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四章
四章(6)
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やがて二人の姿がある一室に消えた。
シグルドは小走りに進み、扉を確認する。フィンネルの部屋だ。
エンリケはフィンネルと離れないだろうから、ベイル含めて三人でフィンネルの部屋に居ると考えていたが、エンリケでもベイルでもない男と行動をするなんてどうしたのだろう。
暫し悩んだ末、今を逃すと話す機会がないまま明日になり帰らないといけなくなってしまうかもしれない。
二人の間に大事な用事などがあったら邪魔をしてしまうかもしれないが、意を決して扉をノックした。
「……」
誰の返事も出てくる様子もない。入っていったのは確かだからいる筈なのに、と、もう一度ノックを繰り返す。
薄暗い廊下にコンコンコンと叩く音だけが響くと、暫くして漸く扉が開かれた。出てきたのは腹の出た男の方だ。
視線が合った男に一瞬睨まれたように思えたが、男は腰を曲げてシグルドに目線を合わせると笑顔を見せた。
「こんな時間にどうしたんだい?」
「……フィンネルと話をしようと思ったのですが、居ますか」
居ますか、も何も二人が入ったのも分かっているしここはフィンネルの部屋なのだから訪ねる必要もない気はするが、この男がさも部屋の主然と堂々としているものだから、シグルドは少し気後れしてしまう。
「今から?もう遅いから明日にしたらどうかな」
人好きそうな笑顔であるが、弧を描いた瞳の奥に拒絶を感じる。シグルドは掌を握り締めた。
「明日の朝には帰らなければならないので、今しか時間がないと思ったのです」
「ふむ……仕方ないね。少し待っていなさい」
そう言うと扉を閉めて室内に帰ってしまった。カチリと音がしたことから鍵も掛けたようだ。
何故鍵まで掛ける必要があるのか。許可もなく勝手に室内に入る無作法な躾はされていない、とシグルドが思っていると、暫くして扉が開かれた。
出て来た男が扉を押さえて「どうぞ」と笑顔を見せる。どうも胡散臭さを感じながら「有難うございます」と礼をして室内に入った。
すぐにソファに座るフィンネルが視界に入り、側まで向かった。
入室したのは分かっていると思うのだが昼間の時のように俯いたまま顔を上げようとしないフィンネルに不安が過り、正面に膝を着いて顔を覗き込んだ。
「フィンネル」
「あ、うん、いらっしゃいシグルド」
「どうしたの?さっきの人に何か言われた?」
「いいや、何もないよ」
首を振って笑ってくれるが、どうに元気がない。何もないと言うには些か声に張りが無さすぎる。
「本当に何もないの?」
「うん。親切な人だよ。今の人はジルド様って言ってね、ぼくの父様のお友達なんだ」
「前にお泊まりした時に僕も顔を見たことある気がするよ」
「……そっか、見たことあったっけ」
そう言うと軽く声を出して笑う。
シグルドはフィンネルの隣に座ってその手を握った。
「エンリケは?皆でベイルと一緒にここに居ると思ってたんだけど」
「エンリケは……さっき、ぼくとエンリケは父様に呼ばれてて、エンリケは先に父様とお話ししてその後は入れ替わりで父様のお話しを聞いてたんだけど……部屋から出たらエンリケが居なくなってて、代わりにジルド様が部屋まで送ってくれたんだ。だから今エンリケとベイルが何処に居るかはわからない」
疑問を口にすればフィンネルは少し考えるように視線を彷徨わせる。
シグルドは小走りに進み、扉を確認する。フィンネルの部屋だ。
エンリケはフィンネルと離れないだろうから、ベイル含めて三人でフィンネルの部屋に居ると考えていたが、エンリケでもベイルでもない男と行動をするなんてどうしたのだろう。
暫し悩んだ末、今を逃すと話す機会がないまま明日になり帰らないといけなくなってしまうかもしれない。
二人の間に大事な用事などがあったら邪魔をしてしまうかもしれないが、意を決して扉をノックした。
「……」
誰の返事も出てくる様子もない。入っていったのは確かだからいる筈なのに、と、もう一度ノックを繰り返す。
薄暗い廊下にコンコンコンと叩く音だけが響くと、暫くして漸く扉が開かれた。出てきたのは腹の出た男の方だ。
視線が合った男に一瞬睨まれたように思えたが、男は腰を曲げてシグルドに目線を合わせると笑顔を見せた。
「こんな時間にどうしたんだい?」
「……フィンネルと話をしようと思ったのですが、居ますか」
居ますか、も何も二人が入ったのも分かっているしここはフィンネルの部屋なのだから訪ねる必要もない気はするが、この男がさも部屋の主然と堂々としているものだから、シグルドは少し気後れしてしまう。
「今から?もう遅いから明日にしたらどうかな」
人好きそうな笑顔であるが、弧を描いた瞳の奥に拒絶を感じる。シグルドは掌を握り締めた。
「明日の朝には帰らなければならないので、今しか時間がないと思ったのです」
「ふむ……仕方ないね。少し待っていなさい」
そう言うと扉を閉めて室内に帰ってしまった。カチリと音がしたことから鍵も掛けたようだ。
何故鍵まで掛ける必要があるのか。許可もなく勝手に室内に入る無作法な躾はされていない、とシグルドが思っていると、暫くして扉が開かれた。
出て来た男が扉を押さえて「どうぞ」と笑顔を見せる。どうも胡散臭さを感じながら「有難うございます」と礼をして室内に入った。
すぐにソファに座るフィンネルが視界に入り、側まで向かった。
入室したのは分かっていると思うのだが昼間の時のように俯いたまま顔を上げようとしないフィンネルに不安が過り、正面に膝を着いて顔を覗き込んだ。
「フィンネル」
「あ、うん、いらっしゃいシグルド」
「どうしたの?さっきの人に何か言われた?」
「いいや、何もないよ」
首を振って笑ってくれるが、どうに元気がない。何もないと言うには些か声に張りが無さすぎる。
「本当に何もないの?」
「うん。親切な人だよ。今の人はジルド様って言ってね、ぼくの父様のお友達なんだ」
「前にお泊まりした時に僕も顔を見たことある気がするよ」
「……そっか、見たことあったっけ」
そう言うと軽く声を出して笑う。
シグルドはフィンネルの隣に座ってその手を握った。
「エンリケは?皆でベイルと一緒にここに居ると思ってたんだけど」
「エンリケは……さっき、ぼくとエンリケは父様に呼ばれてて、エンリケは先に父様とお話ししてその後は入れ替わりで父様のお話しを聞いてたんだけど……部屋から出たらエンリケが居なくなってて、代わりにジルド様が部屋まで送ってくれたんだ。だから今エンリケとベイルが何処に居るかはわからない」
疑問を口にすればフィンネルは少し考えるように視線を彷徨わせる。
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