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第二章 破綻
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しおりを挟む「おいぃぃぃぃ~っ! 何だこの状況っ! マジかっ⁉」
無理と言いつつ、俺にあっさり押し倒されている兄ちゃんを見て、俺は内心
(イケるんじゃね?)
と思った。
兄ちゃんを押し倒した時に掴んだ兄ちゃんの肩はがっしりとしていたし、押し倒した兄ちゃんもどこからどう見ても男にしか見えなかったけれど
「んだよ。無理とか言いながら簡単に押し倒されてんじゃん」
俺に押し倒された兄ちゃんを上から見下ろす俺は、兄ちゃんなら余裕で抱けると確信していた。
見た目はどこからどう見ても男だけど、焦った顔で俺を見上げる兄ちゃんはめちゃくちゃ可愛いし、適度にボリュームのある兄ちゃんの身体は普通にそそられる。
服の上からでも兄ちゃんの身体に欲情してしまいそうな俺は、裸になった兄ちゃんを見たら絶対に勃つ自信があった。
っていうか、俺が兄ちゃんを押し倒しているという、今この状況がめちゃくちゃ興奮して勃ちそう。
「そ……それはお前が急に予想外の行動に出るからで……」
「じゃあ今は? 兄ちゃんは今、俺に押し倒されてんだよ? 抵抗はしねぇの?」
「っ……!」
まだ何もされていないから大丈夫――とでも思っているのか、俺に押し倒された後も、兄ちゃんから抵抗らしい抵抗はなかった。
そういうところが兄ちゃんの警戒心の無さであり、取り返しのつかない隙なんだと思う。
(ほんと、こんな簡単に俺なんかに押し倒されやがって……)
俺にとってはラッキーな展開でもあるが、改めて知った兄ちゃんの隙の多さ、警戒心の欠如には腹が立った。
こんなにも簡単に男に押し倒されているようじゃ、兄ちゃんを襲うなんてチョロいもんじゃん。鵜飼先生や遠山先生じゃなくても、兄ちゃんに手を出そうと思えば誰でも手を出せるってことだよな。
「べっ……別に抵抗する気がねぇわけじゃねーからなっ!」
「ほんとに? だったらさぁ……」
口では反抗的な態度を見せる兄ちゃん。でもな、口ではどうとでも言えるんだよ。肝心なのは、兄ちゃんの身体がどこまであの二人によって、男の都合いいように開発されているか――だ。
抵抗する気があっても、実際に抵抗しなくちゃ意味がないもんな。
「今から俺、兄ちゃんに手ぇ出すつもりだから。本当に嫌なら抵抗してみせろよ」
兄ちゃんに抵抗する意思が本当にあるのかを確かめるため、俺は押し倒した兄ちゃんに覆い被さると、昨日俺がつけた噛み痕の上から兄ちゃんの首に唇を這わせ、兄ちゃんのシャツの中に手を突っ込んだ。
そして、兄ちゃんのシャツの中に突っ込んだ手で、兄ちゃんの身体を撫でながらシャツを捲り上げ、兄ちゃんの胸を露わにしてやると、胸の上の小さな膨らみを指の腹で意地悪く擦り上げてやった。
「ぅあっ……てめっ……どこ触ってんだっ……」
俺に乳首を擦られた兄ちゃんの身体はビクンっと震え、兄ちゃんの顔は真っ赤になった。
初めて触った兄ちゃんの胸は思っていたほど硬くなくて、ボリュームがあって弾力のある兄ちゃんの胸は触っていて気持ち良かった。
このボリュームなら胸だって揉めそうだよな。俺の胸には揉めるほどの肉なんか付いていないけど。
「どこって? 兄ちゃんの胸。俺言ったよな? 今から兄ちゃんに手ぇ出すから、本当に嫌なら抵抗しろって」
何か俺。物凄く余裕ぶっこいて兄ちゃんを組み敷いているように見えるかもしれないけど、実は心臓バクバクだったりする。
そりゃそうだろ。だって俺、童貞だよ? こういう妄想なら何度かしたことがあっても、実際に自分が誰かを組み敷いた経験なんてないんだから、心臓があり得ない速さで脈打っちまうのは当然なんだ。
でも、兄ちゃんにそれを悟られたくない俺は、兄ちゃんの前で精一杯虚勢を張るしかなかった。
まあ、そのうち兄ちゃんにも俺がめちゃくちゃ緊張していることはバレちゃうと思うけどね。
俺と兄ちゃんの身体が密着すればするほど、俺の鼓動は兄ちゃんにも伝わるだろうから。
だけど、まだ兄ちゃんとそこまで身体を密着させているわけではない俺の鼓動は、兄ちゃんに伝わっていないから
「っ……今ならまだ冗談で許してやっから……。だから、今すぐ俺の上から退けって……」
兄ちゃんはどうにかして俺を思い留まらせようとしてきた。
だから、口じゃなくて身体で抵抗してみせろっていうんだ。口で抵抗されただけじゃ、本当に兄ちゃんが嫌がっているかどうかがわかんねーじゃん。
「兄ちゃんこそ、口で言うだけじゃなくて実際に抵抗しろよ。じゃないと俺、マジで兄ちゃん襲っちゃうよ?」
ここまできたら本当はもう抵抗なんてされたくないんだけど、本当にこのまま俺が兄ちゃんを抱いてしまってもいいのか――という疑問はある。
だって俺、まだ兄ちゃんに自分の気持ちをちゃんと伝えてないし。本当に兄ちゃんとセックスするなら、兄ちゃんの気持ちはどうであれ、俺が兄ちゃんのことをそういう意味で好きなんだってことは伝えておきたいよな。
そうじゃないと、お互い欲望のためだけにセックスしたみたいになっちゃって、俺も鵜飼先生や遠山先生と同じように、兄ちゃんにとってセフレの一人扱いになってしまうかもしれない。
でも、俺は兄ちゃんとセックスするだけの関係になりたいわけじゃない。俺は兄ちゃんのことが好きだから、兄ちゃんとは恋人同士になりたいんだ。
もっとも、俺と兄ちゃんは血の繋がった兄弟だから、仮に俺と兄ちゃんが愛し合う仲になったところで、恋人同士とはまた違った関係になるのかもしれないけどさ。
「お前……今言ったこと、マジで後悔すんなよ……」
全く引かない俺に兄ちゃんの顔は怖くなったけれど、俺が指先で弄んでいた兄ちゃんの乳首をキュッと摘み上げると
「んんっ……! ばっ……馬鹿ぁっ……」
兄ちゃんは急に泣きそうな顔になって、可愛い声を上げた。
何なんだよ、その可愛い声と反応は。舐めてんのか? 今ので完全に俺のナニが勃っちまったじゃねーか。
「兄ちゃん……」
もう俺の気持ちがどうのこうの言ってる場合じゃない。そんな余裕はなくなった。
それももちろん大事なんだけど、そんなことは後回しでいいと思えるくらい、俺は今すぐ兄ちゃんを抱きたい衝動に駆られた。
「兄ちゃん……」
完全にスイッチが入ってしまった俺が、薄いピンク色から濃い赤へと変わっていく兄ちゃんの乳首に吸い付こうとした時だ。
「いっ⁉」
俺の張り詰めたナニのすぐ下あたりに、兄ちゃんの膝蹴りがめり込んできた。
直撃は免れたものの、ナニに当たっていたらどうするつもりだよ。この歳で俺のナニが使いものにならなくなったら、俺は一生兄ちゃんを許さないからな。
「何すんだよっ! 兄ちゃんっ!」
「そりゃこっちのセリフだっ! てめぇこそ兄貴に何しようとしてんだっ! 発情してナニをおっ勃ててんじゃねぇよっ! 俺はお前をそんな変態野郎に育てたつもりはねーぞっ!」
「俺がこうなった原因は兄ちゃんだろっ! 何なんだよっ! 今のエロ可愛い反応っ! あんなもん見せられたら誰だって勃つわっ!」
「はあっ⁉ あれのどこがエロ可愛いっつーんだっ! 普通の反応だってのっ!」
「普通⁉ 兄ちゃんの言う普通って何⁉ どういうの⁉ 兄ちゃんにとっては普通でも、俺にはめちゃくちゃエロく見えたんだけど⁉」
あっれぇ~? 俺と兄ちゃんって今からエッチなことする流れじゃなかったっけ? 少なくとも、俺は完全にその気だったんだけど。
確かに、嫌なら抵抗しろとは言ったけどさぁ。人をその気にさせるだけさせておいて、その直後に兄ちゃんから膝蹴りが飛んでくるとは思わないじゃん。膝蹴り入れるタイミングがおかし過ぎるだろ。抵抗するならするで、もっと早く抵抗しろよ。
「お前が嫌なら抵抗しろっつったからしたんだよっ! てめぇが言ったことなんだから文句言うなっ! タマ蹴られなかっただけありがたいと思えっ!」
「ぐっ……」
兄ちゃんを組み敷いたことで、一時的に兄ちゃんよりも優位な立場になれた気がしていたけれど、結局俺は兄ちゃんに勝てないのだと実感した。
兄ちゃんに怖い顔で凄まれたら、逆らっちゃいけないという本能が働いてしまって、何も言い返せなくなってしまう俺がいる。
「ったく……兄ちゃんに襲い掛かろうとするなんざ、とんでもねぇ弟だわ。そんなに欲求不満ならさっさと彼女でも作りやがれ」
せっかく兄ちゃんを押し倒すところまで行ったのに、その先に進めなかった俺は、兄ちゃんにもただの欲求不満だと思われてしまい、泣きたい気分だった。
やっぱり最初に言うべきだったのかなぁ……。俺は兄ちゃんのことが恋愛的な意味で好きなんだってこと。そうしたら、兄ちゃんも少しは俺に流されてくれたかもしれない。
でも、その感情を兄ちゃんに拒絶されてしまったら、俺は二度と立ち直れないくらいのダメージを負う。
兄ちゃんが俺のことを弟以外の何物でもないと思っている以上、俺が兄ちゃんに自分の気持ちを伝えるのはハードルが高過ぎるんだよな。
「いいかぁ? 今日のことは許してやっから、もう二度と変な気起こすんじゃねぇぞ? わかったか?」
「…………うん……」
本当なら、兄ちゃんの制止も聞かず兄ちゃんに襲い掛かろうとした俺のことを、兄ちゃんはそう簡単に許したくないのかもしれない。
でも、自分にも全く非がないわけじゃないという自覚があるからなのか、今回は大目に見てくれることにしたらしい。
「あと、夕飯の前にソレ何とかしてこい」
「っ……!」
乱れた服を整え、ソファーから立ち上がる兄ちゃんをしゅんとした目で見詰めていた俺は、台所に向かう前に俺を振り返り、俺の股間を指差しながら言う兄ちゃんにハッとなった。
そうだったぁ……。俺、兄ちゃんのせいでナニが勃ちっぱなしのままじゃん。
それを兄ちゃんに指摘され、剰え「何とかしてこい」とか言われる俺って恥ずかし過ぎじゃね?
「うっ……うるさいなっ! 言われなくても何とかするよっ!」
「言っとくけど、俺をオカズにしやがったら、お前の夕飯からおかず失くしてやるからな」
「わかってるよっ!」
畜生……。せっかく兄ちゃんを抱けるチャンスだったのに、何で俺が俺自身を自分で慰めなきゃいけなくなるんだよ。
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「晩飯は三十分後だからな。それまでには終わらせろよ」
「いちいちうるさいなっ! もうっ!」
兄ちゃんを押し倒す度胸は見せたのに、結局兄ちゃんに何もできなかった俺は、その後の兄ちゃんとのやり取りが嫌過ぎて、しばらくの間、家出をしてやりたい気分だった。
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