きぃちゃんと明石さん

うりれお

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番外編Ⅱ

季衣のお願い②※微

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「これ、朝自分でチャック上げたの?」

ラブホに連れ込まれて、なんやかんやと分からぬうちに部屋が決まって、エレベーターの中でのなんとも言えない気まずさと甘い雰囲気に顔を赤くするしか無かった。

部屋に着いてからジャケットとセーターを脱いだ柊真は、少し暑いのかシャツの袖を捲っていて、その姿の破壊力と溢れ出る色気に、まともに目を合わせられない。

ワンピースの後ろにあるチャックを一人で上げられたのかと訊きながら、柊真はそのチャックを下げていく。

「う、うん。でも、ある程度上まで
  チャック上げたままでも着れるから。」

胸がないからね、とは言わない。
虚しくなっちゃうから。

「そっか……。
  このワンピースよく見たらウエストが結構
  絞ってあるんだぁ。
  切り返しがないから気づかなかった。
  っていうかきぃちゃんにぴったりだね、
  サイズもデザインも。」

すごいなぁと言いながら、くびれを指ですりすりされるせいで、身体が勝手にピクピク跳ねてしまう。

「んっ、これ、大学の友達に縫ってもらった
  やつやから……、
  ウエストとか胸周りも
  全部きぃのサイズやねん。
  でも、私骨盤広いから、肩落としても
  腰の上で突っかかっちゃうと思う。」

「なるほど、そういう事か。
  じゃあ、バンザイして?」

「ん。」

柊真と付き合ってからそれなりの頻度でシているのもあって、バンザイ自体は珍しい事でもないのだが、季衣はこの日重要な事を忘れていた。

「………………ひゃっ。」

ワンピースのふわりと広がる部分をたくし上げるついでに、太ももにツーーと指を滑らされて、思わず声が漏れたのだが、そのまま服を脱がすと思われた彼の手が骨盤の上でピタリと止まった。

「きぃちゃん、…………紐パン履いてるの?」

「あっッ!!」

柊真に言われて初めて、今日は紐パンを履いてきていた事を思い出して、バッと捲られた裾を下ろした。
恥ずいっ、恥ずすぎるっ。

「あ、あの、こういうのを期待してた訳じゃなくて、
  そのっ、パンツの、ラインが見えちゃうから、
  Tバック履こうとしてたんやけどっ、
  腰周りがちょっとキツくて、
  紐になっただけなんですっ。」

骨盤が広いからすぐにパンツのゴムが伸びちゃうんですっ。

「ふぅん。見せるつもりは無かったとはいえ、
  Tバックでも十分エロいけどね。」

「ぐっ、」

必死に言い訳するも、結果的に煽ってんだと言われてぐうの音も出なくなる。

「ねぇ、ちゃんと見せて。」

あかん、もう諦めた方が早い……。
加虐心が見え隠れする瞳を見て、一秒も経たずに諦めた。
過去の経験から季衣は、こういう時の柊真には反抗しない方がいいと散々思い知らされている。
反抗した暁には大体もっと恥ずかしい目に遭わされるから。

「ん。」

でもやはり自分で脱ぐのは少し躊躇われて、再びバンザイの姿勢をとった。
脱がして?と言わんばかりの上目遣い付きで。

そんなにじっくり見たいならご自由に。
その代わり服ぐらい脱がしてっ。
柊真がさわりたいと思っているように、私もさわられたいと思っているんだ、とは口にしないが、伝わればいいなと少しだけ、ほんの少しだけ唇を尖らせた。

「なに、その可愛いお顔は。
  …………あー、見たいなら脱がせってこと?
  ずるいなぁ。覚悟決まるの早過ぎない?
  もー……、じゃあ遠慮なくいかせてもらうよ。」

宣言をされた後は焦らすことも無く、あっさり脱がされた。

「ん~、ぷはっ、んぅ」

狭い襟ぐりからやっと頭が抜けた思って、息を吐き出したすぐ後に唇を塞がれてギョッとする。
じっくり見るんじゃなかったん?

「んっ、んっ、……くぅ、ん、……ふんぅっ、」

当たり前のように口の中をまさぐられながら、肌着の背中側から手を入れられて、ある一点を何かを探すように触れられるが。

あ、もしかして、ブラのホック探してる……?
あの……、柊真さん、すいません、ブラしてないです。
こんな紐パン履いといて上がブラトップとは普通思わないですよねそうですよね。

柊真も普段季衣がブラジャーを着けていないことを知っている事を考えると、今日は着けているんじゃ?と期待されていたのかもしれない。
本当に申し訳ない。
ただでさえこんな貧相な身体なのに、楽しみを一つ奪ってしまった。

実は、家で着替える際に「いや、デートやし流石になぁ」と思ってブラジャーを着けていこうかと思っていたのだが、ワンピースとの相性が悪く、泣く泣くいつものブラトップにしたのである。

……まぁ、今日はシないかなと油断していたのもあるが。

「ぅんっ、はぁ、……ごめんなさい。」

今日もブラジャーを着けていない事に気付いたらしい柊真が唇を離したあと、季衣は謝罪を口にした。

「ん?何で謝るの。何に謝ってるの?」

しかし、流石の柊真も謝罪の理由は分からないらしい。
いや、気を使って分からないふりをしてくれている可能性も否めないな。

「……ブラしてないから。
  ホック、探してたやろ?」

「あーー、いや、こっちこそごめん。
  こういう下着って上下セットなんだと
  思ってたから探しちゃったけど、
  別にブラジャーしてて欲しかったっ!
  とかそういう訳じゃないよ?
  もちろん可愛いの着けてくれるのも好きだけど、
  なんていうか、今日のやつも、……刺さったっていうか、
  上下でギャップがあって、その……、
  正直に言うと、すごい興奮する。」

「えっ……、うそ。」

興奮してくれちゃうんですか、こんな中途半端な格好に。
そういうのちゃんと言葉にしてくれるところ大好きです。
てかちょっと照れてるの可愛すぎるんやけど。
きぃの心臓がキュン死しちゃったらどうする。

「嘘じゃないよ。
  好きな子がこんな無防備でエロい格好してたら
  誰でも襲いたくなるだろ。」

きゃーッ、本日初の『だろ』頂きました!
柊真の好き発言とか、なんぼあってもいいですからね。
投げやりだが、季衣のこのだらしのない格好を肯定されたように思って、心が満たされる。

「ってことで、無自覚かつ最大限に煽ってくれた
  きぃちゃんは、お望みどおりスーツ着た俺に
  とろっとろに溶かされようねー。」

季衣が頭のなかでワーキャーしているうちに、自分が望んだとはいえ、とんでもねぇ発言をする柊真に肩紐を下げられて、キャミソールが落とされた。

「あっ、」

本当にあっ、という間に紐パン一枚になってしまったのである。

「……よっと。」

軽々と横抱きにされて咄嗟に柊真のシャツを掴むも、すぐにベッドに降ろされた。

抱っこされて、こんな風にベッドに降ろされる時は何故かいつも離れがたくなって、
首に回した手を解けなくなる。

「あー、今日は指かぁ。
  季衣、俺の顔見て。そう。」

今日はシャツを掴んだ手が離せなくって、自分でも何をそんなに不安に思ってこんな事をしてしまうのだろうと考えるが、理由はいつも分からない。
それを知っている柊真は、毎回季衣にキスをして頭を撫でて、力が抜けたところを優しく解いてくれる。

ぐずった赤ちゃんのように寝かしつけられて、甘やかされている実感だけでも幸せなのに、季衣が「ありがと。」と言うと、愛おしくて堪らないとでも言うように、この男は微笑むのだ。

もぉーーーーーーーーー、………………ホンマにすき。














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