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第23話
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3時を過ぎると徐々に人が減っていき、文化祭も落ち着いてきたように思える。
今日は秋なのに、涼しさは身を潜めて真夏日のように暑く、制服が少し湿ったように感じられる。
俺たちは部活ブースが開かれている部室棟を抜けると、そのまま他愛ない話をしながら、校舎内を歩いて行く。
二人の足音は、文化祭の喧騒にかき消され、会話もすぐに霧散する。
別に目的があるわでもなく、慌ただしく走り回る文化祭委員や、首から自身のクラスの出し物の広告を下げて歩く仮装した生徒、楽しそうに談笑している他校の学生を見ていた。
皆が楽しむ中、俺たちはなんでもないことを話す。
不意に二人が黙ることもある。しかし、またどちらからか話を振って、他愛ない会話は生まれる。
それがどこか懐かしく、愛おしく思えるのは一度目の人生の味を知っているからだろうか?
俺がふと笑うと彼女は問う。
「どうかしました?」と。それを俺は笑って、「いや、文化祭って案外、楽しいものだったんだな」と言うと、彼女は「そうですね」と小さく笑った。
渡り廊下を渡って、右に曲がった突き当りに図書室がある。
俺たちは歩くのに少し疲れたことから、無意識に足は図書室へと向かう。聞くところによると、どうやら漫研の出し物は図書室の一部スペースを使った自作マンガの展示のみで、それ以外は一般開放となんら変わりない。
俺たちは静かな落ち着ける場所を探していたのかもしれない。
そうして歩を進めていると、急に呼び止められた。
「お兄ちゃん………なんかおごって?」
妹である上原 誠は遠くからバタバタと足音を鳴らして、こちらに駆け寄ってきた。
今まで妹と学内で会話をすることはほとんどなかったと橘に聞いていた。しかし、俺は今一度、自分を見つめなおし、妹に優しくすることを胸に誓って以降、彼女は徐々に俺に心を開いてくれるようになった。
その結果、単なる甘えたになってしまったのは言うまでもない。
俺を見つけ、遠くから咄嗟に声をかけたのだろう。宮藤さんの姿を見て、誠は固まっていた。
「えっと………どちらさん?」
「同じクラスの宮藤さん」
「あ………そういう」
誠はジト目でこちらを見ると、すぐに視線を宮藤さんに移した。
「えっと上原 美月の妹の誠です」
誠はぺこりとお辞儀した。それに続いて宮藤さんもお辞儀を返す。
「えっと………上原君と同じクラスの宮藤 桔梗です」
「お兄ちゃんに橘先輩以外にこんな真面な友達がいるとは…………」
誠はこちらにチラリと視線移す。
「なんだよ?」
俺と誠の会話を聞きながら、宮藤さんが少し笑った。
その光景はなんともむず痒いものであった。親族に自分が懇意にしている人間を会わせることは何か心が痒くなるのだ。
「お兄ちゃん………照れてる?」
「照れてるんですか?」
誠が俺を揶揄うのは分かるが、宮藤さんも少しハニカんで誠に便乗する。
俺の露骨に嫌そうな顔が面白いのか、彼女らは互いに見合わせて笑っていた。そうして二人で少し話すと、また今度と遊びの約束までしていた。
その間、俺は放置されていたので、今後の予定をそらんじていた。
そうして話し終えると誠はクラスの劇があるからと去っていく。
「可愛らしい妹さんですね」
「そうか?………まぁ良い子ではあるな」
「そうですか。私には兄弟姉妹がいないので、羨ましいです」
「そんなもんか?でも、人見知りなのにあんなに早く打ち解けるとは思わなかった」
「………自分でもびっくりしています。何故か初めて会った気がしなかったんです」
「そっか」
俺はそれが一瞬、記憶につながることかと思ったが、あえて口には出さなかった。宮藤さんが妹と仲良くなれたことが偶然だという形で残しておきたかったのかもしれない。
今日は秋なのに、涼しさは身を潜めて真夏日のように暑く、制服が少し湿ったように感じられる。
俺たちは部活ブースが開かれている部室棟を抜けると、そのまま他愛ない話をしながら、校舎内を歩いて行く。
二人の足音は、文化祭の喧騒にかき消され、会話もすぐに霧散する。
別に目的があるわでもなく、慌ただしく走り回る文化祭委員や、首から自身のクラスの出し物の広告を下げて歩く仮装した生徒、楽しそうに談笑している他校の学生を見ていた。
皆が楽しむ中、俺たちはなんでもないことを話す。
不意に二人が黙ることもある。しかし、またどちらからか話を振って、他愛ない会話は生まれる。
それがどこか懐かしく、愛おしく思えるのは一度目の人生の味を知っているからだろうか?
俺がふと笑うと彼女は問う。
「どうかしました?」と。それを俺は笑って、「いや、文化祭って案外、楽しいものだったんだな」と言うと、彼女は「そうですね」と小さく笑った。
渡り廊下を渡って、右に曲がった突き当りに図書室がある。
俺たちは歩くのに少し疲れたことから、無意識に足は図書室へと向かう。聞くところによると、どうやら漫研の出し物は図書室の一部スペースを使った自作マンガの展示のみで、それ以外は一般開放となんら変わりない。
俺たちは静かな落ち着ける場所を探していたのかもしれない。
そうして歩を進めていると、急に呼び止められた。
「お兄ちゃん………なんかおごって?」
妹である上原 誠は遠くからバタバタと足音を鳴らして、こちらに駆け寄ってきた。
今まで妹と学内で会話をすることはほとんどなかったと橘に聞いていた。しかし、俺は今一度、自分を見つめなおし、妹に優しくすることを胸に誓って以降、彼女は徐々に俺に心を開いてくれるようになった。
その結果、単なる甘えたになってしまったのは言うまでもない。
俺を見つけ、遠くから咄嗟に声をかけたのだろう。宮藤さんの姿を見て、誠は固まっていた。
「えっと………どちらさん?」
「同じクラスの宮藤さん」
「あ………そういう」
誠はジト目でこちらを見ると、すぐに視線を宮藤さんに移した。
「えっと上原 美月の妹の誠です」
誠はぺこりとお辞儀した。それに続いて宮藤さんもお辞儀を返す。
「えっと………上原君と同じクラスの宮藤 桔梗です」
「お兄ちゃんに橘先輩以外にこんな真面な友達がいるとは…………」
誠はこちらにチラリと視線移す。
「なんだよ?」
俺と誠の会話を聞きながら、宮藤さんが少し笑った。
その光景はなんともむず痒いものであった。親族に自分が懇意にしている人間を会わせることは何か心が痒くなるのだ。
「お兄ちゃん………照れてる?」
「照れてるんですか?」
誠が俺を揶揄うのは分かるが、宮藤さんも少しハニカんで誠に便乗する。
俺の露骨に嫌そうな顔が面白いのか、彼女らは互いに見合わせて笑っていた。そうして二人で少し話すと、また今度と遊びの約束までしていた。
その間、俺は放置されていたので、今後の予定をそらんじていた。
そうして話し終えると誠はクラスの劇があるからと去っていく。
「可愛らしい妹さんですね」
「そうか?………まぁ良い子ではあるな」
「そうですか。私には兄弟姉妹がいないので、羨ましいです」
「そんなもんか?でも、人見知りなのにあんなに早く打ち解けるとは思わなかった」
「………自分でもびっくりしています。何故か初めて会った気がしなかったんです」
「そっか」
俺はそれが一瞬、記憶につながることかと思ったが、あえて口には出さなかった。宮藤さんが妹と仲良くなれたことが偶然だという形で残しておきたかったのかもしれない。
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