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第6章 祝 福
1. 王都アンダレア
しおりを挟むああ、王都・・・ついにたどり着いた。僕は無事にやって来られたんだ・・・仲間やいろんな人に助けてもらいながら、ここへ。アンダレアへ。
まだ少し遠くから、市内にそびえ立つ灰褐色の城や塔の数々を感慨深げに眺め、そのまましばらく佇んでいたので、アベルは、隣にいたレイサーに軽く背中を押された。
さあ、入ろう。
二人は微笑み合った。
王都をぐるりと取り囲んでいる壁には、いくつもの出入口があった。その全ての門に衛兵が立っている。大街道だけでなく、首都には様々な方角からの道が通り、中央には幅広い川も流れている。
大街道を避けてきた一行の前方には、出入口の一つである小さな門があった。
だが一行は、迎えがあるかもしれないということで正門へ回ろうと、そちらへ続く道に足を向けた。
するとそこへ、不意に一人の衛兵が現れた。一行の目の前の小門にいて、方向を変えた彼らが何者なのかに気づいたようだ。
するとやはり、その男は感動が表れた顔でこう話しかけてきたのである。
「よくぞご無事で。お待ちしておりました。」
そうして、正門側へ回ろうとしていた一行だったが、その衛兵のあとについて、すぐそこに見えている小さな門から王都へ入った。
その門には他にも二人の衛兵が立っていたが、エドリック騎兵隊長の顔もきいてか、すっと通してもらうことができた。
目の前に、ため息がでるような光景が広がった。
広場の植木は綺麗に刈り込まれ、建物は見頃の花で飾られ、店舗が整然と並んでいる。広場を流れる人工の小川は、透明の澄んだ水を湛えて蛇行しながら、宿が集まる街区へと流れている。噴水や水飲み場も、定期的な清掃によって清潔に保たれているという。石畳で舗装された通り、広い踊り場で分かれて、あちらこちらへ伸びている階段。とにかく、王都はとても美しい。
だが、そんな市内の華やかな様相とは対照的に、町の奥にそびえ立つ石の城は強面で、常に敵を警戒しているような感じだ。それは高台にあり、段々に築かれていて、一番高い位置で構えている見張りの塔や居館までは、途中で休憩したくなるような長い階段や坂道が設けられている。
それに最初に目を引かれながらも、アベルは思い出して、右手に見えている宮殿に視線を変えた。王は今、城からは少し離れた宮殿に住んでいると、レイサーが言っていた。なら、この兵士が今から案内してくれるのはそちらだろう。
その王宮の方は、町の華やかさに一役買う輝かしさを見せていた。アベルがいる角度からは、細い塔の間に主宮殿が収まっている。藍色の屋根を架けた白亜の宮殿は、太陽の光を浴びてきらめき、うっとりするほど綺麗だ。
「では、お二人はあちらの館内へ。ルファイアス騎士がすぐに顔を見せるようにと、そこでお待ちです。」
そう言って、衛兵は門番の詰所と思われる建物に手を向けた。
「兄さん、ここにきて何の用事だろう。」と、エドリックは弟の顔をうかがう。
レイサーも何も聞いてはいないし、手紙に指示されてもいなかった。
また、アベルも首をひねった。王都にたどり着いたら、王宮までは必ず護衛する。ルファイアス騎士はそう言っていたのだ。
「ほかの皆様はそのままついて来てください。さあ、王宮へ参りましょう。」
「あ・・・あの、僕・・・」
急に、リマールが肩をすくめて一歩さがった。
「すみません、ちょっと忘れ物して来たから・・・取ってきます。」
そして、聞き取れないほどの声でそう言うと、彼は仲間たちから後ずさって離れ、くるりと背中を返すや、意味不明の方向へ駆けだしたのである。
大きなリュックは背負っていたし・・・と、レイサーは首をかしげた。
「置き忘れるようなもの、何か持ってたか?」
というより、王都の門をくぐってから、まだどこにも寄っていない・・・。
いきなり腕を伸ばしたエドリックは、案内役であるはずの衛兵の胸ぐらにつかみかかった。
「きさま、何者だ!」
兵士の顔つきが変わった。チッとかすかに舌を鳴らし、それから不敵な笑みを浮かべたのである。
「ここには俺以外にも密偵が潜んでいるぞ。もうあの小僧のあとを追っているだろう。」
「レイサー、こいつは引き受けた。行け!」
「言われなくても。それに命令すんな。」
レイサーは、すぐさま後を追った。
ところが実は、まだ癒えきっていない足の怪我のせいで、思うように走ることができない。なんせ、リマールも速い! マズイな・・・。そう焦っているうちにも、リマールは繁華街へ入っていった。そこでは行き交う人々が邪魔で疾走することはできない。リマールが速度を落とした。早歩きになった。しかし、その背中は、あわや人混みに紛れそうになる。見失わないようにするだけで精一杯だった。
レイサーは、ほかの密偵がもう現れて、彼を追いかけてはいないかと、リマールの周囲に鋭い視線を走らせた。
そして、ふと気づくと・・・なんてことだ。見失っていた。
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