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「無理ですね」
「なに!?」
「無理、と申し上げました。姉への伝言も無理ですが、婚約破棄の取り消しなど不可能です」
「馬鹿な!? 何故貴様に無理だとわかる!?」
ここまであからさまに頼みを断られた事など無いのだろう。エーベルハルトが声を荒げるが、既に王太子としての威厳など微塵も感じていないヘンリックは少しも動じることが無い。呆れた様な顔をエーベルハルトへ向けると、少し考える様な仕草をした。
「そうですね…………理由としては三つ上げられますね」
「理由!? 一体どんな理由だ」
「まず一つ目。……姉はこの学園の生徒ではありません。従って生徒会役員への復帰は無理です」
「……は? 何を馬鹿な」
確かにこの二週間はクラウディアの姿を見ていなかった。だが、それはクラウディアが拗ねて授業をサボっているか、婚約破棄された恥ずかしさから引きこもっているのだと思っていた。このヘンリックの言い方だと違うというのか。
「先日殿下が姉に婚約破棄を宣言した日、姉は他の書類と同時に退学届を提出しました。学園長により正式に受理されています。ですのでもう二度とこの学園に来ることはありませんよ」
「……な、んだと? 卒業しないとはどういうことだ!?」
王立の学園は貴族にとってステータスだ。どんなに貧困でも爵位持ちであれば学園に子息息女を通わせなければならない。学園を卒業していないと家や当人に問題があると見られて、良縁が望めないからだ。学費は結構かかるし、成績次第では留年もありえるので辞めていく生徒も年に数人居るが、クラウディアはどちらにも問題ない筈だ。エーベルハルトに婚約破棄されたうえに学園を卒業していないとなれば縁談はかなり厳しいものになるだろう。……まさか公爵家はクラウディアを放逐するつもりなのか。
「まさか!! そんな筈ないじゃないですか馬鹿らしい。正直殿下との婚約破棄なんて、姉の実績からみたらなんの瑕疵にもなりませんよ。そもそも、姉は昨年度で学園の全ての単位を修得しています。卒業もできたのに、生徒会の仕事をするために残留していたに過ぎません。きちんと学園長より卒業証明もいただいています」
「そ、うなのか……?」
「なにも御存知でないのですね。仮にも婚約者であったのに」
今年度から生徒会の仕事をしている時の彼らだが、本来クラウディアは一足先に卒業し、エーベルハルトが卒業するまでの一年間は魔道具の研究機関へ所属する予定だった。だが昨年引き継ぎの時の仕事ぶりに前会長がクラウディアに頼み込んだのだ。彼らだけに任せるのは非常に不安だから、と。クラウディアも悩んだが、エーベルハルトを支えるのは未来の王太子妃たる自分の務めと考え、引き受けていたのだ。まさかこんな事態になるとはその時は予想していなかったが。
もっともエーベルハルトが知らないのはクラウディアが話さなかったせいもある。生徒会の仕事を任せるのが不安だと言われたから自分が手伝う、などと言えば、間違いなくエーベルハルトが激昂するのは目に見えていたからだ。
「まあいいでしょう。あなた方が何も知らないのは今に始まった事ではありませんし。理由二つ目です。姉は今この国には居ません。……というより、もう戻ってくる事は無いでしょう」
「なに!?」
「無理、と申し上げました。姉への伝言も無理ですが、婚約破棄の取り消しなど不可能です」
「馬鹿な!? 何故貴様に無理だとわかる!?」
ここまであからさまに頼みを断られた事など無いのだろう。エーベルハルトが声を荒げるが、既に王太子としての威厳など微塵も感じていないヘンリックは少しも動じることが無い。呆れた様な顔をエーベルハルトへ向けると、少し考える様な仕草をした。
「そうですね…………理由としては三つ上げられますね」
「理由!? 一体どんな理由だ」
「まず一つ目。……姉はこの学園の生徒ではありません。従って生徒会役員への復帰は無理です」
「……は? 何を馬鹿な」
確かにこの二週間はクラウディアの姿を見ていなかった。だが、それはクラウディアが拗ねて授業をサボっているか、婚約破棄された恥ずかしさから引きこもっているのだと思っていた。このヘンリックの言い方だと違うというのか。
「先日殿下が姉に婚約破棄を宣言した日、姉は他の書類と同時に退学届を提出しました。学園長により正式に受理されています。ですのでもう二度とこの学園に来ることはありませんよ」
「……な、んだと? 卒業しないとはどういうことだ!?」
王立の学園は貴族にとってステータスだ。どんなに貧困でも爵位持ちであれば学園に子息息女を通わせなければならない。学園を卒業していないと家や当人に問題があると見られて、良縁が望めないからだ。学費は結構かかるし、成績次第では留年もありえるので辞めていく生徒も年に数人居るが、クラウディアはどちらにも問題ない筈だ。エーベルハルトに婚約破棄されたうえに学園を卒業していないとなれば縁談はかなり厳しいものになるだろう。……まさか公爵家はクラウディアを放逐するつもりなのか。
「まさか!! そんな筈ないじゃないですか馬鹿らしい。正直殿下との婚約破棄なんて、姉の実績からみたらなんの瑕疵にもなりませんよ。そもそも、姉は昨年度で学園の全ての単位を修得しています。卒業もできたのに、生徒会の仕事をするために残留していたに過ぎません。きちんと学園長より卒業証明もいただいています」
「そ、うなのか……?」
「なにも御存知でないのですね。仮にも婚約者であったのに」
今年度から生徒会の仕事をしている時の彼らだが、本来クラウディアは一足先に卒業し、エーベルハルトが卒業するまでの一年間は魔道具の研究機関へ所属する予定だった。だが昨年引き継ぎの時の仕事ぶりに前会長がクラウディアに頼み込んだのだ。彼らだけに任せるのは非常に不安だから、と。クラウディアも悩んだが、エーベルハルトを支えるのは未来の王太子妃たる自分の務めと考え、引き受けていたのだ。まさかこんな事態になるとはその時は予想していなかったが。
もっともエーベルハルトが知らないのはクラウディアが話さなかったせいもある。生徒会の仕事を任せるのが不安だと言われたから自分が手伝う、などと言えば、間違いなくエーベルハルトが激昂するのは目に見えていたからだ。
「まあいいでしょう。あなた方が何も知らないのは今に始まった事ではありませんし。理由二つ目です。姉は今この国には居ません。……というより、もう戻ってくる事は無いでしょう」
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