ワールドメイク 〜チート異能者の最強くん〜

プーヤン

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第2章 シャクンタラー対ファウスト

第23話 凍てつく教室②

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その後、ふと気になって放課後、自習室に訪れた。

そこにはやはりオタク五人組と、地域研究部の子たちがいた。

オタクの方の会話は特に興味もないのでスルーし、地域研究部の会話に耳を傾ける。

「今日って暑いよね~なんで今日ってこんなに暑いの~?」

ピンクの髪の毛の子が制服のシャツをパタパタと扇ぎながら皆に聞く。今後は略称でピン毛と呼ぶことにする。

「太陽さんが怒ってるんだよぉ~。こらぁ~!!って」

快活な緑の短髪の子が手を大きく挙げてよく分からない答えを提示する。今後は略称で陽キャと呼ぶことにする。この陽キャは無駄に声が大きい。

「なにそれ~?怖い~。」

紫の毛の子がナヨナヨっとしてか細い声を上げ、怯える。今後は略称でナヨしばと呼ぶことにする。
いまのところ俺の好みはこの子である。長い濡れ烏色の髪先が艶やかに流れている。顔は小さいが目が大きく猫のようだ。声もそこまで高くなく猫撫で声も違和感なく聞ける。おっと推しに対してだけ情報過多だな。

「大丈夫!そしたら私が守ってあげるよ。」

すかさず背の高い金髪がナヨしばの前に躍り出る。今後は略称で金パと呼ぶことにする。
背の高い金髪って単なる不良みたいだなって考え、ペタも一応不良だったなと思い出す。

「うわ~ありがとう。」

二ヘラ~とナヨしばが力なく笑った。うん。可愛いな。合格。

「え~。私のことも守ってよ~。」

ピン毛がその謎のノリに便乗する。

なんなんだこれは…………。

アニメだとあんなにテンポ感があって、聞いていると楽しくなってくるのに実際に見るとなんか気味が悪い。
唯一、見ていられるのはナヨしばくらいだ。ナヨしば可愛い。

もしや、声か?声がアニメ声じゃないから、常軌を逸して見えるのか?
しかし、俺はこの不自然な会話に違和感を抱きながらも何故か5分ほど見てしまっていた。

すると、徐々に彼女らの下らない会話にも免疫というのか耐性がついてきて、逆に楽しくなってくる。

しかし、問題は他にもあった。

それは彼女らの後方に見える、野獣のような眼光のオタクたちがチラチラとフレームインすることだ。

背景が汚いこいつらの下世話な顔だと、脱力してしまうのだ。

こいつらの所為で彼女らの会話があたかも演技しているような不自然さを醸し出す。こいつらのほうこそどうにかすべきではないかと考えてしまう。

それを考えている時点ですでに俺はもうこの地域研究部なる部活に萌えを見出そうとするオタク五人組と同じ穴の貉なのかもしれない。

そうしてこの教室に平穏が訪れたように思えた。

しかしその一週間後。再び事件が起きる。

 

 

 

俺たちの前には鬼の形相で睨んでくるオタク五人がいる。

「で。なんでまた呼ばれてるの?」

「いや。なんか知らないが、奴らからまた手紙が来て呼び出されたな。」

俺たちはまた件の自習室に呼び出されていた。もちろん、地域研究部はいない。

何故か今回は俺も含まれていたのが謎だが。

「まあ。俺もお前もアニメ好きだし、仲良くしたくて呼ばれたとか?」

お道化た様子で言う南に、小柄な眼鏡男が激怒する。

「そんな訳ないだろ!!!南!!お前。ピンちゃんに何をした!?」

「ピンちゃんて誰だ?」

「すっとぼけるな!?ピンクの髪の子だ!!」

いや。お前等の共通言語で話すなよ。分からないだろ。
それと彼女のあだ名はピン毛だ。間違えるな愚か者が。

「ああ。生田さんか。いや。何もしてないよ?」

「そんな事あるか!?ピンちゃんは最近、調子が悪いんだそうだ。それに最近好きな人が出来て、その人から連絡が来なくなったと悩んでいたぞ!!」

ん?

何故そんな具体的に彼女らの動向を把握しているのか?やばくないか。こいつら。またピーピング野郎か?

俺はふと疑問に思い、その眼鏡の彼に問う。

「えっと。なんでそんな事知っているの?」

「え?……………………いえ。今は西京隊長は黙っておいてください。」

「おっ。まだ隊長だったのか?お前大変だな?」

ほら。また南に揶揄われる。やめろ。その隊長呼び。

「いやいや。駄目だろ。なんで知ってるの?」

「えっと。それは……………えっと。」

「ねぇなんで?」

「えっと…………」

眼鏡の彼は俯き、固まってしまう。俺たちが不振に思っている中、その傍らで他のオタク四人は身を寄せ合い何かの相談を始めた。

「どうする?言ってしまうか?でも彼らにバレたらどうなるか。」

「いや。ここで南の奴をやってしまわないと、生田さんが可哀想だ。それに奴はやっぱり許せない。制裁を!」

「そうだな。ここで南をやらないと。制裁を!」

「そうだ。ここで、い、異能がバレてもしょうがない。や、やるしかない。この好機に!!!」

いやいや。もろに聞こえてくるんだが。

あれ。この大きな人、いま異能って言わなかったか?

「ちょっと待て。今異能って言ったか?」

南も聞こえたようで、彼らに問う。

「…………もう駄目だな。そうだ。俺の拡大聴覚で彼女らの動向を追っていた。さて。これを知られたらもう生かしてはおけない。」

いや。そう言い切るなよ。立派なストーカーじゃないか。

「そうだな。ここで、お、終わりにす、する。」

その瞬間、背筋に悪寒が走る。俺は自分の体が妙に動きづらいことに気が付く。そして、南の口から白い息が出ていることにも違和感がある。寒いなと漠然と思えば、南はガチガチと体を震わせていた。

ふとオタク組の大きい人の手を見ると、その手から白い冷気が出ていることに気が付く。

その瞬間、彼の手から30㎝ほどの氷柱が俺たちに向けて発射された。南がなんとかその氷柱を寸でのところで横に弾き飛ばし、彼らを睨む。

「待て待て。話合おうぜ?な?」

「無理だ。イケメンよ。お前は万死に値する。ここでくたばれ。それしか道はない。」

今まで一言も言葉を発っしていなかったロン毛の男は低音の効いた艶のある声でもって俺たちに戦線布告する。

カッコいい声だなと感心していると、その男の腕から棘が次々に生えてくる。皮膚を突き破って真っ赤な棘が無数に生えてくるのだ。それがやけに生々しく見えて目を背けてしまう。

次の瞬間、男はその棘の生えた腕をこちらに伸ばし、手を開くと棘は一気に発射される。

「おっヤバイ!!!」

南は咄嗟にそこらにあった勉強机を異能で引寄せ、盾として使う。俺もその後ろに隠れて難を逃れる。

その時、背後に気配を感じる。

後ろを振り向くとそこには悪魔がいた。
それは二メートル程の巨体を黒い毛で覆われ、鉤爪を持っており、毛の中から顔を少し覗かせる。
悪の化身とも呼べる羊頭の巨人が俺たちを見下ろしていたのだ。


そして、その横の眼鏡のもやしっ子の手から炎が立ち上っている。そしてその炎を指の先へと収束する。彼はにやりと嫌らしい笑みを浮かべてこちらを見た。

考えもしなかったことだったが、あり得る話ではある。

このオタク五人は全員、異能者であった。

そして、俺たちはもはや袋のネズミとなったわけだ。

俺たちはこの凍てつく教室からはもう逃げられない。

 
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