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第1章
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放課後。ふたりは駅の方にいた。昼間はそんなに怖くはない駅前。だが、夕方から雰囲気が一変する。
「いないねぇー」
アイスクリーム屋の前でチョコミントのアイスを頬張りながら、アキは言う。
イチゴのアイスを口に含んだリナは、苦笑いしていた。
アキに言われるがままに駅まで来たが、そうそう出会えるわけない。ヨシキの連絡先さえも交換してないその程度の関係。
ヨシキにとっては親友の妹なのだから。
「暗くなってきたね」
アキはそう言う。
日が落ちて駅周辺は明るいネオンが点き始める。すると途端にガラリと雰囲気が変わり出した。
「ヤバそうなのが増えてきたかも」
リナにそう耳打ちしたアキは、リナの手を握り歩き出した。
「後ろ」
「え?」
振り返ろうとしたリナにアキが「ダメ」と言う。
ふたりの後ろにはヤバい感じの男が歩いてる。しかもリナたちが歩くと歩きだし、止まると止まって様子を伺ってる。
「本当にヤバいかも……」
手を握ったまま、ふたりは走り出した。
男はふたりを追うように走ってくる。少しずつ距離を縮めてふたりに向かってくる。
ブロロ……ン……ッ!
バイクの音がリナたちの前に立ち塞がる。顔を上げると、ヨシキだった。
「お前なぁ……」
呆れた顔でリナを一度見て、追ってきた男に視線を送る。
「てめぇ……」
凄みのある声で男に言うと男はアワアワして逃げ出した。
「なんかされてねぇか?」
バイクから降りてリナに近寄る。リナは黙って頷く。
「友達も平気だったか」
「はい」
「お前、前にも言ったろ。駅周辺はヤバいやついんだって」
「はい……」
それ以上なにも言えなかったリナは、どうしたらいいのか分からなかった。
「リナ。私は帰るよ!」
アキはそう言って、その場を離れようとした。
「あ、ちょっと危ないから!」
ヨシキはアキに言うが、アキは「大丈夫です」と笑って歩いて行った。
「ほんとにあの子、大丈夫?」
リナを方を向いてそう言うヨシキに頷く。
「アキのお母さんの職場、近いって言ってたし……」
それでもアキは母親のところには行かないことを知ってる。アキの家も複雑で、詳しくはリナも知らないが母親をよく思ってないことは聞いている。
「リナ」
隣に立ってるヨシキはリナの肩に手を置く。
「お前、スマホ貸せ」
「……?」
キョトンとしたリナは言われるがままに、スマホを差し出す。
それを何やら片手で操作してリナに戻した。
「オレの番号入れておいた。お前、危なっかしいからなんかあったら連絡よこせ」
言われてスマホを見ると、ヨシキの番号が入っていた。番号だけではなく、メッセージアプリにもヨシキの名前が載ってる。たったそれだけのことなのに、ドキドキが止まらなかった。
「送る」
リナにヘルメットを被せたヨシキは、バイクに乗るように促す。
「ちゃんと腰掴んでろよ」
そう言われたが、なかなかそれが出来ない。
戸惑っていると、ふっと笑ってリナの手を掴んだ。
「ほら。振り落とされてぇか」
首を横に振り、ヨシキの背中にしがみついた。
(恥ずかしい……)
シュンイチ以外の男の人は知らないリナにとって、ヨシキの背中にしがみついてるこの状況が恥ずかしいものだった。
「行くぞ」
そう言ってバイクを走らせる。
風がリナの頬を撫でていく。その風が恥ずかしさで真っ赤になった熱を取っていってる気がした。
◆◆◆◆◆
家の前に着くとそこにはシュンイチがバイクを出していた。
ヨシキがリナをバイクの後ろに乗せてるのを見て、露骨に不機嫌な顔をしてみせた。
「ヨシキ。てめぇ……」
額に青筋を立ててヨシキを睨む。そんなシュンイチが面白くて笑いを堪える。
「シスコン」
ひとことそう言って「くくく……」と笑った。
「ほら家に入りな」
リナに被せたヘルメットを外して、ヨシキを見るリナの頭にポンと手を乗せる。
リナはヨシキをじっと見ていた。
(一緒に……いたい……)
そんなことは言えない。言えないが、ヨシキと一緒にいたいと願ってしまう。
「リナ?」
リナの様子がおかしいことに気付いたシュンイチが、ヨシキからリナを引き離すように間に入る。
「ほら入って」
リナを見下ろすシュンイチがそう言うと黙って家に入るしかなかった。
リナが家の中に入るとヨシキとシュンイチは何やら話をしていたようで、ボソボソと玄関の方に聞こえる。ただ、なんの話をしているのかまでは分からなかった。
「いないねぇー」
アイスクリーム屋の前でチョコミントのアイスを頬張りながら、アキは言う。
イチゴのアイスを口に含んだリナは、苦笑いしていた。
アキに言われるがままに駅まで来たが、そうそう出会えるわけない。ヨシキの連絡先さえも交換してないその程度の関係。
ヨシキにとっては親友の妹なのだから。
「暗くなってきたね」
アキはそう言う。
日が落ちて駅周辺は明るいネオンが点き始める。すると途端にガラリと雰囲気が変わり出した。
「ヤバそうなのが増えてきたかも」
リナにそう耳打ちしたアキは、リナの手を握り歩き出した。
「後ろ」
「え?」
振り返ろうとしたリナにアキが「ダメ」と言う。
ふたりの後ろにはヤバい感じの男が歩いてる。しかもリナたちが歩くと歩きだし、止まると止まって様子を伺ってる。
「本当にヤバいかも……」
手を握ったまま、ふたりは走り出した。
男はふたりを追うように走ってくる。少しずつ距離を縮めてふたりに向かってくる。
ブロロ……ン……ッ!
バイクの音がリナたちの前に立ち塞がる。顔を上げると、ヨシキだった。
「お前なぁ……」
呆れた顔でリナを一度見て、追ってきた男に視線を送る。
「てめぇ……」
凄みのある声で男に言うと男はアワアワして逃げ出した。
「なんかされてねぇか?」
バイクから降りてリナに近寄る。リナは黙って頷く。
「友達も平気だったか」
「はい」
「お前、前にも言ったろ。駅周辺はヤバいやついんだって」
「はい……」
それ以上なにも言えなかったリナは、どうしたらいいのか分からなかった。
「リナ。私は帰るよ!」
アキはそう言って、その場を離れようとした。
「あ、ちょっと危ないから!」
ヨシキはアキに言うが、アキは「大丈夫です」と笑って歩いて行った。
「ほんとにあの子、大丈夫?」
リナを方を向いてそう言うヨシキに頷く。
「アキのお母さんの職場、近いって言ってたし……」
それでもアキは母親のところには行かないことを知ってる。アキの家も複雑で、詳しくはリナも知らないが母親をよく思ってないことは聞いている。
「リナ」
隣に立ってるヨシキはリナの肩に手を置く。
「お前、スマホ貸せ」
「……?」
キョトンとしたリナは言われるがままに、スマホを差し出す。
それを何やら片手で操作してリナに戻した。
「オレの番号入れておいた。お前、危なっかしいからなんかあったら連絡よこせ」
言われてスマホを見ると、ヨシキの番号が入っていた。番号だけではなく、メッセージアプリにもヨシキの名前が載ってる。たったそれだけのことなのに、ドキドキが止まらなかった。
「送る」
リナにヘルメットを被せたヨシキは、バイクに乗るように促す。
「ちゃんと腰掴んでろよ」
そう言われたが、なかなかそれが出来ない。
戸惑っていると、ふっと笑ってリナの手を掴んだ。
「ほら。振り落とされてぇか」
首を横に振り、ヨシキの背中にしがみついた。
(恥ずかしい……)
シュンイチ以外の男の人は知らないリナにとって、ヨシキの背中にしがみついてるこの状況が恥ずかしいものだった。
「行くぞ」
そう言ってバイクを走らせる。
風がリナの頬を撫でていく。その風が恥ずかしさで真っ赤になった熱を取っていってる気がした。
◆◆◆◆◆
家の前に着くとそこにはシュンイチがバイクを出していた。
ヨシキがリナをバイクの後ろに乗せてるのを見て、露骨に不機嫌な顔をしてみせた。
「ヨシキ。てめぇ……」
額に青筋を立ててヨシキを睨む。そんなシュンイチが面白くて笑いを堪える。
「シスコン」
ひとことそう言って「くくく……」と笑った。
「ほら家に入りな」
リナに被せたヘルメットを外して、ヨシキを見るリナの頭にポンと手を乗せる。
リナはヨシキをじっと見ていた。
(一緒に……いたい……)
そんなことは言えない。言えないが、ヨシキと一緒にいたいと願ってしまう。
「リナ?」
リナの様子がおかしいことに気付いたシュンイチが、ヨシキからリナを引き離すように間に入る。
「ほら入って」
リナを見下ろすシュンイチがそう言うと黙って家に入るしかなかった。
リナが家の中に入るとヨシキとシュンイチは何やら話をしていたようで、ボソボソと玄関の方に聞こえる。ただ、なんの話をしているのかまでは分からなかった。
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