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第2章 旅立ち
7. 真実
しおりを挟むベルゴが気配に気づいて顔を上げると、灯りがやっと届く道の先に、厳しい表情のリマールが一人で立っていた。
リマールは、話しができる距離までベルゴに近寄った。
「ああ、リマール、良かった。信じてくれてありがとう。アベルは・・・?」
リマールは疑り深い目をして、黙っている。
「ああ、いい、言わなくていい。外の話を聞いたんだろう? ちょっと聞いただけなら、疑われても仕方がない。俺は確かに、あんたらをだまして奴らに引き渡そうとした。だが今は、そんな気持ちはこれっぽっちもない。」
「なぜ・・・足は・・・?」
「あんなのは演技だ。もともと倒れていた木の下を少し掘って、痛めたように見せるために、無理に自分で足を押し込んだ。本当は動けたし歩けたが、歩けないふりをしていたんだ。もし、あんたらを見つけて引き止め、告げ口すれば、金がもらえることになっていた。あいつらは、あんたらが俺といるところを誰かから聞いてやってきたが、本当は、あんたらが眠っている間に、知らせに行くつもりだった。」
ベルゴはそう言って立ち上がり、周囲の暗闇に目を向けた。何か迫り来るものはないか・・・と、警戒するような目つきだ。
「話って。」
リマールもまだじゅうぶんに用心しながらきいた。
「ああ、大事な話だ。」
特に後ろを気にしながらそう答えたベルゴは、リマールに向き直ると、一歩距離をつめた。
「いいか、あんたらを殺したがっているのは、模様のない灰色と黒の恰好をした奴らだ。強く引き止めようとしたが断られ、一番広い川沿いの道の方へ行ったと教えた。だから、その道は使うな。」
「殺したがっているって・・・その理由は聞いたんですか。」
リマールは、アベルが王族であることを知ったかもしれないという気持ちと、まさか理由も聞かずに話に乗ったのかという憤りをつい感じてきいてみた。
するとベルゴは、「ああ。」と答えて続けた。「自分達の主人の大事なものを盗んだと言っていた。」
「それは・・・?」
「金のペンダントだ。アベルが首に金の鎖をつけていた。金髪に褐色の瞳、15歳の少年。人相も一致した。」
なんて卑劣な・・・! あらぬ罪を着せられたリマールは、つい感情的になって小声で言い放った。
「あれは、間違いなくアベルのものです。僕たちは、殺されなければならないような悪いことは、何もしていません。」
「ああ、そうだろう。分かってる。俺はあんたらを知った時に、自分が過ちを犯しかけていることに気づいた。だから今、こんなことを俺はしゃべってる。正直に。」
落ち着いてというように、ベルゴは両手を何度も上下しながらそう釈明した。
どうやら信用してもよさそうだ・・・と、リマールもやっとベルゴを疑うのを止めた。
「さあ、他の道を進んで。これ以上おしゃべりしている暇はない。」
「でも・・・そんな嘘をついて、あなたは大丈夫なんですか。」
「嘘と分からなければいいことだ。それに、金が手に入らなくなるだけ。それはもう必要ない。」
ベルゴは少しだけ苦笑いを浮かべた。
その時、近くの茂みがガサッと動いた。
アベルが出てきて、姿を現したのである。
「追われている者がみんな悪いわけじゃない。その理由は聞いちゃいけないような気がするから教えてくれとは言わないが、あんたらの場合はきっと、正義のためだろう? 俺はそう思う。」
二人は顔を見合い、それから「そうです!」とだけ堂々と、声をそろえて答えた。
「なら、間違いないな。」
ベルゴはにやっと笑って、進行方向を指差した。
「このまま進めば、道はもう少し広くなっている。さあ、早く行って。」
「ありがとう。」
アベルが言った。
「お子さん、明日の朝には嘘みたいに良くなりますから。必ず。」と、リマール。
「こっちこそ、ありがとう。気をつけて。」
ベルゴと別れた二人は、そこを言われるまま道なりに駆けて行った。
「灰色と黒の恰好・・・それって・・・部隊ってことだよね。」
そう言い出したアベルの意識はすっかり変わっていた。気を引きしめ、自身を戒め、この経験を教訓だと思うようにした。
「うん、たぶん・・・。僕たち、意識が甘くなってた。川沿いの道は目につきやすい。もうその道は行けないけど、鉢合わせなかっただけでも運が良かった。」
「僕がペンダントを持っていることまで知ってた。」
「それだけ情報網があるってことだよ。」
しばらく行くと、教えてもらった通りに道は広く、ずっと歩きやすくなった。その上り坂を歩けるだけ歩いて行き、もうこれ以上は無理だというところで右に折れ、二人とも疲れて、そこに見つけた小さな空き地に倒れ込んだ。
そうして結局、そこが今夜の寝床になった。
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