああそうだな」
ミクちゃん達は勿論だけど、ルシファーが早く回復する事を祈る。ルシファーが回復したら、パイモン連れてどこか美味い飯でも連れて行きたいけど――。そんな空気になるかどうか不安だな。
「ナリユキ様、青龍様。大変失礼致しました。遅くなりました」
この施設の責任者――まあ簡単に言うと今はこの医療施設の院長を務めさせているリーズが、助手の森妖精二人を連れて来て慌てて入室してきた。
「いや、早いだろ」
俺と青龍さんが口を揃えてそう伝えると、「そうでしたか?」と首を傾げてたリーズ。
「まずは復活おめでとうございます。ご無事で何よりです」
「ありがとう。そんでミクちゃん、アスモデウスさん、デア、ルシファーの容態はどんな感じだ?」
「ミク様、デア様、アスモデウス様は容態は安定しており、特に心配するような点は今のところございません。皆さまZ級ということもあり、回復スピードが恐ろしく早いです。ただ、ルシファー様に関しては体の損傷が酷かったのでお目覚めになるまでは数日かかると思います」
「そうか。ありがとう」
「とんでもございません。ナリユキ様はお身体の調子はどうですか?」
「悪くないよ」
「左様でございましたか。それは何よりです」
とリーズは安堵した表情を浮かべていた。
「じゃあ俺達は他の皆の様子もちらっと見て帰る事にするよ」
「同行させていただきます」
と、リーズがついて来ようとしたので――。
「大丈夫。俺達だけでいいよ。持ち場に戻って」
「かしこまりました。ご配慮頂きまして誠にありがとうございます」
「じゃあ行くわ」
俺はリーズにそう言い残してこの部屋を出た。あとは天眼で皆の様子を見ておけば問題ないだろう。
その後に、アスモデウスさん、デアの様子を見た後ルシファーの部屋へと訪れた。勿論、パイモンはこの医務室にずっとルシファーを見守っているという状況だ。
ルシファーの容態としては顔色は良くはない。心電図も健常者と比較して大分緩やかだった。生死の瀬戸際とまではいかないが、身体への損傷が激しいのが一目で分かる。顔の一部と上半身には包帯が巻かれていた。リーズの治癒をもってしてでも、包帯などの原始的な処置が必要だったという訳だ。
「大分酷いようだな」
俺がそう呟くとパイモンが俺を睨めつけてきた。
「お前達が巻き込んだんだろ! 責任を取れ!」
と、パイモンは俺に酷く強い当たりをしてきた。まあ無理も無い。自分の主がこんな状態で帰ってきたら、気が気ではないのは当然の事だ。
「申し訳ない」
俺がそう深々と頭を下げるしかなかった。
「もういいよ。出て行って」
パイモンの言葉に何か言いたげだった青龍さんだったが、グッとこらえて「行こうか」と言ってくれた。
「ええ」
パイモンは泣いてはいなかったが顔がぐしゃぐしゃになる程泣いた形跡があった。最初は主のあんなボロボロになった姿を見て、どうか死なないでと願っていたに違いない。そして、命に別状は無いと聞いて少しずつ平静を取り戻した――。そんなところだろう。
俺達は院内のエントランスにある売店でコーヒーを購入して後、ソファーに腰をかける事にした。勿論、俺達が座っていると、院内にいるスタッフや患者からの視線を感じるが、青龍さんがいる事もあってか、話しかけてくる人達はいなかった。
「酷く怒られたな」
青龍さんの第一声はそれだった。
「まあ無理も無いでしょう。巻き込んでしまったのは事実ですし。青龍さん、何か言いたげでしたよね?」
「ナリユキ殿を擁護しようとしたのだ。しかし、ルシファーとパイモンは元々魔界の住人。地上の問題に巻き込んだのは事実だ。だから、ナリユキ殿を擁護してもそれは余の感情に過ぎないので、パイモンからすればどうでもいいのだ。だから擁護せず、黙って出ていく事を選択した」
「成程」
「パイモンの気持ちに少しでも寄り添う。従う。それが賢明な判断だと余は思った」
「まあ、殴りかかってこなかったのは意外でしたけどね」
「確かにな」
青龍さんはそう言って笑みを浮かべた。
「それにしてもルシファーの怪我はなかなか酷いものだったな」
「ええ――。俺がコヴィー・S・ウィズダムと対峙した時はもっと酷い怪我でしたよ。何で立っていられるのか分からないくらいに――」
「そのようだな」
「ルシファーの力が無ければ俺は英雄ノ神を使う事ができなかった。ルシファーがあの場面で起き上ったから大きく運命が変わったんです」
「もしナリユキ殿が倒れてしまい、そのまま黒龍が暴れていたらどうなっていた事やら――」
「世界の終わり――だったかもしれませんね」
そう考えていた時。ある事がよぎった。ミロクは動かなかったのだろうか? という疑問だ。ミロクはミロクなりに正義があるのであれば、黒龍が世界を荒らすのはミロクの正義に反する気がするけど――。
「どうした? ナリユキ殿」
「いや、何でもないです。そろそろ行きましょうか」
「ああそうだな」
ミクちゃん達は勿論だけど、ルシファーが早く回復する事を祈る。ルシファーが回復したら、パイモン連れてどこか美味い飯でも連れて行きたいけど――。そんな空気になるかどうか不安だな。
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