イルマの東へ

月河未羽

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第3章  旅の仲間

6. 灰色と黒の奴ら

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 やがて石造りの建物の遺構いこうと、そのそばにごつごつと重なり合っている大きな岩のある場所に着いた。これらの陰に隠れることができそうだ。

 彼らはそこに落ち着いて、しばらく静かにじっとしていた。

 すると本当に、遠くから小さな灯りが近づいてくるのが見えた。
 人影よりも、まず馬が目に映った。騎乗きじょうせずに手綱たづなをつかんで馬を引いている。

 そのランタンの灯りの中の人影は・・・灰色と黒の奴ら!

 三人は遺構の陰に完全に身をひそめて、いよいよ息を殺した。

 パカ・・・パカ・・・パカ、パカ・・・カッ

 目ぼしい所へやってきた男たちは、そこを自然と休憩ポイントにして、疲れたように立ち止った。

 耳と肌で感じる限り、間近まぢかではない・・・と、レイサーには分かった。崩れた壁からのぞいて、一瞬だけ様子を見た。やはり少し距離があった。ぱっと見たところ、五、六人。それぞれが茶や黒っぽい馬を連れている。
 だがどうせ、他にもいるだろう。別行動をとっている仲間のグループが。その恰好かっこうは、黒の軍服に胸当てなどの防具が灰色で、軽装けいそうだった。覆面ふくめんはしていなかった。

 そこからの話し声は、はっきりと聞くことができた。何やら不機嫌ふきげんそうにしゃべっている。

「川沿いを突き当りまで行ったが、最後は人影どころか足跡あしあともない。」
「ほかに街道かいどうけて行くなら、通れる道は限られているが。」
「もうこの森を抜けたか。」 
「人目のつく場所で始末するのは難儀なんぎだぞ。」
「例の薬もだ。取り上げてお持ちするよう言われている。」
「とにかく、こんな場所に来てみたって、人の気配どころか何にもいない。たびたび馬を降りなきゃならんし、早いとこ道へ戻ろう。もう夜になる。」 

 そういうわけで、幸い五分もそこにとどまることなく、男たちは消え去ってくれた。

「ベルゴさんが言った通りだ。ほんとに僕を殺したがってる・・・。」

 実際に敵の口からその言葉を聞いたアベルは、ショックで脱力感に襲われた。

 そんな様子に気づいてか、レイサーの手が軽く肩に置かれた。はげましてくれたのだと思うけど、それについては何の言葉もなかった。

 レイサーがそこで口にしたのは、こんなことだった。

「その薬はほかでは手に入らないものなのか?」

「ヘルメス様から手ほどきを受けた者にしか作れません。僕もその一人だけど、他にも弟子でしが三人いるし、今ではさらにその弟子もいるだろうから全くというわけじゃないです。ただ、その薬草を見つけるところから野を超え山を越え、薬を手に入れるには時間がかかる。王様にそんな余裕はないでしょう。だから、とりあえず今ここにある分を届けるのはとても重要です。」
 リマールが答えた。

「ヘルメス様・・・?」
「え、知らないんですか? ルファイアス騎士の知り合いなのに。」
「兄貴は、俺が王都へ行った時には、もう騎士になって王に仕えていたから、あんまり一緒にいなかったんだよ。会えても、そういう話題にはならなかった。」

 現在ラクシア市の領主りょうしゅであり、カルヴァン城の城主である名騎士めいきしラドルフの息子たち、つまりレイサーたち兄弟はみな、騎士になるために生まれてきたようなもの。12歳頃になると王都へ行き、そのための義務を果たして訓練を受け、18歳から20歳はたちで騎士に叙任じょにんされる。レイサーは、その前に辞退じたいしたというわけだった。前代未聞ぜんだいみもんのことだ。 

「ヘルメス様は賢者けんじゃと言われている御方おかたで、優れた医師でもあります。」
「へえ・・・。」

 そこから話が広がるかと思ったら・・・。アベルとリマールは目を見合い、それからかすかに苦笑した。この人と親睦しんぼくを深めるのは、なかなか難しそうだ。だって会話が続かない・・・。これから長い旅を共にするのだから、もう少し早く仲良くなりたいんだけど。

 そのあとレイサーは、二人から離れて、この遺構の周りを歩き始めた。ここの存在は知っていたが、興味をもって調べたことはなかった。今、よく見てみると、ここは大昔の城跡しろあとのようだ。二人を待たせている場所は城壁の門扉もんぴ付近で、今いる所は、その後ろに見えていた建物のトンネルになっている通路。まだ立派に形をとどめている。

 二人のもとへ戻ったレイサーは、荷物を肩にかつぎながら言った。
「雨が降るって言ったな。ちょうど、あそこならしのげる。下がかたくて寝心地ねごこちは良くないだろうが、ここで夜を明かそう。」


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