お兄ちゃん絶対至上主義☆

藤宮りつか

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最終話 前進

 11

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 というわけで、俺と兄ちゃんは恋人同士ではないものの、兄弟で愛し合う恋仲になった。
 その結末は、俺達の関係を知る人間の間にも当然知れ渡り

「本当にそれでいいの? まあ、確かに兄弟だと恋人同士って感じにはならないのかもしれないけど」
「別にいいんじゃね? っていうか、結局お互いに好き合ってんなら、兄弟でも恋人同士でもぶっちゃけ同じだし」
「それもそっか。お互いに気持ちは確認し合っているんだから、兄弟でも恋人同士でも同じだよね」

 日向や与一にはそんなことも言われたけれど、二人とも俺と兄ちゃんが恋愛的な意味で結ばれたことは祝福してくれているみたいだった。
 兄ちゃんの方も、一応鵜飼先生や遠山先生に結果を報告したら、鵜飼先生には

「兄弟のままってところが真実ちゃんっぽいね。ま、俺はいいと思うよ」

 と言われ、遠山先生には

「待てっ! 俺はまだ神崎のことを諦めてないぞっ!」

 って物凄く焦られてしまったみたいだけれど、そんな遠山先生に兄ちゃんは

「いや、諦めろよ。花江とのこともあんだから。諦めて花江と付き合ってやれよ」

 とまあ、遠回しに遠山先生のことを振ってはみたんだけれど、遠山先生はまだまだ兄ちゃんのことを諦めるつもりがないらしい。
 もちろん、俺達の兄弟のことをずっと心配してくれている凜さんにも報告したら、凜さんは

「それがお前達兄弟の出した答えなら、俺はもう何も言わない。二人で末永く幸せにやれ」

 って言ってくれた。
 そうやって今まで俺達のことを何かと気にしてくれていた人間に報告を済ませてしまうと、俺と兄ちゃんの日常もやっと落ち着いたって感じがして、俺の毎日は物凄く穏やかになった気がする。
 そして何より

「真弥ぁ。兄ちゃん明日休みだから、今日は真弥とセックスしてぇ」

 俺と恋仲になった兄ちゃんが、俺のことを普通に求めてくれるようになった。
 正直、兄ちゃんが俺に惚れているとわかっても、俺と兄ちゃんの日常に何の変化もないと思っていたのに。スイッチが入ったわけでもなく、酔っ払っているわけでもない兄ちゃんから、「セックスしたい」って言ってくれるようになるとは思わなかった。
 今までは何となく――な感じで始まっていたセックスが、ちゃんと〈シよう〉って感じで始まるのは新鮮で、逆にちょっと照れ臭くもあった。
 とはいえ、いざエッチなことを始めたら、照れ臭さなんてものはあっという間になくなり、相変わらず乱れに乱れてくれる兄ちゃん相手に、俺も遠慮なんかできなくなっちゃうんだけどね。

「ぁあっ! っん……だっ、めぇっ! ……イく……イくぅっ……」
「いいよっ……兄ちゃんの大好きな奥、いっぱい突いてあげるからっ……兄ちゃんもいっぱいイっていいよっ……」
「んんんっ! ぁっ、あっ、あ……ぁあんんんんっ!」

 可愛い声で喘ぎながらイく兄ちゃんの姿はいつ見ても可愛い。可愛くて、エッチで、何度でも見たいと思う。

「あぁ……ん……真弥……好きぃ……」

 一度俺に「愛してる」って言ってくれた兄ちゃんは、それ以来、俺に「愛してる」は全然言ってくれないけれど、「好き」はいっぱい言ってくれる。
 でも、兄ちゃんの言う「好き」は「愛してる」って意味だとわかったから、俺は兄ちゃんの言う「好き」が大好きになった。
 一方

「俺も。兄ちゃんのこと、世界で一番愛してるよ……」

 俺の方は相変わらず「愛してる」を連発している。
 兄ちゃんは「大好きの方がいい」って言うけど、兄ちゃんが「愛してる」を言わないから、俺は「愛してる」を言い続けるつもりだ。
 俺から言われる「愛してる」に兄ちゃんはやっぱり照れるけど、言ったら言ったで嬉しそうな顔をするもんな。





「ところで、真弥は兄ちゃんの何がそんなにいいんだぁ?」

 二人で絶頂を迎え、セックスの余韻にどっぷりと浸っていた俺と兄ちゃんは、少しずつ意識がハッキリしてくると、所謂ピロートークというやつをすることもしばしば。
 今日はまだわりと元気がある兄ちゃんは、俺に向かって「今更?」なことを聞いてきた。

「何って……全部だけど? そんなの兄ちゃんだってとっくにわかってるじゃん」

 一体何の確認なんだろう……と、思わず首を傾げてしまいたくなる俺だったが、俺の答えを聞いて安心したような顔をしている兄ちゃんを見て

(俺に愛されている確認がしたかったのかな?)

 と、勝手に解釈することにした。
 お互いに愛し合う仲になった後も、兄ちゃんはあからさまに俺とイチャイチャすることには抵抗があるみたいだけど、時々俺の気持ちを確かめたくなることがあるみたいだった。
 きっと兄弟なんかで愛し合っているから、〈本当にこの関係はずっと続くのか?〉という不安があるのかもしれない。
 両想いになったからって、俺と兄ちゃんの日常に大きな変化はなかったし。
 だけど、それこそが俺と兄ちゃんの関係が不変である証拠なんじゃないかって、俺は思っている。
 それに、兄ちゃんはあまり俺とイチャイチャしている自覚はないようだけど、俺と兄ちゃんの日常って結構イチャイチャしていると思う。
 元々仲のいい兄弟だったし、両親を失ってからは兄ちゃんの俺に対する過保護も強くなった。俺と兄ちゃんは誰の目から見ても、仲睦まじい兄弟に見えるみたいだった。
 もっとも、兄ちゃんにはその自覚も全然ないわけだけど、少なくとも、俺の周りにいる人間はみんなそう思っている。兄ちゃんは俺に対して過保護な兄だし、俺は兄ちゃん大好きなブラコン弟だと思われている。
 そのせいで、クラスの女子から羨ましがられたり、妬まれることもあるくらいだ。
 つまり、俺と兄ちゃんは恋仲になる前から既に〈仲の良過ぎる兄弟〉と思われていたし、俺達兄弟の日常は最初からイチャイチャしていたと言えるのかもしれない。
 まあ、さすがに〈イチャイチャしてる〉とまでは思われていなかったとは思うけど。

「んん……まあ……。でも、全部ってのは何かズルくね?」
「そう? だけど俺、実際に兄ちゃんに直して欲しいところなんてないもん。しいて言うなら、チョロいところだったり、危機管理ができていないところは気をつけて欲しいと思うけど、そういうところも結局は可愛いと思っちゃうからなぁ……。ほんと、兄ちゃんの全部が可愛くて、大好きなんだよね」
「んだよ。お前は兄ちゃんのこと、チョロいと思ってんのかぁ?」
「だって、兄ちゃんって流されやすいんだもん。俺と初めてヤった時も、結局は流されたわけだし」
「そ……それはそうだけどぉ……」

 どうやら兄ちゃんは自分がチョロいという自覚もないみたいだ。兄ちゃんは鵜飼先生にも〈チョロいところがある〉と思われているんだから、そこは自覚した方がいいと思う。

「なぁに? 兄ちゃんは全部って答えじゃ不満なの?」

 ベッドの中で兄ちゃんと裸で抱き合う俺は、兄ちゃんの身体を抱き直し、兄ちゃんとの距離をグッと縮めると、兄ちゃんのおでこにキスをしながら、あやすように兄ちゃんの背中を優しく撫でてあげた。

「別に……そういうわけじゃねぇけどぉ……」

 思いっきり俺に甘やかされているという雰囲気に、兄ちゃんの目はとろんとなり、俺に擦り寄るように抱き付いてきた。
 兄ちゃんとこうなるまでは知らなかったけど、兄ちゃんって結構甘えるのが好きなんだよな。
 多分、ずっと俺の兄ちゃんをやっていたから、俺の前では見せられない姿だったんだろう。
 でも、今は俺にも普通に甘えてくれるようになったから、俺はそれが嬉しい。

「じゃあさ、逆に聞くけど、兄ちゃんは俺のどういうところが好きなの?」

 兄ちゃんの背中を撫でながら、今度は兄ちゃんのぽっぺたにキスをしながら俺が聞くと

「んー…………顔」

 兄ちゃんからは意外な答えが返ってきた。

「え? 兄ちゃんって俺の顔が好きなの?」

 まさか兄ちゃんから「顔」って答えが返ってくるとは思わなかった。顔なら俺より兄ちゃんの方がよっぽど整っていると思うんだけどなぁ。
 それに、兄弟だけあって俺の顔はちょっと兄ちゃんに似ている。自分に似ている俺の顔を兄ちゃんが好きだと言ってくれるとは思わなかった。

「おう。好き。顔っつーか表情? お前、たまにすげー大人っぽくて優しい顔するじゃん。そういう顔されると胸がギュッてすんだよな。まあ、顔は顔で男前だから好きだけど」
「へー……そうなんだ」

 なるほど。顔は顔でも表情って意味か。
 兄ちゃんの言う〈すげー大人っぽくて優しい顔〉っていうのがどういう顔なのか俺にはわからないけれど、どうやら兄ちゃんは俺のそういう表情に胸がときめいてしまうらしい。
 兄ちゃんが俺に惚れてくれたのも、俺がそういう表情を見せるようになったからなのかもな。

「あとはまあ、やっぱ弟ってとこかなぁ。こう言っちゃなんだけど、お前が俺の弟じゃなかったら、俺がお前に惚れることもなかったんじゃないかって思うし」
「最初は散々〈弟はない〉って言ってた癖に」
「だからだろ。絶対にないと思ってたもんがアリになっちまったんだから、〈お前じゃなきゃダメ〉になんだよ」
「そういうもの? まあ、俺は兄ちゃんに好きになってもらえたら何でもいいんだけどさ」

 ちゃんと聞いたことがなかったけど、兄ちゃんの俺の好きなところが〈顔〉と〈弟〉ってところは本当にびっくりだよ。
 でもまあ、そうやってちゃんと答えが返ってくること自体が嬉しかったりもするんだけどさ。
 それにしても、兄ちゃんにとって俺が弟だってことが本当に重要なんだってことがよくわかった。
 俺も兄ちゃんが俺の兄ちゃんであることが物凄く大事って思うんだけど、兄ちゃんは俺以上にそう思っているような気がする。
 そして、その重要な部分は絶対に変わることがないから安心する。

「俺、兄ちゃんが俺の兄ちゃんでいてくれて本当に幸せ」

 兄ちゃんの背中を撫でるのはやめにして、兄ちゃんをぎゅうっと抱き締めてそう言うと

「俺も……。真弥が俺の弟で本当に良かったって思ってる」

 兄ちゃんもそう返してくれた。
 兄弟で愛し合うだなんて行為を許せない人間は沢山いるだろう。
 でも、俺と兄ちゃんはこれでいい。俺にとっての一番はいつだって兄ちゃんで、これからもそれは変わらない。
 俺はこの先ずっと、俺が死ぬまで、兄ちゃん絶対至上主義でいると思う。
 そして、それは兄ちゃんも同じであって欲しいと心から願っている。


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