11 / 28
第1章
8
しおりを挟む
沙樹の放課後は、結子と凪と貴裕と柳と過ごすことが多くなった。この3人は沙樹を愛人の子とは見てなくて、ひとりの女の子として接してくれている。そこが沙樹にとっては居心地がいいと感じるようになった。
(この私が、そんなことを思うなんて……)
それが不思議でならなかった。
「沙樹ちゃん。楽しそうね」
母親にそう言われるくらいだった。今までの沙樹とは明らかに違うから、母親は嬉しく思っていた。
学校に行く時のもいつもの沙樹とは違う。それに気付かないなんてない。
「お母さん」
朝食は母親とふたりだった。
「なに」
「最近……、帰り遅くてごめんね」
「ん?」
「……ごめん」
俯いた沙樹が可愛いと思うのか、母親は目を細める。
「友達と遊びに行ってるの?」
「教室で……、話してる」
「そう。楽しい?」
聞かれてコクンと頷いた。それがまた母親にとっては嬉しい。
「門限までには帰ってくるのよ」
「うん」
母親は強くは言わない。心配はしている。だが、高校生が授業終わって真っ直ぐ家に帰ってくることも心配だったのだ。だけどそんな沙樹も変わりつつあったことが嬉しくて仕方ない。
「いってきます」
そう言った沙樹の後ろ姿を、母親は微笑ましく見ていた。
◇◇◇◇◇
沙樹が学校に着くと結子が笑顔を向けてきた。
「ねぇ、知ってた?」
と満面の笑み。何事かと思って結子を見ると、結子は自慢げに言う。
「BRってこの学校の出身だって!」
その話は、柚子が在籍した時もどこからか噂になり大騒ぎだった。それも柚子は当の本人たちを知ってたから、変に誤魔化すとややこしくなるだろうと思って「兄がクラスメート」と話した。まぁ、更に大騒ぎになっていたが。
そして今度は沙樹たちの代になっても、その話はどこからか入ってきていた。しかも沙樹はその身内。そうだとは知らない結子が、凄い話でしょと言わんばかりの笑顔を向けていた。
ここで沙樹が黙っていて、後で沙樹はAKIRAの妹だと知ったらどうなんだろう。だけど話したら、沙樹のことを思って妹の存在を公表していない輝に、申し訳なくなる。
「……知ってる」
沙樹はそう言うだけだった。それ以上は何も言わないで、他の話題を振った。そんな沙樹を見て結子は、沙樹が振ってきた話に乗った。
放課後、またいつものように3年生の教室へと向かう。途中で他の生徒とすれ違う。そのたびに結子はニコニコと「また明日ねー!」と手を振った。
結子の明るい性格が羨ましいとも思う。
「先輩!」
柳を見つけると駆け寄る結子が、可愛らしい。
「お。また来たのか」
沙樹に気付くと微かに笑う。
「私の友達だもん」
柳の腕を掴みそう言う結子は、本当に可愛らしい。
「結子。タイプが全然違うんだけど」
本当に友達かと疑ってしまうのは、沙樹も同じだった。自分のことを友達として付き合ってくれているのだろうかと、不安になる。だけど結子は嫌な顔をせずに沙樹の傍にいる。
(結子の笑顔に嘘はないと信じたい)
沙樹は結子を見てそう感じていた。
(この私が、そんなことを思うなんて……)
それが不思議でならなかった。
「沙樹ちゃん。楽しそうね」
母親にそう言われるくらいだった。今までの沙樹とは明らかに違うから、母親は嬉しく思っていた。
学校に行く時のもいつもの沙樹とは違う。それに気付かないなんてない。
「お母さん」
朝食は母親とふたりだった。
「なに」
「最近……、帰り遅くてごめんね」
「ん?」
「……ごめん」
俯いた沙樹が可愛いと思うのか、母親は目を細める。
「友達と遊びに行ってるの?」
「教室で……、話してる」
「そう。楽しい?」
聞かれてコクンと頷いた。それがまた母親にとっては嬉しい。
「門限までには帰ってくるのよ」
「うん」
母親は強くは言わない。心配はしている。だが、高校生が授業終わって真っ直ぐ家に帰ってくることも心配だったのだ。だけどそんな沙樹も変わりつつあったことが嬉しくて仕方ない。
「いってきます」
そう言った沙樹の後ろ姿を、母親は微笑ましく見ていた。
◇◇◇◇◇
沙樹が学校に着くと結子が笑顔を向けてきた。
「ねぇ、知ってた?」
と満面の笑み。何事かと思って結子を見ると、結子は自慢げに言う。
「BRってこの学校の出身だって!」
その話は、柚子が在籍した時もどこからか噂になり大騒ぎだった。それも柚子は当の本人たちを知ってたから、変に誤魔化すとややこしくなるだろうと思って「兄がクラスメート」と話した。まぁ、更に大騒ぎになっていたが。
そして今度は沙樹たちの代になっても、その話はどこからか入ってきていた。しかも沙樹はその身内。そうだとは知らない結子が、凄い話でしょと言わんばかりの笑顔を向けていた。
ここで沙樹が黙っていて、後で沙樹はAKIRAの妹だと知ったらどうなんだろう。だけど話したら、沙樹のことを思って妹の存在を公表していない輝に、申し訳なくなる。
「……知ってる」
沙樹はそう言うだけだった。それ以上は何も言わないで、他の話題を振った。そんな沙樹を見て結子は、沙樹が振ってきた話に乗った。
放課後、またいつものように3年生の教室へと向かう。途中で他の生徒とすれ違う。そのたびに結子はニコニコと「また明日ねー!」と手を振った。
結子の明るい性格が羨ましいとも思う。
「先輩!」
柳を見つけると駆け寄る結子が、可愛らしい。
「お。また来たのか」
沙樹に気付くと微かに笑う。
「私の友達だもん」
柳の腕を掴みそう言う結子は、本当に可愛らしい。
「結子。タイプが全然違うんだけど」
本当に友達かと疑ってしまうのは、沙樹も同じだった。自分のことを友達として付き合ってくれているのだろうかと、不安になる。だけど結子は嫌な顔をせずに沙樹の傍にいる。
(結子の笑顔に嘘はないと信じたい)
沙樹は結子を見てそう感じていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
7
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる