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権力系ホモ★グリス王国編
カイルって実はめちゃんこスゴい人
「教えられる訳がないでしょう。公表されれば、女神教は間違いなく迫害対象になります。魔女狩りの再来は防がねば。それに、正教会とて立場が危うくなるのは必然。知らないままの方が幸せですよ」
「なんだと…」
あーもうほら! ややこしくなってきたじゃん!!
ヴァロもそんな上から目線だから、カイルもイラッてしてんじゃん!!
もぉ~昔馴染みかなんだか知らないけどさぁ! ちょっとは落ち着いて話できないのアンタら!!
と、俺は必死になんとかしようと考えるも、やっぱ無理だわ。何故なら俺は頭が良い方ではないから。
カイルに睨まれるヴァロは、俺をチラッと見てニンマリ笑いかけた。
さっきの子供みたいな笑顔じゃなくて、何か裏がある笑みだ。
「あー…ただし、人の口に戸は立てられないですから。もし偶然にもレベル4の部屋に入れる知人がおり、偶然にもその知人が宗教関係の本を記憶し、偶然にも正教会関係者の耳に真相が入ったとしても、仕方がないですね」
うわ含みのある言い方~。
つまりあれだろ。知りたかったら俺をレベル4の部屋に送り込んで、教えてもらえって事だろ。
はぁ~性格わっるぅ~い!
それもし宗教戦争になったら、俺のせいになるヤツじゃん!
猫好き同士、ちょっと見直したけど、やっぱりインテリメガネキャラって腹黒なんだな。
「………コージを利用するつもりはない」
「おや。誰がコージだと言いました? コージと共にお目付け役が1人、図書室に付いてくるのでしょう?」
「…………………」
ありゃ。カイルが悩んでる…。
これまでの事を整理すると…。
①ミャウリンガル開発の協力をしたら、俺は『まだ発表されてない新魔法の伝授』と、『図書室、レベル4の部屋への出入りの手助け』をしてもらえる。
②でも、ヤンデレズは俺とヴァロをレベル4の部屋に2人きりにするのが心配だから、誰か付き添いを同行させたい。
ヴァロはOKしたけど、カイルだけは入っちゃダメって言った。
③その理由は、カイルが教会関係者で、レベル4の部屋にある宗教の本を読むと、宗教戦争になっちゃうかもだから。
④しかしカイルはその本の内容を知りたい。でも俺は利用したくない。
⑤レベル4に入れる、俺の付き添いの人に聞けば良いんじゃね?
…という事ですが、ホント面倒な展開になってきたぞ?
そもそもルークさんとロイとセキセイオウはヴァロを許したのか?
つかカイルとヴァロってどういう関係なんだ? 仲良さそうには見えないけど。
…………元カレ…とか……、ないよな…?
いやいやいや!! カイルって俺とセッセするまで素人童貞だったし!
……そんなまさか。
あ、でも…、元恋人と気まずくてトゲトゲに接しちゃうって聞いたことあるし…。
俺恋人いたことないから分からないんだけどな!
…2人の距離が近い気がする。少なくとも、立ってるだけで威圧感たっぷりのカイルにしては、珍しい距離感だ。
……………すごく、珍しいなぁ。
うーん、ウジウジしていても仕方がない。聞いてみる他ないよな。
「……なぁカイルぅ」
「ブスくれた顔をして、どうした。小遣いか? 金貨100枚までだぞ」
「や、違います。結構です。…んじゃなくて!」
100万円をポンッと出そうとしたバカイルに、丁重にお断りして、トコトコと近付いて肩のブラブラした装飾をちょいちょいと引っ張った。えーと、肩章だっけ。
それに合わせてカイルが屈み、耳を寄せてくる。
『ねぇねぇカイルってヴァロと付き合ってたのー?』なんて事を、あっけらかんと聞く訳にはいかないからな。内緒話で聞いちゃうぞ。
「なぁ、カイルとヴァロって何か距離近いけどさ…、もしかして、元カレ、とか……?」
「……………ハァ!?!?!?!?!?」
********************
コージが何かを伝えた一拍子後、聖騎士団長は大声をあげた。
その後はただ唖然とコージを見詰めるだけで、何も発さない。一方のコージは自分がマズい事を言ってしまったと察したようだ。
あの男は理不尽に当たり散らすような性分ではない。これはどうやら、本当にコージがアホな事を言ったらしい。
───カイル・マンハットとは、彼が聖騎士団長になる以前の魔族大襲撃の際に戦場を共にした仲である。
1万を越える魔族の軍勢を…、あの地獄を生き残った戦友。というより、先の戦争では僕と彼が主戦力であった。
カイル・マンハットが所属していた聖騎士団は、最前線で苦戦を強いられていた。
早々に当時の団長が戦死し、副団長も再起不能の状態に追い込まれて統制が乱れに乱れたからである。
各部隊隊長は貴族のお坊っちゃまが占めていた為、まともな統制など取れるはずもなく、最前線は壊滅的に追い込まれていた。
それを敵影消失にまで逆転させたのは、やはりカイル・マンハット。
混迷する最前線をたった1人で引き受け、兵士にも、騎士団にも、士気を爆発的に上げさせた魔族大襲撃の主役と言える。
その功績によって彼は一介の聖騎士団から、一気に団長にまで昇進。見事なものだ。
風の噂によると、差別主義者の団長・副団長が死ぬのを待った活躍だと聞いたが、まぁどちらにしろカイル・マンハットが恐ろしい男という事には変わりない。
実際に当時の団長は死亡。副団長は傷痍退役しているのだから。
僕は後方から支援魔法や大規模魔法を放ち、追撃を行う魔族や、飛行型の魔族に攻撃していた。
終盤では、魔力の尽きた魔導師団員を横目に僕だけで魔法攻撃を行っていた。
当然だ。最初の想定敵数は4000。倍以上の敵数は、国の抱える魔導師団でも、対処出来なかった。魔女の血を受け継ぐ僕しか、最後まで魔力が続かなかった。
前線で戦うカイル・マンハットと、後方で大規模魔法を放ち続ける僕。
どちらが欠けていても、勝ち目はなかったのだろう。
王の側を離れなかった王国騎士団長を恨めしく思った程の、最悪の戦地だったのだ。
何しろ襲撃してきた魔族の大半は、知性を持たぬ魔物だ。体力の温存や兵糧を気にする事なく、朝も夜も関係ないと攻めてきた。
おかげで大損害を被った。民間人の犠牲者は幸いにも0だったが、武力も財政もかなり落ち込んだものだ。
魔族襲撃戦争の最終日には、まともに動けるのは僕とカイル・マンハットのみであった為、黒幕である魔人の討伐も僕ら2人で行った。
酒の席では馬が合わなかったが、共闘すれば相性は抜群だ。
結果として、僕らは生き残り、民間人の犠牲も皆無という、形だけの『大勝利』を収めてしまったのだ。
脚光を浴びたのはカイル・マンハットだ。
その活躍に見合うだけの報奨を受け、世から絶賛の声があがった。
僕は多額の報奨金と、好き勝手出来る立場を貰い、表には出なかった。
目立つのはあまり好きじゃない。
平和の戻った後も、僕と聖騎士団長は何度か任務で合流した。
厄介な任務は、まだ尻の拭き方も知らない新人か、功績ある者に押し付けられる。
よって、馬は合わなくとも、戦友としてそれなりに交流は持っていたのだ。
それをどう勘違いしたやら、聖騎士団長はコージにニッコリと笑い、言い聞かせている。しかし目は笑っていない。
「コージ? 一体何をどうしたらそんな発想になるんだ? お前は愛すべきアホだと思っていたが、まさかそこまでとは思わなかったぞ?」
「なっ、なんだよ! だって2人とも、仲良さそうには見えなかったけどさっ、もしかしたらって思って! つかアホってなんだ! アホって言う方がアホなんですぅ~!」
「ほぉー…。そんな可愛い事を言うお口は塞がねばな」
「ひぇっ…!? むっ!? むぎゃーーーーッ!!!」
………あのカイル・マンハットが、ここまで一個体に執着するとはな…。
しかしコージを見ていれば、それも納得だ。
僕のこの、戦争のせの字も知らなそうな子供に、囚われかけている。むしろもう手遅れだ。恋心も執着心も、既に止められない所まで来ている。
だがカイル・マンハットが惚れているのは、気味が悪い。
剣を握った時に人間の本性は表れる。
殺す為に使う者や、誰かを守る為に振るう者。脅す為に突き付ける者もいれば、剣を放棄する者までいる。
カイル・マンハットは、生き物を殺す為に生まれてきたような男だ。
聖書に登場する、懲罰の天使…。いや、殺戮の天使の役目を負い、この世に生まれてきた。
この男の怖い所は、剣を握れば敵を殺し尽くす所である。いくら命乞いされようとも、剣を握ったその瞬間に相手の首は真っ二つだ。
カイル・マンハットが自身の正当性を信じる限り、殺戮は終わらない。
カイル・マンハットとはそういう奴だ。
そんな男が恋をした。
敵を全滅させ、その晩に平気で肉を食えるような男が、子供に恋をした。
そしてあろうことか、その男は子供の影響により、自身の信じるものを疑い始めたのだ。
これも噂だが、暗黒属性の盗賊を捕縛もせずに見逃しているらしい。
正教会と女神教の『隠しておきたい真実』をカイル・マンハットが知った時、疑いは確実な物となる。
正教会への疑惑の目は、いつか火種となって教会を襲うだろう。それもきっと遠い未来ではない。
その時に僕が出来る事と言えば、コージを守る事だけだ。
そしてあわよくば僕の愛妻にする。
洗脳は諦めていないさ。ただ、今はマズいだけだ。3体の古龍を前に、洗脳なんて出来る訳がないだろう?
時期を待つ。コージの身内と認識され、警戒を解いてくれるその日まで。
僕は絶対にコージを愛妻にしてみせる。
********************
「シュンスケ!! ペースが落ちているぞ!!! もっと加速だ!!!」
「ひぃ…、ひぃ……」
帝国、帝都の某所。
召喚勇者である俺達は、近付くグリス王国との戦争に備え、訓練を行っていた。
体力のある俺や大道寺…、いや、ケンゴなんかでもキツいと感じる、かなりハードな訓練だ。
現役学生だったリクトやナナはともかく、まったく運動をしていなかったキョウコとシュンスケは今にも死にそうだ。
特にシュンスケは、大学以外は部屋に引き込もっていたらしく、最早哀れに思えてくる。
教官を務めるのは、多くの帝国軍人を育て上げてきたスパルタ教育の男。
流石に勇者に手をあげるような事はしていないが、ここ数年の軍人は皆、あの男に尻を蹴り飛ばされた経験があるとかないとか。
「シュンスケとキョウコはユーキの背中を追え!!! 絶対に引き剥がされないように!!!」
帝国は俺が従順だと思っている。文句1つ言わず、着々と力を付けているからだ。
ケンゴは気まぐれで女を部屋に連れ込んでいるし、ナナはすぐに弱音を吐く。シュンスケはひ弱で戦場で戦えるとは思えないし、キョウコは帝国への不信感が隠しきれていない。
リクトは………、リクトは単純だから、帝国としても操りやすいんだろうな。
戦争まで半年も残されているか、まったく分からない状況だ。グリス王国が従えているという、序列入りの古龍が動き出した時点で、出撃は無条件で繰り上がる。
帝国にしてみれば、急いで俺達を戦える状態にまで育てたい訳だ。
基礎体力と筋力作りで1日を終えるのは今日までである。明日からは帝国が管理するダンジョンに足を踏み入れ、実践訓練を行う予定らしい。
自身の力を確かめる為にも、訓練は真面目に行うべきだ。
…例え帝国が俺達を騙していたとしても、帝国軍人を見ていれば、この訓練には価値があると分かる。
俺は隣を走るケンゴに声を掛けた。
「明日の実践訓練、は、真面目に出ろ。実力を、教官に見せる」
「あ、ァ? はっ、なんでだよ」
肩で息をしながらも、不敵に笑うケンゴ。やはり連日の訓練で疲れているようだ。
そのままではサボっていた可能性もある。声を掛けたのは正解だったな。
「最初が、肝心だ。明日の実践訓練で、本格的に『使える奴』と『使えない奴』に別けられる。『使えない奴』は、使い捨てが、オチだ」
「…ははぁ、『使えない奴』は真っ先に殺されるっつぅ訳だな」
「あぁ。サボりは特にな」
ケンゴは頭こそ悪いが、馬鹿ではない。帝国の様子が可笑しい事には気付いていた。
むしろ気付いていないのは、リクトとナナだけである。
俺も康治郎が関わらなければ、鬼ではない。今の所、『使えない奴』と判断されているナナもシュンスケも、出来れば助けたい。
最優先は康治郎だが、帝国に捜索を任せている以上、期待は出来ないだろう。
近くでは力ある者が守っているようなので、俺への脅迫要素として捕らえられる可能性はないと思う。
そもそもそんな事、あの神様が許すとは思えんな。康治郎は神様に守られている為、心配は無用だろう。
今はとにかく、生きて帝国から逃げ出す事が優先だ。
可能であれば、他の勇者達と共に。
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