美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます

今野綾

文字の大きさ
17 / 131
若葉色パンケーキ 苺ジャムとバター添え

若葉色パンケーキ 苺ジャムとバター添え3

しおりを挟む
 村に戻ったアリシャの横にはボリスとココが並ぶ。陽気で話し上手なボリスが居てくれたら、村は活気づくに違いない。アリシャをからかわない時は本当に面白い話を聞かせてくれた。

「ボリス。遅いと思ったら……」

 エドは半ば呆れてボリスと握手を交わす。一緒に居たドクも「村には一年ぶりか? よく来たな」とこれまた握手をしていた。

「じゃあ、私は料理の続きを……。あ、もしベッドの枠を作れるようならお願いします。私が藁を運びます」

 苺がどっさり入ったカゴを両手で持ち、料理部屋に向かう途中、振り返ってベッドの話を思い出して口にした。すると、ボリスはまたアリシャをからかう糸口を見つけてニヤリとした。

「俺の為にわざわざベッドの心配をしてくれるなんて、優しいねぇ。でも、俺はアリシャのベッドで一緒に寝ても構わないんだがなぁ」

 からかわれているのがアリシャにはわかっていても、頬が火照る。この現象をどうにかしたかった。

 それよりもドクはボリスの言葉を真に受けてそれは良いと言うものだからアリシャは焦ってしまった。

「ドクさん……!」

「だってボリスもアリシャも適齢期だろ? うちの村に人が増えるのはありがてーし、なんて言ったって、アリシャの食事は最高だ。嫁に貰うならアリシャがいい……いや、別に料理の腕が全てじゃねぇが」

「そ、そ、そういう話はやめてください! あの、私は苺をやってきます」

 アリシャは苺のカゴを持って、一目散に料理部屋の逃げ込んだ。水分をずっしり蓄えた苺がカゴに山盛りなのに、この時だけは重さなんて感じることがなかった。

 アリシャは確かに結婚適齢期だし、ボリスもアリシャより十くらい上ならば、適齢期だ。だからこそ、やたらと現実味を帯びていた。

(だからって、ついさっき初対面の挨拶を交わした人と結婚なんてできるものですか!)

 ボリスは愉快な人かもしれないが、それ意外はなにもしらないのだ。あれよあれよと結婚が決まった例を見てきたことがあるだけに、思わず逃げ出してきたのだった。

 アリシャが鍋に苺を入れ水を加えて何度も洗っている間、宿屋の広間からは男たちの笑い声が絶えず聞こえてきていた。

 ココも広間の方が楽しそうだと感じたらしく、アリシャから離れてそちらに行ってしまっていた。

(レゼナさんの気持ちがわかるわ。女のコの友達とか、とにかく私にもお喋りできる人が居たらいいのに)

 レゼナとは会えば話すが、レゼナとウィンは畑にかかりっきりなので、なかなか会うことが出来ない。食事をする時くらいに限られてしまうので、他愛もない話をする機会に恵まれないのだ。

 苺を洗い終え、ナイフで全てのヘタを落としてから、広間に顔を出すと片方の扉を入れているところだった。

「あのー、ベッド作るなら藁を運んで来ますけど」

 エプロンで手を拭きながら問うと、ドクが一番初めに「あー、そうだなぁ」と反応してくれた。アリシャからボリスに視線を移したドクは「ここはいいからベッドの枠をつくっちまいな」と指示を出す。

「枠だけでも作れば藁が崩れませんしね。底板は後からやればいいか。じゃあアリシャ、藁を頼むよ」

 また何かしらからかってくるかと思ったらボリスはごく普通の返事をし、身構えていたアリシャは肩透かしにあった気分だった。

「ドクさん、ベッドは二階に作ればいいですかね?」

「ああ、それがいいだろうな。二階は窓も小さいのが一つきりだし、雨が降っても濡れなそうなところに作るといい」

 二人の会話を背で聞きながら外に出ると、明るさにクラリとする。目が慣れるまで待つと、足元でアリシャを見上げていたココの頭を撫でてやった。

「薄情なココ。汚名返上でついてくる気になったの?」

「おい、アリシャ」

 振り返るとエドがやって来ていた。

「俺が運ぶの手伝ってやるよ」

「あら、一人でも出来るわよ?」

「いいんだよ。ほら行くぞ」

 大きくノビをしながらエドは歩き出したので、アリシャもそれに続いていく。

 ヤギたちが草を食んでいる。あごひげがユラユラゆれていた。常にもぐもぐ顎を揺らすヤギは並んで歩くアリシャとエドを眺めていた。

「なぁ、ボリスはいい奴だ」

 徐にそんな話題になってアリシャは思いっきりしかめっ面でエドを睨んだ。

「だからなによ」

「誰にでもいい奴なんだってこと」

「それは素晴らしいことじゃない」

「だからさーほら、なんだ? 優しくされてもだな、それはアリシャが特別って事じゃなくてだな。女なら誰でもいい……んじゃなくて、誰にも優しくするんだよ」

 アリシャは片眉をクイッと上げて「忠告してくれているの? ボリスに夢中にならないように」と、先回りして問い詰めた。

「いや……俺、そういうの苦手だしわかんねーけどな!」

 頭をボリボリ掻くと「今日はいい天気だな」などと、わかりきったことを言って話を変えようとすらしていた。

「心配ご無用よ。彼がきっとプレイボーイだってことは私にだってわかるもの」

 なぜか、アリシャはボリスを好きになる前提で話されたことが腹立たしかった。いやそれより出会ったばかりの人に恋心を抱くような子供に思われたのが嫌だったのかもしれない。自分より子供なエドに忠告されたのが気に触ったのだ。たぶん。

「それならいいんだけど!」

 自分で出した話題だった癖に、エドは一刻も早くこの話を止めたくて仕方がないらしい。いつも自信満々で偉そうなのに、まるでエドらしくない態度でソワソワしている。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!

加藤伊織
ファンタジー
(全151話予定)世界からは魔法が消えていっており、錬金術師も賢者の石や金を作ることは不可能になっている。そんな中で、生活に必要な細々とした物を作る生活錬金術は「小さな錬金術」と呼ばれていた。 カモミールは師であるロクサーヌから勧められて「小さな錬金術」の道を歩み、ロクサーヌと共に化粧品のブランドを立ち上げて成功していた。しかし、ロクサーヌの突然の死により、その息子で兄弟子であるガストンから住み込んで働いていた家を追い出される。 落ち込みはしたが幼馴染みのヴァージルや友人のタマラに励まされ、独立して工房を持つことにしたカモミールだったが、師と共に運営してきたブランドは名義がガストンに引き継がれており、全て一から出直しという状況に。 そんな中、格安で見つけた恐ろしく古い工房を買い取ることができ、カモミールはその工房で新たなスタートを切ることにした。 器具付き・格安・ただし狭くてボロい……そんな訳あり物件だったが、更におまけが付いていた。据えられた錬金釜が1000年の時を経て精霊となり、人の姿を取ってカモミールの前に現れたのだ。 失われた栄光の過去を懐かしみ、賢者の石やホムンクルスの作成に挑ませようとする錬金釜の精霊・テオ。それに対して全く興味が無い日常指向のカモミール。 過保護な幼馴染みも隣に引っ越してきて、予想外に騒がしい日常が彼女を待っていた。 これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。 彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。 毎日15:10に1話ずつ更新です。 この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

【完結】没落令嬢、異世界で紅茶店を開くことにいたしました〜香りと静寂と癒しの一杯をあなたに〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
夜会で父が失脚し、家は没落。屋敷の裏階段で滑り落ち、気づけば異世界――。 王国貴族だったアナスタシアが転移先で授かったのは、“極上調合”という紅茶とハーブのスキルだった。 戦う気はございませんの。復讐もざまぁも、疲れますわ。 彼女が選んだのは、湖畔の古びた小屋で静かにお茶を淹れること。 奇跡の一杯は病を癒やし、呪いを祓い、魔力を整える力を持つが、 彼女は誰にも媚びず、ただ静けさの中で湯気を楽しむのみ。 「お代は結構ですわ。……代わりに花と静寂を置いていってくださる?」 騎士も王女も英雄も訪れるが、彼女は気まぐれに一杯を淹れるだけ。 これは、香草と紅茶に囲まれた元令嬢の、優雅で自由な異世界スローライフ。

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/387029553/episode/10775138 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

平民に転落した元令嬢、拾ってくれた騎士がまさかの王族でした

タマ マコト
ファンタジー
没落した公爵令嬢アメリアは、婚約者の裏切りによって家も名も失い、雨の夜に倒れたところを一人の騎士カイルに救われる。 身分を隠し「ミリア」と名乗る彼女は、静かな村で小さな幸せを見つけ、少しずつ心を取り戻していく。 だが、優しくも謎めいたカイルには、王族にしか持ちえない気品と秘密があり―― それが、二人の運命を大きく動かす始まりとなるのであった。

処理中です...