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第三章 嫉妬
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しおりを挟む「あの、言いたいことがあるならハッキリ言ってくださいよ。俺に兄ちゃんと鵜飼先生や遠山先生のことで口出しするなって言いたいんでしょ? そんなの無理に決まってますけど」
本題にはすぐ入ったけれど、鵜飼先生が何を言いたいのかいまいちよくわからなかった俺は、今度は俺の言いたいことを鵜飼先生に言ってみたんだけど
「じゃあハッキリ言うわ。お前のせいでこの三日間、真実ちゃんが俺に素っ気ないんだけど。俺とエロいことしてくんねーんだけど?」
ややキレ気味でそう返された。
いや……何言ってんの? この人。言ってることがまるで子供じゃん。っていうか、愚痴? 大の大人が高校生相手に愚痴んなよ。
というより何より、たかが三日間兄ちゃんに素っ気なくされたくらいで何なんだよ。俺なんて、三日以上も兄ちゃんにつれなくされたことだってあるのに。
たった三日間兄ちゃんに素っ気なくされて、兄ちゃんとエロいことができないって理由で、俺は鵜飼先生に呼び出されたってこと?
(迷惑なんですけどっ!)
どう考えても、わざわざ俺が呼び出されるような内容ではないし、そもそも、この三日間っていうなら、それは俺のせいでも何でもない。兄ちゃんは親友の凜さんに説教されたから、鵜飼先生への態度を改めたってことになるから、俺が鵜飼先生に恨まれる必要は一切なかった。
こっちは限界迎えてやっと兄ちゃんとセックスさせてもらってんだよ。本当は毎日だってシたいけど、兄ちゃんの身体のこととか考えて、次の日が休みの日を選んで兄ちゃんとセックスさせてもらってんだよ。
それなのに、たかが三日兄ちゃんとエロいことできないだけで、弟の俺を呼び出すほど不満を抱える鵜飼先生って何だ。三日も我慢できないくらい、兄ちゃんと鵜飼先生は頻繁にセックスしてるってことなのか?
仮にそうだったとしても
「何で俺にそんな話を?」
兄ちゃんの弟である俺に、そんな話をするのはどうかと思う。第一俺、兄ちゃんと鵜飼先生の関係だって認めていないっていうのに。
「だって、お前のせいなんだろ? 真実ちゃんが俺とセックスしてくんねーの」
「はあ⁉」
「どうせお前が言ったんだろ? 〈鵜飼先生や遠山先生とセックスすんなっ!〉って。それで真実ちゃんが俺や遠山との距離を取ろうとしてんじゃねーの?」
「俺のせいじゃねーよっ!」
だから、それは俺のせいじゃなくて凜さんのせいなんだって。
確かに俺も二人とセックスするのはやめて欲しいって兄ちゃんに言ってるけど、兄ちゃんは俺の言葉を全然聞いてくれなかったんだから。
とはいえ、凜さんのことを知らない鵜飼先生は、兄ちゃんの態度が急に素っ気なくなったのは俺のせいって思うだろうな。
あからさまに声を荒げて俺を責めてくるわけじゃないから、怒られているとか、説教をされている気分にはならないけれど、明らかに俺を責めている鵜飼先生に、俺は絶句したくなる気分だった。
責めたいのはこっちなんだよ。俺の大事な兄ちゃんに手を出した挙げ句、兄ちゃんをあんな淫乱なセックス好きにしやがって。そんなことが許されるとでも思ってんのか? この男は。
あと、鵜飼先生って兄ちゃんがいなくても兄ちゃんのことは〈真実ちゃん〉って呼ぶんだな。俺はてっきり、兄ちゃんが嫌がるのを見たいから、兄ちゃんの前でだけ言っているのかと思っていたわ。
「余計なこと言わないでくんない? 俺、今は真実ちゃんとイチャイチャする時間が一番幸せなんだからさぁ。俺と真実ちゃんの邪魔すんなよ」
「……………………」
あまりの言い種に絶句した。何て自分勝手な主張だと呆れたし、ちょっとは俺の気持ちも考えろよ、と思った。
邪魔すんな、って言ってるけどさぁ、邪魔されてるのはこっちなんだよ。俺と兄ちゃんの日常に割り込んできて、兄ちゃんを俺から取り上げようとしているのは鵜飼先生の方なんだよ。
兄ちゃんを俺から引き離そうとする人間は全て敵だ。排除すべき害虫だと思っている。
「い……言わせておけばぬけぬけと……。そりゃ邪魔するわぁっ! 俺、兄ちゃんとあんたの関係は断固認めねーからなっ! どんな手を使ってでも、兄ちゃんにあんたとの関係をやめさせてやるっ!」
鵜飼先生の発言に一瞬言葉を失っていた俺も、さすがに邪魔者扱いされたら黙っていられない。鵜飼先生が俺を邪魔だと思っている気持ち以上に、俺だって鵜飼先生が邪魔でしょうがない。
だからもう、ここは生徒と教師とか関係なく、徹底的に鵜飼先生と争うところだと思った。俺と鵜飼先生の、兄ちゃんを巡っての全面戦争勃発だ。
「いやいや。何も認めてくれなくてもいいんだって。認めてもらおうなんて思ってねーし。ただ、俺は真実ちゃんのことが好きだから、真実ちゃんとイチャイチャしたいだけなんだって」
「だからっ! それが俺は嫌なんだって! 何で俺があんたと兄ちゃんのイチャイチャに協力しなきゃなんねーんだっ!」
「協力しなくてもいいから、そっとしといてくれって話なんだよ」
「それも無理っ! 俺、兄ちゃんがあんたとシてるとかマジ無理だもんっ!」
「無理って言われてもなぁ……。俺と真実ちゃん、もう一年以上そういうことシてんだよ? 今更無理とか言われてもなぁ……」
「ただのセフレなんだろっ⁉ あんたはそうじゃなくても、兄ちゃんはそう思ってるよっ! 大体、あんた女にモテるんだから、普通に女とそういうことスりゃいいじゃんっ!」
「それがなぁ……。一回真実ちゃんとヤっちゃうと、真実ちゃんがいいってなんのよ。それくらい、俺と真実ちゃんって身体の相性抜群なんだよなぁ」
「身体の相性とか言うなぁっ! 俺の大事な兄ちゃんだぞぉっ!」
あぁぁぁぁーっ! もうこの人嫌っ! 何言っても全然兄ちゃんのこと諦めようとしてくんねーじゃんっ! 俺はどうすりゃいいの⁉
そりゃな、あんだけエッチで可愛いうえ、男を最高に気持ち良くしてくれる名器を持っている兄ちゃんの身体を知ったら、もう他の人間とはデきなくなっちゃう気持ちもわからなくはないよ?
でもな、兄ちゃんは俺の兄ちゃんだし、弟だけど兄ちゃんのことが大好きな俺に、「ほっといてくれ」は到底受け入れられる話じゃないんだよ。
そもそも、兄ちゃんには鵜飼先生以外に遠山先生という、もう一人のセフレだっているじゃん。それについてはどうなんだよ。
俺に邪魔されるのは嫌だけど、兄ちゃんが遠山先生とセックスするのはいいってこと? それはそれで意味わかんねーんだけどっ!
「俺に文句言う前に、遠山先生はいいのかよっ! 遠山先生だって兄ちゃんとヤってんだろっ⁉ 俺に兄ちゃんとの仲を邪魔するなって言うなら、まずそっちをどうにかしろよっ!」
兄ちゃんと鵜飼先生、兄ちゃんと遠山先生の関係、そのどちらも俺は認めていない。
が、兄ちゃんとちょっとセックスできないくらいで真っ先に俺に文句を言ってくる鵜飼先生に、俺は兄ちゃんと遠山先生の関係について突っ込まずにはいられなかった。
どうやら鵜飼先生は兄ちゃんが自分とセックスしてくれない本当の理由ってやつをまだ知らないみたいだけど、俺に文句を言う前にまずそこじゃね? って感じなんだけど。
もしかしたら、原因は俺じゃなくて遠山先生――って可能性もあるわけだから。
「あー、そっちはいいんだ。だって、俺と遠山は共犯っつーか、共謀関係みたいなもんだから」
「はあ⁉」
「お互いの存在が煩わしいこともあるっちゃあるけど、真実ちゃんとのセックスライフを楽しむためには、事情を知ってる協力者も必要ってことだよ。じゃないとほら、学校でなかなかそういうことできねーだろ?」
「なっ……なっ……」
やっぱ学校でヤってんのかよっ! 何やってんだっ! 兄ちゃんっ!
「真実ちゃん、お前がいるから夜は家に帰らないといけないって言うし、休みの日もお前と一緒に過ごすって言うから、こっちは限られた時間の中で真実ちゃんとのセックスライフを楽しまなくちゃいけないわけよ。放課後とか空き時間を利用してな。だから、真実ちゃんと二人きりになるためにも、一人は口裏合わせてくれる人間がいてくれないと、真実ちゃんと二人きりになるのも大変なんだよ」
「~……」
どこまでも軽いノリで話す鵜飼先生に、俺は沸々と込み上げてくる怒りが止まらなかった。
これって殺意? 殺意かな? 多分、殺意だな。
勤務中であるにも関わらず、頭の中は兄ちゃんとセックスすることでいっぱいな鵜飼先生に、俺は言葉では言い表せないくらいの殺意を覚える。
こんな人間が教師でいいのか? 絶対にダメだろ。
「つまりだ。お前はそれだけ真実ちゃんに特別扱いされているし、真実ちゃんと一緒に過ごす時間もたっぷりあるわけだ。だから、兄貴としての真実ちゃんじゃなくて、一人の人間としての真実ちゃんのことも考えてやれっての。真実ちゃんだって男なんだから、エロいことだってしたいんだよ。真面目そうに見えて、真実ちゃんって結構淫乱なんだぜ?」
「…………………」
知ってるわ。兄ちゃんが見掛けによらず淫乱で、セックス大好きだってことは、兄ちゃんと三回セックスした俺だって充分過ぎるほど知ってるわ。
一度スイッチが入ると、血の繋がった兄弟云々なんてことはどうでもよくなるくらい、欲望を優先させてしまう兄ちゃんを三回も見た俺は、今更鵜飼先生に言われなくてもいいくらい、兄ちゃんがセックス大好きってことを知っている。
でもさ、それを鵜飼先生にドヤ顔で言われるのはやっぱり癪だし、不愉快極まりないって感じなんだよな。まるで自分は兄ちゃんの彼氏みたいな顔をされるのだって、俺には我慢ならないことだ。
兄ちゃんと鵜飼先生はヤることヤってる仲ではあるが、何も二人は恋人同士ってわけじゃない。兄ちゃんはまだ誰のものでもないんだよ。
だから
「たかがセフレの分際で調子に乗んなよ? 兄ちゃんはお前のもんじゃねーんだから彼氏面すんな」
精一杯の皮肉を込めて、これでもかってくらいの嫌味を言ってやったつもりなんだけど
「別に彼氏面してるつもりはねーんだけどなぁ。そういうお前こそ、たかが弟ってだけで真実ちゃんを独占しようとし過ぎだろ。兄弟仲がいいのは結構なことだけど、ブラコンもそこまでいくとちょっと引くわ。まさかとは思うけど、お前、真実ちゃんのこと好きとか言う? だとしたら、マジでありえねーんだけど」
更なる皮肉を込めた嫌味を返され、俺の怒りは頂点に達した。
そのまさかだけど、何か悪いのかよ。俺が血の繋がった実の兄貴を好きだったとしても、鵜飼先生にだけはとやかく言われたくねーよ。
それに、そうありえない話でもない。
だって、兄ちゃんは俺の気持ちを知っているし、それを知ったうえで俺とセックスもしているんだから。
兄ちゃんに俺に対する恋愛感情がなかったとしても、ヤっていることは鵜飼先生と変わらないし、むしろ弟という立場故に、家族としての愛情なら兄ちゃんも持ってくれているわけだから、兄ちゃんに愛されているという意味では、俺の方が鵜飼先生より勝っているようにも思うんだよな。
鵜飼先生は俺と兄ちゃんが兄弟の一線を越えてしまっていることを知らないようだけど、こうなったらもう、こっちだって暴露してやろうと思った。
俺は兄ちゃんの弟としてだけでなく、兄ちゃんを好きな人間としても、兄ちゃんと鵜飼先生の関係に口出しする権利があるってことを思い知らせてやるんだ。
「ご心配なくっ! 兄ちゃんは俺の気持ちを知ってるし、俺が兄ちゃんを独占したいって気持ちだって知ってるからっ! 知ったうえで、兄ちゃんは俺ともシてくれてっからっ!」
兄ちゃんがまだ鵜飼先生に言っていないことを、俺が先に言ってしまってもいいものか――と一瞬悩んだけれど、俺と鵜飼先生の戦いはもう始まっているのだから、今更そこに気を遣う必要は無いと思った。
兄ちゃんには後でしこたま謝ることにする。
「……………………」
俺の反撃に鵜飼先生は目を丸くして驚いたように見えたけど、俺が冗談や嘘を言っているわけではないとわかるなり
「…………マジ?」
今度はあからさまにドン引きした顔でそう聞いてきた。
そんな鵜飼先生の表情が、俺は無性にムカついた。
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