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かわいそうの向こう側3~待つ犬~
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1
ぼく ここだよ
まっくらの へやで まってるよ
おとうさんのこと まってるよ
まだかな まだかな
あ へやが あかるくなった
おとうさん かえってきた
おかえりって ちかづいたら
たたかれちゃった
いたい いたい
あかいかおで おこられちゃった
こわい こわい
でも わるいの ボクだから
いたいのも こわいのも
ボクが わるいこだから
おとうさん きょうも あかいかお
おとうさん きょうも つらいかお
ボク できること ないかな
だいじょうぶって かおをなめたら
なぐられちゃった
いたい いたい
おなか けられちゃった
いたい いたい
すごく いたくて ないたら
おこって ひもで たたかれちゃった
たくさん たたかれちゃった
いたい いたい いたい いたい
いたい いたい いたい いたい
でも わるいの ボクだから
ほえた ボクが わるいから
どうすれば いいこになれるのかな
どうすれば なでてもらえるのかな
2
ボクも おとうさんも
まえは ちがったよ
ボク まえは
おうちのにわにいたよ
ちいさいころ
うれのこりの ぼくを
おとうさんが おうちのにわに
つれてかえってくれたんだ
おとうさんと おかあさんもいて
いっぱい あそんでくれて
いっぱい なでてくれて
まいにち ごはんをくれて
まいにち さんぽにつれていってくれて
ときどき おふろで あらってくれたんだ
おとうさんも おかあさんも
しあわせで
ぼくも まいにち まいにち
しあわせだったよ
3
きがつくと
ボクと おとうさん ふたりだったよ
いつも かなしそうで
ボクも かなしくて
おとうさんに くっついたら
ぎゅってしてくれて
たくさん なでてくれたよ
そうやって ふたりで いきていたよ
4
きがつくと こんどは
おへやにいたよ
さがしても おにわはなかった
でも
いつも おとうさんといっしょ
ボク うれしいよ
でも
おとうさん あそんでくれないの
おとうさん なでてくれないの
おとうさん ごはんくれないの
おとうさん さんぽにつれていってくれないの
からだがよごれても あらってくれないの
ボクをみて わらってくれないの
そのうち
そとが しずかになるまで
へやが まっくらになるまで
おとうさん かえってこなくなったよ
かえってきたら
うれしくて はしっていくよ
でも おとうさん かおがまっかで
あまえてみても
おこって すぐに ねちゃった
あさになると なにかたべて
すぐに そとへいっちゃうんだ
ボクは その たべかすたべて
のどがかわくと オシッコなめて
そうやって すごしてきたよ
5
いっぱい
たたいて おこって
おとうさん ねちゃったよ
いっぱい
たたかれて おこられて
いたくて こわくて
すみっこで
ふるえが とまらなくて
ボクは ねむれなくなっちゃった
でも ボク しってるよ
おとうさん ほんとはやさしいの
ボク しってるよ
おとうさんも こわくて いたいこと
だから いっしょにいるよ
いっしょにいて
ボクが いいこになったら
きっと
おとうさん わらってくれる
おとうさん なでてくれるから
6
「けいさつです。」
あれ だれかきた
「なんですか、よなかに。」
「なんどか、かんりにんさんからきいてるとおもいますが、○○さんのおへやからあくしゅうがするとつうほうがありまして。」
「・・・・・・・」
「こういうごじせいなので、きけんがないかどうかだけでも、かくにんさせてください。」
「・・・・・・・」
「わんちゃん、かわれてるそうですね。るすのさいちゅうに、なにかあってもかわいそうですし、いちどかくにんさせてください。おねがいします。」
「・・・・・・・」
おとうさんと めがあった
「・・・ごめんな。」
おとうさん ないてる
おとうさん まど あけてる
おとうさん そこから そとへでた
いつもとちがうところから そとへでた
そとで おおきなこえがして
ドアから
しらないひと はいってきた
しらないひと はいってきたら ほえるの
おとうさん おしえてくれた
だから ほえるの
「では、わんちゃんのほう、おねがいします。」
「はい、わかりました。あ~だいじょうぶよ~。もうだいじょうぶだからね。」
「けがしてますね。やせてるし、オシッコとウンチで、ゆかくさっちゃってるし。」
「たぶん、よぼうちゅうしゃもいってないわね~。」
ここは ボクのへや
おとうさんと ボクのへやだよ
かってに はいったら
おとうさん おこるよ
「そんなにほえなくてだいじょうぶよ。」
「めったになかないっておとなりさんからきいてましたけど、すごいほえますね。」
「だって、しらないひとはいってきたもんね~。そうだよね~、おうちまもってるのね。」
おとうさんが かえってくるまで
ボクが まもらなくちゃ
ここで おとうさん まってなくちゃ
おとうさんと いっしょに いなくちゃ
それで いいこになって
おとうさんと おとうさんと
おうちのにわに もどるんだ
きっと きっと
もどれば ボクにも おとうさんにも
しあわせが もどってくるよ
「とおぼえ・・・してます。」
「ん~・・・なんでかねぇ。そんなにだいじなの。こんな・・・ひどいめにあってるのに。すごいねぇ・・・あんた。ごしゅじん、だいすきなの。」
「なんか・・・せつないですね。」
ボクも しらないひとも
ないちゃった
7
ひろい ひろいところへ
つれてこられたよ
ボクは まっていたいのに
しらないひとが
ここへ つれてきたよ
でも こわくないよ
まいにち ごはんをくれて
からだも あらってくれた
ちかづいたら なでてくれるし
ちかづいたら わらってくれる
しらないひとだけど いいひとだよ
でも
ボク まってるよ
おとうさん
きっと むかえにきてくれるよね
しらないひとたち みんな
なでてくれるし わらってくれる
ボク いいこになったよ
だから まってるよ
ボクの やさしい おとうさん
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