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大切なもの 2
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「え……い、いいよ」
鈴木さんが慌てている。
でももう仕方ない、開けよう。
丁寧に留められたテープをそっと剥がし、右手で中身を取り出す。
手のひらに乗る薄くて小さいもの。
「しおり……?」
銀色のペンギン。
頭の上には青いリボンが付いている。
「そう、ブックマーカーなんだけど……あんまり、嬉しくなかった?」
俺の顔を不安そうに覗かれる。
「いや、全然! むしろ嬉しいんだけど、どうしてかなって……」
俺の声がだんだんしぼんでいく。
ここで開けたいって言ったの、やっぱりまずかったか……
少し前のハイなテンションだった自分を今からでも止めに行きたい。
そう思った時、鈴木さんが口を開いた。
「だって、佐々木くん、本読むって聞いたから……」
俺よりも小さな声で答える。
いや、確かに俺は本を読むのが好きだ。
でも、それを鈴木さんに言った覚えがなかった。
「映画行った時、あの映画の原作読んだって言ってたから、こういうの使うかなって……もしかして違った?」
──思い出した。
確かにそんな話をした。
いや、でもまさか。
「そんなこと覚えててくれたの?」
多分、今の俺はものすごくひどい顔をしていると思う。
もちろん、それは嬉しすぎてだが。
「覚えてたよ。でも今思えばサッカーの方がよかったかなって、ごめんね」
「いやいや全然、嬉しい。ありがとう。大事に使うよ」
むしろサッカーに関係のあるものよりもこっちの方が嬉しかった。
サッカーの話なら今まで結構してきたけど、本の話なんて俺が覚えていないくらいだったから。
それを覚えていてくれて、プレゼントしてくれるなんて。
その気持ちが何よりも嬉しかった。
「じゃあ、帰ろっか!」
鈴木さんの言葉で現実に戻る。
「うん、じゃあ、気を付けて」
最後は笑顔で手を振ってくれた鈴木さん。
俺はもう少しだけこの場で余韻に浸っていた。
家についてからもう1度お礼の連絡をし、今読んでいる本のしおりを今日貰ったものに変えた。
銀色のペンギンが部屋の明かりを反射させる。
キラリと一瞬の眩しさを感じると、同時に背後になにかの気配が現れた。
「よかったね~」
馬鹿にしているようにも聞こえてくる幼くて軽い声。
だがそうではないことを俺は知っている。
1年近く一緒にいたらそれくらいは分かるようになるものだ。
「ずっと見てたんだろ?」
「やっぱりばれたかー」
後ろを振り向くと「イシシ」と歯を見せながら笑っている人──否、死神。
「監視の必要はないだろ?」
死神に背を向ける形で本棚の前に行き、本をしまう。
「気になったからだよ。あの日からずっと一緒にいて、初めて見せた女の影。そりゃもう見に行くしかないでしょ~!」
俺の横からぬらりと見える黒い羽根。
こいつの容姿を見るたびに、相手は死神なんだと、未だに恐怖を覚えた。
「告るの? ねえ、告るの?」
歩く俺の後をふわふわと浮いたままくっついてくる死神。
「告らないよ。別にそういうのじゃないし。それに俺は──」
「それに俺は?」
鈴木さんが慌てている。
でももう仕方ない、開けよう。
丁寧に留められたテープをそっと剥がし、右手で中身を取り出す。
手のひらに乗る薄くて小さいもの。
「しおり……?」
銀色のペンギン。
頭の上には青いリボンが付いている。
「そう、ブックマーカーなんだけど……あんまり、嬉しくなかった?」
俺の顔を不安そうに覗かれる。
「いや、全然! むしろ嬉しいんだけど、どうしてかなって……」
俺の声がだんだんしぼんでいく。
ここで開けたいって言ったの、やっぱりまずかったか……
少し前のハイなテンションだった自分を今からでも止めに行きたい。
そう思った時、鈴木さんが口を開いた。
「だって、佐々木くん、本読むって聞いたから……」
俺よりも小さな声で答える。
いや、確かに俺は本を読むのが好きだ。
でも、それを鈴木さんに言った覚えがなかった。
「映画行った時、あの映画の原作読んだって言ってたから、こういうの使うかなって……もしかして違った?」
──思い出した。
確かにそんな話をした。
いや、でもまさか。
「そんなこと覚えててくれたの?」
多分、今の俺はものすごくひどい顔をしていると思う。
もちろん、それは嬉しすぎてだが。
「覚えてたよ。でも今思えばサッカーの方がよかったかなって、ごめんね」
「いやいや全然、嬉しい。ありがとう。大事に使うよ」
むしろサッカーに関係のあるものよりもこっちの方が嬉しかった。
サッカーの話なら今まで結構してきたけど、本の話なんて俺が覚えていないくらいだったから。
それを覚えていてくれて、プレゼントしてくれるなんて。
その気持ちが何よりも嬉しかった。
「じゃあ、帰ろっか!」
鈴木さんの言葉で現実に戻る。
「うん、じゃあ、気を付けて」
最後は笑顔で手を振ってくれた鈴木さん。
俺はもう少しだけこの場で余韻に浸っていた。
家についてからもう1度お礼の連絡をし、今読んでいる本のしおりを今日貰ったものに変えた。
銀色のペンギンが部屋の明かりを反射させる。
キラリと一瞬の眩しさを感じると、同時に背後になにかの気配が現れた。
「よかったね~」
馬鹿にしているようにも聞こえてくる幼くて軽い声。
だがそうではないことを俺は知っている。
1年近く一緒にいたらそれくらいは分かるようになるものだ。
「ずっと見てたんだろ?」
「やっぱりばれたかー」
後ろを振り向くと「イシシ」と歯を見せながら笑っている人──否、死神。
「監視の必要はないだろ?」
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「気になったからだよ。あの日からずっと一緒にいて、初めて見せた女の影。そりゃもう見に行くしかないでしょ~!」
俺の横からぬらりと見える黒い羽根。
こいつの容姿を見るたびに、相手は死神なんだと、未だに恐怖を覚えた。
「告るの? ねえ、告るの?」
歩く俺の後をふわふわと浮いたままくっついてくる死神。
「告らないよ。別にそういうのじゃないし。それに俺は──」
「それに俺は?」
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