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ふりかえると、王宮の侍従が幾人か、何かを探し回っているようなようすが目についた。そのうちひとりがこちらに気がつき、小走りに向かってくる。
「ご歓談中のところ、失礼をいたします。バロー家のかたをご存じないでしょうか?」
侍従の口から飛び出してきた家名に驚きを隠せずに、コルネリアは慌てて侍従に申し出た。
「わたくしがバロー家の者ですが、何かございまして?」
「……実は、デビュタントのお嬢様のご気分が優れないごようすで、休憩室にご案内したところなのでございます」
「まあ!」
あのディアナが、体調不良? 酒でも飲み過ぎたか、それともだれかとケンカでも起こしたのだろうか。ともかく、たかだか男爵家の令嬢ひとりのために、これだけの侍従が家の者を探しまわることなど、ふつうの状況ではない。
頭が痛くなりながらも、事態を一刻も早く収束させねばならないと気が急いた。いままさに挨拶を交わそうとしていた彼も、コルネリアにうなずいてよこす。
「ご挨拶は、また後ほどにしましょう。今日の主役はデビュタントたちだ」
「恐れ入ります。……休憩室まで案内してくださいます?」
正直なところ、かなり後ろ髪を引かれる思いだったが、しかたがない。軽く膝を曲げて礼をして、コルネリアは侍従に顔を向けた。行きは迷いながらの道のりだったが、帰りは王宮に慣れた侍従の先導のおかげで、瞬く間に庭を抜け、会場に戻った。
他の参加者の邪魔にならぬように端を足早に通り抜け、到着したのは見るからにしつらえのよい部屋だった。下位の貴族のための休憩室ではなさそうだ。やはり何か粗相があったのかと気を揉むコルネリアの視界に入ってきたのは、年若いご令息がたに取り囲まれて涙ぐむディアナの姿だった。
あきらかに身分の高そうな男性陣に気後れしつつも、何が起きたのか確かめねばならないと、意を決して近づいていく。ディアナは長椅子にひとり腰掛けており、男性たちはそのまわりに佇んでいる。あんな身なりの良い方々を立たせておくだなんて、とんでもない。
歩み寄ったコルネリアを仰ぎ見て、ディアナは柄にもなくしおらしい表情になった。
「足をくじいてしまったの」
ディアナが話しかけたことで、こちらが彼女の付き添いだと理解したのだろう。ご令息がたが口々に話す内容を聞いて、コルネリアは状況をおおむね察した。
「ご歓談中のところ、失礼をいたします。バロー家のかたをご存じないでしょうか?」
侍従の口から飛び出してきた家名に驚きを隠せずに、コルネリアは慌てて侍従に申し出た。
「わたくしがバロー家の者ですが、何かございまして?」
「……実は、デビュタントのお嬢様のご気分が優れないごようすで、休憩室にご案内したところなのでございます」
「まあ!」
あのディアナが、体調不良? 酒でも飲み過ぎたか、それともだれかとケンカでも起こしたのだろうか。ともかく、たかだか男爵家の令嬢ひとりのために、これだけの侍従が家の者を探しまわることなど、ふつうの状況ではない。
頭が痛くなりながらも、事態を一刻も早く収束させねばならないと気が急いた。いままさに挨拶を交わそうとしていた彼も、コルネリアにうなずいてよこす。
「ご挨拶は、また後ほどにしましょう。今日の主役はデビュタントたちだ」
「恐れ入ります。……休憩室まで案内してくださいます?」
正直なところ、かなり後ろ髪を引かれる思いだったが、しかたがない。軽く膝を曲げて礼をして、コルネリアは侍従に顔を向けた。行きは迷いながらの道のりだったが、帰りは王宮に慣れた侍従の先導のおかげで、瞬く間に庭を抜け、会場に戻った。
他の参加者の邪魔にならぬように端を足早に通り抜け、到着したのは見るからにしつらえのよい部屋だった。下位の貴族のための休憩室ではなさそうだ。やはり何か粗相があったのかと気を揉むコルネリアの視界に入ってきたのは、年若いご令息がたに取り囲まれて涙ぐむディアナの姿だった。
あきらかに身分の高そうな男性陣に気後れしつつも、何が起きたのか確かめねばならないと、意を決して近づいていく。ディアナは長椅子にひとり腰掛けており、男性たちはそのまわりに佇んでいる。あんな身なりの良い方々を立たせておくだなんて、とんでもない。
歩み寄ったコルネリアを仰ぎ見て、ディアナは柄にもなくしおらしい表情になった。
「足をくじいてしまったの」
ディアナが話しかけたことで、こちらが彼女の付き添いだと理解したのだろう。ご令息がたが口々に話す内容を聞いて、コルネリアは状況をおおむね察した。
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