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第2章 シャクンタラー対ファウスト
第13話 桝原 隆の能力開花
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俺の通う市立明桜高校は所謂、不良のたまり場と言われる荒んだ高校であった。川を挟んで隣に位置する市立北山高校は進学校でありウチの高校とは天と地ほどの差だ。
我が校は男子校である。それに引き替え北山高校は共学であった。
俺も北山高校を受験したが落ちたため、仕方なくこのろくでもない高校に通い始めたのだ。
俺は部活や恋愛に精を出し、青春を謳歌することこそ学生の本分だとさえ思っていた。
それはやはり彼女とイチャイチャしたりする華やかな学生生活を夢見ていたわけだ。
しかしこの明桜に入った瞬間、そんな希望は一つ残らず叩き折られた。
このろくでなしの溜まり場である不良高校は色恋や部活なんてものはなく、喧嘩が全てだった。
この市立明桜高校は名前は華やかながらも生徒もある意味華やかである。黒髪の生徒の方が少ないのではないかとさえ思ってしまう。
無論、俺も金髪である。
窓ガラスは割れているのが当たり前であり、学年間の上下関係も厳しく上級生に歯向かおうものならすぐに学生生活を送れなくなるだろう。
俺はそんな学校で生き延びるべく、すぐにある派閥に加わることになる。
たいして喧嘩も強くない俺程度の男はそうして強い者に媚びへつらうことでしかこの弱肉強食の世界では生き延びられないのだ。
そんな我が校には二人の最強がいた。
一人は石見 慎吾(いしみ しんご)という男だ。この男はとにかく体が大きい。それはアメリカ人とのハーフであるかららしい。ブラジルだったか?とにもかくにもハーフで体が並みの生徒の二倍はあるのだ。それでいて喧嘩が鬼のように強く、一年生の大半はこの男の下に付いているのではないだろうか。顔立ちも良く、正義感もある良い男だそうで正統派の不良といえる。いや、不良に正統派も糞もないか。ちなみに俺はこの石見のグループに属していた。
そして、もう一人が橋爪 竜二(はしづめ りゅうじ)である。この男はとにかく性格が悪く、姑息な男だ。腕っ節は強いが、如何せん顔が醜いのだ。なんでも下に付いた後輩に女子を紹介するよう脅したり、後輩の彼女を奪ったりととにもかくにも最低最悪の男だ。
この二人は所謂、ライバル同士でありどちらが明桜の頭か決めるべく毎日喧嘩に明け暮れていた。俺もその喧嘩に巻き込まれたことがある。
まあ、ほとんど観戦していただけだが。
しかし、最近になってある変化が生じた。
橋爪が石見に負けたのだ。
一カ月前までは橋爪一強の時代がささやかれるほど我が校で猛威を振るっていた橋爪は何故か全盛期より体が一回りほど小さくなり、一騎打ちでは一方的に石見に殴られ負けたそうだ。
噂では橋爪とやった奴は体に痣が出来て三日三晩寝込むほどの高熱にうなされると聞いていたが嘘だったのかもしれない。
そうして石見の天下が始まったわけだ。
これが最近の出来事だ。
しかし、これには続きがある。
俺はある日、普通に学校から家に帰っていた。
その日は橋爪グループの残党に襲われて痛い目にあったことからむしゃくしゃしていたのでよく覚えている。
いや。嘘をついた。
残党にこっ酷く殴られて、痛む身体を引きずって帰っていたから覚えている。
その時、何故か電柱の下に落ちていた汚らしい時計が目に入ったのだ。
いつもならそんなゴミは気にせず通り過ぎるだろうが、その時は何故かその時計が無性に気になり気が付けば手に取っていた。
外装は汚れており、針も止まっている壊れた古い腕時計であった。
俺はその時計を何故か腕に付けて帰ることにした。
それから俺の人生は180度変わったわけだ。
ここから俺こと桝原 隆(ますばら たかし)の伝説が始まったのだ。
今まで、殴られてばかりだった喧嘩も何故かすべて勝てた。体が羽のように軽く感じられ、相手の拳も止まっているように見えた。
相手の拳を全て躱して、カウンターを当てることも容易であった。
それに一発殴れば相手は風船のように宙に飛び、そのまま気を失うのだ。
全戦全勝。
すべての喧嘩で勝ち星を上げた。
俺は飛ぶ鳥を落とす勢いで出世していき、気が付けばとうとう石見の右腕とまで呼ばれるようになっていた。
「おい。桝原。どうだこのパワーストーンは?」
そう言って先輩である金田は俺に数字の入った石を自慢げに見せてきた。最近、この石見グループの不良はソウルナンバーなるものにハマっているようで、各々決まった数字をこれが俺の魂の数字なんだと恥ずかしげもなく話していた。
いやいや。待て。
ソウルナンバーってなんだ?それ誰が決めたんだ?お前が勝手に好きな数字を当てはめてるだけだろが?とその下らない数字酔狂に疑問を抱こうとも俺は愚痴も言えない。
急に強くなって石見の右腕になったとは言え、俺はまだ一年生であり、肩身の狭い思いをしていた。
今日も来たくもない校舎裏に早く来たのも会合の準備をするためだ。男だらけのむさ苦しい不良の会合、もとい石見グループの定例会なるものに参加するのも勘弁ならない。
「そうっすね。カッコいいっす。」
適当な返事でお茶を濁し、石見の到着を待っていた。
奴は正義感のある男だか何だか知らないが、とにかく会合には毎週のように遅刻していた。
それも上に立つ男の余裕なんだぜと馬鹿は騒いでいたが、たんなる時間の守れない、いい加減な男である。
俺はふと自分の右手を見ながら疑問に思う。
なんで俺は強くなったのにこんなバカなグループに入っているのだろう。もとは保身のためだった。しかし得に喧嘩が好きなわけでもなし。仲間って大事なんだ。とかうすら寒くて吐き気がする。お前ら日がな一日中ロクロ回して親に心配かけてるだけだろうが。
部活で汗水たらした仲ならまだ分かるが、無意味に襟足伸ばして、夜中にうるせぇ原付飛ばして青春だぁーってやめてくれ。この夜も今だけは俺たちの物だぜって。おい石見。それはダサいよ。まっとうに授業受けて良い大学行ったり、彼女作って甲子園目指す方が何倍もカッコいいよ。
「はぁ。やめたいな。ほんとに下らない。なにが魂の数字だ。不良だ。暴走族だよ。時代錯誤も甚だしい。…………はぁ。」
それは、勝手に口から出ていた。
その時、たまたま社長出勤をかました石見が到着したのは本当に運が悪かったとしか言えない。
「おい。桝原。今なんて言った?」
「え?」
俺が顔を上げると石見が鬼のような形相でこちらを見ていた。
見渡せば、目に入る不良全員が俺に睨みをきかせていた。
ああ。口から出ていたのはやめたいという思いだけでなく、赤裸々な思いまで、いわば愚痴まで出ていたようだ。
「…………えっと嘘っす。あ、いや。すいませんでした。」
「はぁ! ?いや。それは通らねぇだろが。桝原くんよぉー!?なんだ俺のソウルナンバーはダサいか?あ?」
ダサいってか意味わからないです。はい。
「おいおい。最近、調子良いからって何抜かしてんだ!!お前はよ!?」
「えっと…………。」
「桝原。俺はお前が最近よく働いてくれているから俺の右腕に置いてやってたんだぜ?その恩をなんだ?さっきのは?なめてんのか?」
恩ってなんだ?俺は貴方に何の恩情をかけられたんだ。まあ。もう何もかも遅いか。ここでこいつをぶちのめした方が話はすんなり通りそうだ。
「石見さん。俺、もうこのグループ抜けたいっす。」
「なんだと?お前。族を抜けるってのがどういうことか分かってるよな?男と男の誓いを無下にす…………ブッ!!。」
「おらよっと。」
俺は彼が何か喧嘩の前口上を垂れている間に彼の顔面に拳をめり込ませた。石見はそのままぶっ飛んでいき、校舎にぶつかるとその場に伏した。
起き上がってこないところを見ると、多分失神しているのだろう。その様子を見ていたソウルメイトどもは皆、あたふたして化け物でも見るようにこちらを警戒しながら足早に逃げていった。金田も揃って軒並み逃げていくものだから、なんだ魂のつながりなんて脆いもんだなぁなんて思いながら俺は校舎裏を後にした。
「よし、来たな西京くん。南くん。北条。」
植木は胡散臭い笑みでもって俺たちを迎えた。
俺と南はシャクンタラー団長植木の呼び出しを受けて本部に来ていた。
本部は所謂、普通の一般企業と変わらぬ体で町中に会社として構えており、アプリの地図を辿ってすぐに見つかった。
よかった。人里離れた山の中とかじゃなくてと安堵する。
南は面倒だから植木とのやり取りをメールアプリかなんかで済まそうとしていたみたいだが、北条さんの圧力により俺たちは来るはめになったわけである。
本部に着いて早々、植木の話が始まる。
南も植木が話して早々、いつものスカした顔で携帯をいじっている。
シャクンタラーに独断専行で入ると息まいた南が一番やる気がないのも何か癪ではあるが、とにかく呼ばれたのでこの植木の話に耳を傾ける。
「さて、やっとレベルAの身体能力向上の異能者を見つけ出した。そいつは高校生なんだが、私たちもずっと躍起になって探していたんだ。そしたら今朝やっと情報が入ったわけだ。」
「はあ。まあ、どうせ明桜の奴でしょ?」
「なに!?なぜ知っている!?」
植木は驚いたように南に顔を近づける。
最早、鼻先は付いているだろう。
いや近いっすと嫌そうに距離を取る南を見て、楽しそうに笑う北条さんはサディスティックな思考が見え隠れする。
「いや最近、なんか噂になっていたんですよ。昨日遊んだ子も明桜に物凄い喧嘩が強い男の子がいるみたいなこと言ってたんだよな。あそこは橋爪と石見ってやつの二強だったのにここにきて急に出てくる奴とか怪しさ満点でしょ?」
「そうか…………その通りだ。まあ、多分そいつだろう。」
情報を掴んでいる割にあやふやな植木を見て少し不安になる。それよりも俺は先ほどから話に付いて行けてない。
「いや、なにそのヤンキー漫画みたいなノリ?二強とか。今日日、不良とか絶滅危惧種だと思ってたわ。もう田舎にしか生息してないんじゃないか?不良っぽい奴とかなら分かるけども。」
「あの橋爪もその不良さんだったろが?結構探せばいるだろ。」
「いや、あれはお前の女癖の悪さに怒っていたからあんな風に見えたのかなって。笑った顔は愛着あったし根は良い奴なんだよ。」
「お前はあいつの何なんだよ。…………まあ。昨日会った子も不良とかないわ。医学生と付き合いたーいとか言ってたな。」
「それもそれで現実味あって嫌だけどな。」
「ゴホン…………いいかな少年たちよ。それではその異能者の説明に戻る。彼は…………」
そこからはとにかく話が長かったため聞いていない。
知らない人とこんなにも流暢に話せる南はやはり社交性があるなぁと感心していたら、話は終わっていた。
とにもかくにも、植木の依頼はそのレベルAの異能を持つ奴を俺と南と北条で見つけて、シャクンタラーに勧誘することだった。
なんとも漠然としている依頼であり、入ったばかりの新人に勧誘を命ずるなんて新興宗教みたいだなと植木にも不信感が募る。
結局、南が保留でお願いしやっすと軽く人を食ったような話し方で断っていたので、今日この本部に来た意味は失われたわけだが。
俺と南は植木が次の話を始める前に退散することにする。
植木が熱心に悦に浸って話ている間に後ろのドアからそっと出ていく。
その時、誰かに呼び止められた。
「ちょっと待って西京くん。」
「え?」
それは北条さんだった。
「何?」
「いえ。この間はごめんなさい。東さんのこと。」
「ああ。いいよ。別に気にしてないから。」
本当に気にしてはいなかった。ただ嫌なことを思い出しただけだ。それは正確には北条さんのせいではない。
半分、八つ当たりに近いものだ。
「ううん。あまり知らない人のことを悪く言うべきではなかったわ。ごめんなさい。」
「うん。いいよ。大丈夫。俺も東も慣れてるから。」
そう言い残し俺と南は本部を後にした。
その後、あの言い方は流石に性格悪いぞと南に説教を食らってその日は終わっていった。
我が校は男子校である。それに引き替え北山高校は共学であった。
俺も北山高校を受験したが落ちたため、仕方なくこのろくでもない高校に通い始めたのだ。
俺は部活や恋愛に精を出し、青春を謳歌することこそ学生の本分だとさえ思っていた。
それはやはり彼女とイチャイチャしたりする華やかな学生生活を夢見ていたわけだ。
しかしこの明桜に入った瞬間、そんな希望は一つ残らず叩き折られた。
このろくでなしの溜まり場である不良高校は色恋や部活なんてものはなく、喧嘩が全てだった。
この市立明桜高校は名前は華やかながらも生徒もある意味華やかである。黒髪の生徒の方が少ないのではないかとさえ思ってしまう。
無論、俺も金髪である。
窓ガラスは割れているのが当たり前であり、学年間の上下関係も厳しく上級生に歯向かおうものならすぐに学生生活を送れなくなるだろう。
俺はそんな学校で生き延びるべく、すぐにある派閥に加わることになる。
たいして喧嘩も強くない俺程度の男はそうして強い者に媚びへつらうことでしかこの弱肉強食の世界では生き延びられないのだ。
そんな我が校には二人の最強がいた。
一人は石見 慎吾(いしみ しんご)という男だ。この男はとにかく体が大きい。それはアメリカ人とのハーフであるかららしい。ブラジルだったか?とにもかくにもハーフで体が並みの生徒の二倍はあるのだ。それでいて喧嘩が鬼のように強く、一年生の大半はこの男の下に付いているのではないだろうか。顔立ちも良く、正義感もある良い男だそうで正統派の不良といえる。いや、不良に正統派も糞もないか。ちなみに俺はこの石見のグループに属していた。
そして、もう一人が橋爪 竜二(はしづめ りゅうじ)である。この男はとにかく性格が悪く、姑息な男だ。腕っ節は強いが、如何せん顔が醜いのだ。なんでも下に付いた後輩に女子を紹介するよう脅したり、後輩の彼女を奪ったりととにもかくにも最低最悪の男だ。
この二人は所謂、ライバル同士でありどちらが明桜の頭か決めるべく毎日喧嘩に明け暮れていた。俺もその喧嘩に巻き込まれたことがある。
まあ、ほとんど観戦していただけだが。
しかし、最近になってある変化が生じた。
橋爪が石見に負けたのだ。
一カ月前までは橋爪一強の時代がささやかれるほど我が校で猛威を振るっていた橋爪は何故か全盛期より体が一回りほど小さくなり、一騎打ちでは一方的に石見に殴られ負けたそうだ。
噂では橋爪とやった奴は体に痣が出来て三日三晩寝込むほどの高熱にうなされると聞いていたが嘘だったのかもしれない。
そうして石見の天下が始まったわけだ。
これが最近の出来事だ。
しかし、これには続きがある。
俺はある日、普通に学校から家に帰っていた。
その日は橋爪グループの残党に襲われて痛い目にあったことからむしゃくしゃしていたのでよく覚えている。
いや。嘘をついた。
残党にこっ酷く殴られて、痛む身体を引きずって帰っていたから覚えている。
その時、何故か電柱の下に落ちていた汚らしい時計が目に入ったのだ。
いつもならそんなゴミは気にせず通り過ぎるだろうが、その時は何故かその時計が無性に気になり気が付けば手に取っていた。
外装は汚れており、針も止まっている壊れた古い腕時計であった。
俺はその時計を何故か腕に付けて帰ることにした。
それから俺の人生は180度変わったわけだ。
ここから俺こと桝原 隆(ますばら たかし)の伝説が始まったのだ。
今まで、殴られてばかりだった喧嘩も何故かすべて勝てた。体が羽のように軽く感じられ、相手の拳も止まっているように見えた。
相手の拳を全て躱して、カウンターを当てることも容易であった。
それに一発殴れば相手は風船のように宙に飛び、そのまま気を失うのだ。
全戦全勝。
すべての喧嘩で勝ち星を上げた。
俺は飛ぶ鳥を落とす勢いで出世していき、気が付けばとうとう石見の右腕とまで呼ばれるようになっていた。
「おい。桝原。どうだこのパワーストーンは?」
そう言って先輩である金田は俺に数字の入った石を自慢げに見せてきた。最近、この石見グループの不良はソウルナンバーなるものにハマっているようで、各々決まった数字をこれが俺の魂の数字なんだと恥ずかしげもなく話していた。
いやいや。待て。
ソウルナンバーってなんだ?それ誰が決めたんだ?お前が勝手に好きな数字を当てはめてるだけだろが?とその下らない数字酔狂に疑問を抱こうとも俺は愚痴も言えない。
急に強くなって石見の右腕になったとは言え、俺はまだ一年生であり、肩身の狭い思いをしていた。
今日も来たくもない校舎裏に早く来たのも会合の準備をするためだ。男だらけのむさ苦しい不良の会合、もとい石見グループの定例会なるものに参加するのも勘弁ならない。
「そうっすね。カッコいいっす。」
適当な返事でお茶を濁し、石見の到着を待っていた。
奴は正義感のある男だか何だか知らないが、とにかく会合には毎週のように遅刻していた。
それも上に立つ男の余裕なんだぜと馬鹿は騒いでいたが、たんなる時間の守れない、いい加減な男である。
俺はふと自分の右手を見ながら疑問に思う。
なんで俺は強くなったのにこんなバカなグループに入っているのだろう。もとは保身のためだった。しかし得に喧嘩が好きなわけでもなし。仲間って大事なんだ。とかうすら寒くて吐き気がする。お前ら日がな一日中ロクロ回して親に心配かけてるだけだろうが。
部活で汗水たらした仲ならまだ分かるが、無意味に襟足伸ばして、夜中にうるせぇ原付飛ばして青春だぁーってやめてくれ。この夜も今だけは俺たちの物だぜって。おい石見。それはダサいよ。まっとうに授業受けて良い大学行ったり、彼女作って甲子園目指す方が何倍もカッコいいよ。
「はぁ。やめたいな。ほんとに下らない。なにが魂の数字だ。不良だ。暴走族だよ。時代錯誤も甚だしい。…………はぁ。」
それは、勝手に口から出ていた。
その時、たまたま社長出勤をかました石見が到着したのは本当に運が悪かったとしか言えない。
「おい。桝原。今なんて言った?」
「え?」
俺が顔を上げると石見が鬼のような形相でこちらを見ていた。
見渡せば、目に入る不良全員が俺に睨みをきかせていた。
ああ。口から出ていたのはやめたいという思いだけでなく、赤裸々な思いまで、いわば愚痴まで出ていたようだ。
「…………えっと嘘っす。あ、いや。すいませんでした。」
「はぁ! ?いや。それは通らねぇだろが。桝原くんよぉー!?なんだ俺のソウルナンバーはダサいか?あ?」
ダサいってか意味わからないです。はい。
「おいおい。最近、調子良いからって何抜かしてんだ!!お前はよ!?」
「えっと…………。」
「桝原。俺はお前が最近よく働いてくれているから俺の右腕に置いてやってたんだぜ?その恩をなんだ?さっきのは?なめてんのか?」
恩ってなんだ?俺は貴方に何の恩情をかけられたんだ。まあ。もう何もかも遅いか。ここでこいつをぶちのめした方が話はすんなり通りそうだ。
「石見さん。俺、もうこのグループ抜けたいっす。」
「なんだと?お前。族を抜けるってのがどういうことか分かってるよな?男と男の誓いを無下にす…………ブッ!!。」
「おらよっと。」
俺は彼が何か喧嘩の前口上を垂れている間に彼の顔面に拳をめり込ませた。石見はそのままぶっ飛んでいき、校舎にぶつかるとその場に伏した。
起き上がってこないところを見ると、多分失神しているのだろう。その様子を見ていたソウルメイトどもは皆、あたふたして化け物でも見るようにこちらを警戒しながら足早に逃げていった。金田も揃って軒並み逃げていくものだから、なんだ魂のつながりなんて脆いもんだなぁなんて思いながら俺は校舎裏を後にした。
「よし、来たな西京くん。南くん。北条。」
植木は胡散臭い笑みでもって俺たちを迎えた。
俺と南はシャクンタラー団長植木の呼び出しを受けて本部に来ていた。
本部は所謂、普通の一般企業と変わらぬ体で町中に会社として構えており、アプリの地図を辿ってすぐに見つかった。
よかった。人里離れた山の中とかじゃなくてと安堵する。
南は面倒だから植木とのやり取りをメールアプリかなんかで済まそうとしていたみたいだが、北条さんの圧力により俺たちは来るはめになったわけである。
本部に着いて早々、植木の話が始まる。
南も植木が話して早々、いつものスカした顔で携帯をいじっている。
シャクンタラーに独断専行で入ると息まいた南が一番やる気がないのも何か癪ではあるが、とにかく呼ばれたのでこの植木の話に耳を傾ける。
「さて、やっとレベルAの身体能力向上の異能者を見つけ出した。そいつは高校生なんだが、私たちもずっと躍起になって探していたんだ。そしたら今朝やっと情報が入ったわけだ。」
「はあ。まあ、どうせ明桜の奴でしょ?」
「なに!?なぜ知っている!?」
植木は驚いたように南に顔を近づける。
最早、鼻先は付いているだろう。
いや近いっすと嫌そうに距離を取る南を見て、楽しそうに笑う北条さんはサディスティックな思考が見え隠れする。
「いや最近、なんか噂になっていたんですよ。昨日遊んだ子も明桜に物凄い喧嘩が強い男の子がいるみたいなこと言ってたんだよな。あそこは橋爪と石見ってやつの二強だったのにここにきて急に出てくる奴とか怪しさ満点でしょ?」
「そうか…………その通りだ。まあ、多分そいつだろう。」
情報を掴んでいる割にあやふやな植木を見て少し不安になる。それよりも俺は先ほどから話に付いて行けてない。
「いや、なにそのヤンキー漫画みたいなノリ?二強とか。今日日、不良とか絶滅危惧種だと思ってたわ。もう田舎にしか生息してないんじゃないか?不良っぽい奴とかなら分かるけども。」
「あの橋爪もその不良さんだったろが?結構探せばいるだろ。」
「いや、あれはお前の女癖の悪さに怒っていたからあんな風に見えたのかなって。笑った顔は愛着あったし根は良い奴なんだよ。」
「お前はあいつの何なんだよ。…………まあ。昨日会った子も不良とかないわ。医学生と付き合いたーいとか言ってたな。」
「それもそれで現実味あって嫌だけどな。」
「ゴホン…………いいかな少年たちよ。それではその異能者の説明に戻る。彼は…………」
そこからはとにかく話が長かったため聞いていない。
知らない人とこんなにも流暢に話せる南はやはり社交性があるなぁと感心していたら、話は終わっていた。
とにもかくにも、植木の依頼はそのレベルAの異能を持つ奴を俺と南と北条で見つけて、シャクンタラーに勧誘することだった。
なんとも漠然としている依頼であり、入ったばかりの新人に勧誘を命ずるなんて新興宗教みたいだなと植木にも不信感が募る。
結局、南が保留でお願いしやっすと軽く人を食ったような話し方で断っていたので、今日この本部に来た意味は失われたわけだが。
俺と南は植木が次の話を始める前に退散することにする。
植木が熱心に悦に浸って話ている間に後ろのドアからそっと出ていく。
その時、誰かに呼び止められた。
「ちょっと待って西京くん。」
「え?」
それは北条さんだった。
「何?」
「いえ。この間はごめんなさい。東さんのこと。」
「ああ。いいよ。別に気にしてないから。」
本当に気にしてはいなかった。ただ嫌なことを思い出しただけだ。それは正確には北条さんのせいではない。
半分、八つ当たりに近いものだ。
「ううん。あまり知らない人のことを悪く言うべきではなかったわ。ごめんなさい。」
「うん。いいよ。大丈夫。俺も東も慣れてるから。」
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