『日本再起動 ―Re:BOOT JAPAN―』

KAORUwithAI

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腐敗国家

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午前9時。霞ヶ関――旧・厚生労働省庁舎。

会議室にこもった空気は淀みきっていた。
神楽坂カイは、椅子に座ったまま無表情で天井の染みを見つめていた。
窓の外では、かすれたマイク音がスピーカーから流れている。

「2023年度の年金給付額はさらに0.9%削減予定。なお、医療費負担については……」

うんざりするほど聞き慣れた無機質な数字の羅列。
誰一人として“その先にいる人間”を見てはいなかった。

スーツの群れが頷き、誰かが失笑し、誰かが次の利権を耳打ちする。
それがこの国の「会議」の現実だった。

「で? その予算削減分、どこに回すんです?」

カイが問いかけると、誰かが面倒そうに答えた。

「…新設される外国人支援センターですよ。例の国際協調プロジェクトね」

カイは微かに目を細めた。

「つまり、国内の高齢者支援を削って、外国人受け入れ支援に回すと?」

「聞こえは悪いが、世界の流れってやつだよ。経済成長のためには外圧も必要なんだ」

カイはもう、それ以上何も言わなかった。
こんな会議で何かが変わると思っていた自分が、いちばん愚かだった。

退席の許可をもらわず、彼は静かに立ち上がり、部屋を出た。
背後で「また変人が…」と誰かが呟いたが、気にも留めなかった。

――もう、終わらせる。
この国の偽りの繁栄も、支配の構造も、そして傍観者としての自分も。



数年後、都内某所元データセンター跡地。

雨の降りしきる廃ビルの地下に、カイは一人の少年と向かい合っていた。

「で、神楽坂さん。こいつ、全部暴きたいんですよね?」

その少年――桐原 翼は、17歳。
小柄な体に大きなパーカー。タブレットを片手に、ニヤリと笑う。

「不正献金の流れ、外国資金との癒着、機密の移民優遇計画。証拠はどれもデジタルの奥深くにありますよ。ですが――」

「抜けるのか?」とカイが問う。

「抜けますよ、“条件付き”ならね。あんたの言う“再起動”ってやつ、俺にとっちゃ最高の遊び場です」

「これで死人が出るかもしれない」

「……親父とお袋、空港で爆破事件に巻き込まれて死んだんすよ。犯人、外国人。なのに責任取った官僚、一人でもいます?」

沈黙が走る。
だがその目には、確かな怒りと、復讐心と、そして“理想”があった。

神楽坂カイは、静かに頷いた。

「ようこそ、“再起動計画”へ」



そのころ、公安調査庁。外事第二課。

志水京介は、部下の鳴海から提出された資料に目を通していた。
ある人物の名前が強調されている。

神楽坂 カイ(35)
元厚労省官僚/三年前退職
自宅:住所不定/身辺接触者:多数警戒対象

「……消えた元官僚が、再起動計画と名乗る政治運動の中核?」

志水はその写真をじっと見つめた。
静かな瞳、冷静な表情。
だが、その奥にあるのは――爆発寸前の怒りだった。

「こいつは、動き出してる」

「でも、まだ『証拠』はありません」と鳴海が言った。

志水は立ち上がり、上着を手にした。

「証拠がなけりゃ、作ればいい。公安の仕事ってのは、そういうもんだ」

その目は、確かに”狩り”の目だった。

だがその先にあるのは、
国家の防衛か――それとも、正義の解体か。
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