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第1章
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バーベキューを庭でするのが定番になっている、この集まり。殆どの準備を輝と真司で行っている。それは毎度のことだった。
崇弘はすでにビールを5本は空けていてほろ酔い状態。零士にも飲むように勧めているが、翌日運転して帰らないといけないから飲むことを控えている。
「やっぱり私、免許取ろうかな」
柚子がそう言う。それに対して零士が「ダメだ」と言った。
「なに、零士。お前柚子ちゃんが免許取るの反対?」
「心配。女の子は取らなくてもいいじゃん」
「お前、それ優樹菜が聞いたら怒るぞ」
真司と輝が呆れて聞いてる。
「あれは女じゃねーや」
「お前な……」
「零士さん」
柚子に睨まれた零士はマズイという顔をした。
結婚して子供を産んでからの柚子は強くなった部分がある。それでも零士にとってはいつまでも可愛い女の子なのだ。
「怒るなよ」
柚子にそう言ってすり寄っていく。
「もうそういうのいいから」
零士から離れてさくらにオレンジジュースを飲ませていた。そんなふたりのやり取りを見てメンバーみんなが笑っていた。
◇◇◇◇◇
メンバーみんなが部屋で寝静まった後。崇弘は沙樹の部屋にやって来た。
「沙樹ぃ。まだ……起きていたか?」
いつもより酒の量が少なく平然とした顔で入って来た。
「今日そんなに飲んでないの?」
「話したいことあったしなぁ……」
酒の量が少ないとは言え、足取りは少しフラついていた。
「大丈夫?」
「平気……だぁ」
とベッドに腰かけている沙樹の隣に座る。その状態が沙樹には落ち着かない。
「沙樹ぃ……。何かあった……んだろぉ」
俯いてる沙樹の顔を自分の方に向かせる。
「沙樹……」
もう一度名前を呼ばれる。だけど何も言えなくて目線を外す。
「沙樹」
呼ばれる度に涙が溢れそうになる。
「……っ!」
次の瞬間、沙樹は崇弘の腕の中にいた。
「タカちゃ……っ」
優しい腕の中で堪えていた涙が溢れてきてしまった。
「うう……っ、ふぇ……っ」
声を殺して涙を流す沙樹の背中を優しく擦る。崇弘の手はとても優しかった。
暫く崇弘の腕の中で泣いていた沙樹は、崇弘から離れた。
「ごめんなさい……」
と呟いた。
「話してぇ……ごらん?」
崇弘の言葉にゆっくりと話し出した。
黙って聞いていた崇弘は「そうか」と沙樹の頭を撫でる。
「友達に話したことでぇ……、ずっと抱えていたものがぁ、溢れてしまったんだなぁ……」
コクンと頷いた。
「でもぉ……、その時のぉ、沙樹はまだ幼かった。どうにも出来なかった……だろ?」
「ん……」
「じゃ……あ、沙樹のせいじゃないだろ」
「でも……」
「沙樹は……気にしなくてもいいと思う。お母さんのことをぉ、忘れてるわけじゃないんだろ」
「忘れてない……」
「なぁら大丈夫ぅ。……沙樹のお母さんはぁ、沙樹が元気に生きてる今を嬉しく思う筈だよ」
話す言葉の所々に酔ってるのが分かる崇弘に、そう言われて少しだけ気持ちが軽くなった。
「もう……、こんな時間だ」
時計を見ると深夜の2時を回っていた。
「寝なぁ……」
沙樹にそう言うと崇弘は立ち上がった。その崇弘のTシャツの裾を掴んだ沙樹に「ん?」と返す。
「もう少し……、傍にいて……欲しい」
「ダメだ」
「お願い……」
小さくため息を吐いた崇弘は沙樹をベッドの中に誘導する。
「少しだけな」
頭を撫でる崇弘の手はあたたかい。そのまま眠っていってしまいそうだった。
「タカちゃん……」
「ん?」
「この間のあれ、なに……」
キスの意味が分からない。「負けた」と言った言葉の意味も分からない。
「あー……」
少し困った顔ような照れたような顔で沙樹を見た。
「……好きだ」
崇弘はすでにビールを5本は空けていてほろ酔い状態。零士にも飲むように勧めているが、翌日運転して帰らないといけないから飲むことを控えている。
「やっぱり私、免許取ろうかな」
柚子がそう言う。それに対して零士が「ダメだ」と言った。
「なに、零士。お前柚子ちゃんが免許取るの反対?」
「心配。女の子は取らなくてもいいじゃん」
「お前、それ優樹菜が聞いたら怒るぞ」
真司と輝が呆れて聞いてる。
「あれは女じゃねーや」
「お前な……」
「零士さん」
柚子に睨まれた零士はマズイという顔をした。
結婚して子供を産んでからの柚子は強くなった部分がある。それでも零士にとってはいつまでも可愛い女の子なのだ。
「怒るなよ」
柚子にそう言ってすり寄っていく。
「もうそういうのいいから」
零士から離れてさくらにオレンジジュースを飲ませていた。そんなふたりのやり取りを見てメンバーみんなが笑っていた。
◇◇◇◇◇
メンバーみんなが部屋で寝静まった後。崇弘は沙樹の部屋にやって来た。
「沙樹ぃ。まだ……起きていたか?」
いつもより酒の量が少なく平然とした顔で入って来た。
「今日そんなに飲んでないの?」
「話したいことあったしなぁ……」
酒の量が少ないとは言え、足取りは少しフラついていた。
「大丈夫?」
「平気……だぁ」
とベッドに腰かけている沙樹の隣に座る。その状態が沙樹には落ち着かない。
「沙樹ぃ……。何かあった……んだろぉ」
俯いてる沙樹の顔を自分の方に向かせる。
「沙樹……」
もう一度名前を呼ばれる。だけど何も言えなくて目線を外す。
「沙樹」
呼ばれる度に涙が溢れそうになる。
「……っ!」
次の瞬間、沙樹は崇弘の腕の中にいた。
「タカちゃ……っ」
優しい腕の中で堪えていた涙が溢れてきてしまった。
「うう……っ、ふぇ……っ」
声を殺して涙を流す沙樹の背中を優しく擦る。崇弘の手はとても優しかった。
暫く崇弘の腕の中で泣いていた沙樹は、崇弘から離れた。
「ごめんなさい……」
と呟いた。
「話してぇ……ごらん?」
崇弘の言葉にゆっくりと話し出した。
黙って聞いていた崇弘は「そうか」と沙樹の頭を撫でる。
「友達に話したことでぇ……、ずっと抱えていたものがぁ、溢れてしまったんだなぁ……」
コクンと頷いた。
「でもぉ……、その時のぉ、沙樹はまだ幼かった。どうにも出来なかった……だろ?」
「ん……」
「じゃ……あ、沙樹のせいじゃないだろ」
「でも……」
「沙樹は……気にしなくてもいいと思う。お母さんのことをぉ、忘れてるわけじゃないんだろ」
「忘れてない……」
「なぁら大丈夫ぅ。……沙樹のお母さんはぁ、沙樹が元気に生きてる今を嬉しく思う筈だよ」
話す言葉の所々に酔ってるのが分かる崇弘に、そう言われて少しだけ気持ちが軽くなった。
「もう……、こんな時間だ」
時計を見ると深夜の2時を回っていた。
「寝なぁ……」
沙樹にそう言うと崇弘は立ち上がった。その崇弘のTシャツの裾を掴んだ沙樹に「ん?」と返す。
「もう少し……、傍にいて……欲しい」
「ダメだ」
「お願い……」
小さくため息を吐いた崇弘は沙樹をベッドの中に誘導する。
「少しだけな」
頭を撫でる崇弘の手はあたたかい。そのまま眠っていってしまいそうだった。
「タカちゃん……」
「ん?」
「この間のあれ、なに……」
キスの意味が分からない。「負けた」と言った言葉の意味も分からない。
「あー……」
少し困った顔ような照れたような顔で沙樹を見た。
「……好きだ」
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