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若葉色パンケーキ 苺ジャムとバター添え
若葉色パンケーキ 苺ジャムとバター添え4
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そういえばエドとは一番話しているかもしれないという事実に思い当たって、まだ所在なさげなエドを見てみた。
(時々、ムカつくけど……歳も近いし、一番話しやすいのはエドなのかも)
そこで口の悪いエドを友だと認めるのか自問自答をしていると、ウィンが二人に声を掛けてきた。
「どこ行くんだ?」
「ああ、藁を取りにな。ボリスが来たから」
エドの答えにボリスがアリシャを盗み見たのをハッキリ感じて「なに? ウィン」と聞いてみた。
「ああ……いや。何か困った事態になってないかい? 嫌なこととか、とにかく何でもいいから言うんだよ。力になるから」
もしかするとウィンもボリスの事を心配しているのかもしれない。ただ、言い方は兄弟でもここまで違うのかと思わせる程、差があるが。ウィンはいつだって優しく包んでくれるような態度なのだ。
「ありがとう、ウィン。困ったことと言えば、エドがなんでもかんでも味見しちゃって量が減ることかしら」
ハッと息を吐き出して「俺かよ! そんなに食ってないだろー」とエドが怒りだす。
「でも食べてはいるんだな?」
ウィンに指摘されると不貞腐れたような表情になり、なぜか足元にいたココを抱き上げた。
「ココ、こいつら二人して俺のこと攻めるんだぜ。若いと腹が空くんだよなー?」
若いと言っても赤ちゃんのココとエドでは全然違うのに、エドは大真面目な顔でココに話しかけていた。それがどうにもおかしくて笑ってしまった。
三人で荷車に、必要な藁やボリス用の丸太を積み込むと、ウィンはまた畑の用事を済ませに去っていった。
「ウィンって優しいわね」
手を振ってからなんの気無しに言うと「藁の手伝いしたのはウィンだけじゃないんだけどな?」と、ブツブツ。
「エドも優しいかもね」
「かもねって、優しいだろ」
確かに荷車を引いてくれたり、優しいところはあるけれど……。
「口が悪いからかなり損してる」
決論はそれだった。アリシャはエドが嫌いではないけれど、時々ムッとすることがある。
「裏表がないだけだろ。ウィンなんて何考えてんだかわかんなくね?」
それにはアリシャはうーんと唸ってから「常に思いやりに溢れてる人だと思うけど?」と反論する。
「んなわけあるかー。アリシャは甘いんだよ。簡単に騙されるやつだな」
フンと鼻を鳴らして「だって裏があるなんて思いたくないもの。優しさは優しさのまま受け取りたいわ」と言い返してやった。
荷車が急にゆっくりになったのでアリシャがエドの様子を覗うと、エドは足を止めてアリシャにボソボソと言った。
「信じて裏切られたら辛いだろ? お前、きっと泣くじゃん……泣いてんのは俺が嫌なんだよ」
そう言い終えるとエドはグイグイ荷車を引き出した。砂利の敷かれた道を荷車が揺れながら進んでいく。
アリシャは荷車を後ろから押しながら、エドの前で泣いたことがあったのか思い出そうとしていた。記憶が確かであればなかったはずだ。泣きそうになったことはあっても泣いてない。でも、エドはまるでアリシャが泣いたのを見たような口振りだった。
(気遣ってくれているみたいなのは嬉しいけど……エドは誰かと混同しているんじゃないかしら?)
疑問を抱きながらも、エドの背中は何も聞くなと言っているようで問うことも出来なければ、軽口も叩けなかった。
せっかく牧歌的な春の景色の中にいるのに、楽しい雰囲気が失われたことは残念だった。
宿屋について、互いに自分の仕事に戻ってしまい話せずじまいだったことをアリシャは暫らく気にしていた。
ベッドに藁を入れ、アリシャは料理部屋に戻り料理の続きに取り掛かった。
先ずは炉の傍らでパンケーキを焼いていく。弱火に調整し、なおかつ火からなるべく離れたところでゆっくり火を通す。
その合間にたっぷり取ってきた苺を大鍋に入れててんさい糖を投入する。何もしなくても甘酸っぱい香りがする苺を火にかけると、部屋中が甘い香りに包まれる。クツクツと沸騰すると香りが鍋から放出されていく。
どちらもゆっくりだ。パンケーキはジワジワ膨らむし、ジャムは焦がさないように弱火で煮ていく。まるで牛の歩みのようにのんびりとしか出来ない。
えんどう豆を混ぜ込んだパンケーキは布地のように薄く焼く。爽やかな若草色の山、切れ端をちょっとだけ味見すると、優しい甘みを感じた。
潰さずそのままのえんどう豆を入れたパン生地はいつも通りの厚みで、炉に並べて焼いていく。こちらはある程度火力が必要なので鍋の真横で焼いた。ふっくら焼けたら塩をパラパラと振って出来上がり。
パン二種類が焼き上がってから、やっと苺のジャムも完成した。敢えて形を崩さないようにそっと掻き混ぜたので、鍋の中はトロトロの液体と、くてっとした丸い苺でいっぱいだ。苺ジャムは二つの小さな壺を満たし、残りは今夜用に鍋に残しておく。
お次は足がつきそうなタマネギを大量に刻み、今朝、罠に掛かっていたという野ウサギの肉と炒めていく。生姜をおろし、塩と一緒に入れ、タマネギがトロトロになるまで火にかけた。
十分美味しそうだった。これで終わりにしようかと思ったとき、レゼナが今朝持ってきてくれたセロリが目に留まり、アリシャは肉炒めの鍋を火から下ろした。セロリを細かく切るともうほとんど出来上がっていた鍋に入れ、ひと煮立ち。今度こそ完成。
こちらも春らしい若葉色がプラスされて、彩りも良くなったと満足がいく。
(時々、ムカつくけど……歳も近いし、一番話しやすいのはエドなのかも)
そこで口の悪いエドを友だと認めるのか自問自答をしていると、ウィンが二人に声を掛けてきた。
「どこ行くんだ?」
「ああ、藁を取りにな。ボリスが来たから」
エドの答えにボリスがアリシャを盗み見たのをハッキリ感じて「なに? ウィン」と聞いてみた。
「ああ……いや。何か困った事態になってないかい? 嫌なこととか、とにかく何でもいいから言うんだよ。力になるから」
もしかするとウィンもボリスの事を心配しているのかもしれない。ただ、言い方は兄弟でもここまで違うのかと思わせる程、差があるが。ウィンはいつだって優しく包んでくれるような態度なのだ。
「ありがとう、ウィン。困ったことと言えば、エドがなんでもかんでも味見しちゃって量が減ることかしら」
ハッと息を吐き出して「俺かよ! そんなに食ってないだろー」とエドが怒りだす。
「でも食べてはいるんだな?」
ウィンに指摘されると不貞腐れたような表情になり、なぜか足元にいたココを抱き上げた。
「ココ、こいつら二人して俺のこと攻めるんだぜ。若いと腹が空くんだよなー?」
若いと言っても赤ちゃんのココとエドでは全然違うのに、エドは大真面目な顔でココに話しかけていた。それがどうにもおかしくて笑ってしまった。
三人で荷車に、必要な藁やボリス用の丸太を積み込むと、ウィンはまた畑の用事を済ませに去っていった。
「ウィンって優しいわね」
手を振ってからなんの気無しに言うと「藁の手伝いしたのはウィンだけじゃないんだけどな?」と、ブツブツ。
「エドも優しいかもね」
「かもねって、優しいだろ」
確かに荷車を引いてくれたり、優しいところはあるけれど……。
「口が悪いからかなり損してる」
決論はそれだった。アリシャはエドが嫌いではないけれど、時々ムッとすることがある。
「裏表がないだけだろ。ウィンなんて何考えてんだかわかんなくね?」
それにはアリシャはうーんと唸ってから「常に思いやりに溢れてる人だと思うけど?」と反論する。
「んなわけあるかー。アリシャは甘いんだよ。簡単に騙されるやつだな」
フンと鼻を鳴らして「だって裏があるなんて思いたくないもの。優しさは優しさのまま受け取りたいわ」と言い返してやった。
荷車が急にゆっくりになったのでアリシャがエドの様子を覗うと、エドは足を止めてアリシャにボソボソと言った。
「信じて裏切られたら辛いだろ? お前、きっと泣くじゃん……泣いてんのは俺が嫌なんだよ」
そう言い終えるとエドはグイグイ荷車を引き出した。砂利の敷かれた道を荷車が揺れながら進んでいく。
アリシャは荷車を後ろから押しながら、エドの前で泣いたことがあったのか思い出そうとしていた。記憶が確かであればなかったはずだ。泣きそうになったことはあっても泣いてない。でも、エドはまるでアリシャが泣いたのを見たような口振りだった。
(気遣ってくれているみたいなのは嬉しいけど……エドは誰かと混同しているんじゃないかしら?)
疑問を抱きながらも、エドの背中は何も聞くなと言っているようで問うことも出来なければ、軽口も叩けなかった。
せっかく牧歌的な春の景色の中にいるのに、楽しい雰囲気が失われたことは残念だった。
宿屋について、互いに自分の仕事に戻ってしまい話せずじまいだったことをアリシャは暫らく気にしていた。
ベッドに藁を入れ、アリシャは料理部屋に戻り料理の続きに取り掛かった。
先ずは炉の傍らでパンケーキを焼いていく。弱火に調整し、なおかつ火からなるべく離れたところでゆっくり火を通す。
その合間にたっぷり取ってきた苺を大鍋に入れててんさい糖を投入する。何もしなくても甘酸っぱい香りがする苺を火にかけると、部屋中が甘い香りに包まれる。クツクツと沸騰すると香りが鍋から放出されていく。
どちらもゆっくりだ。パンケーキはジワジワ膨らむし、ジャムは焦がさないように弱火で煮ていく。まるで牛の歩みのようにのんびりとしか出来ない。
えんどう豆を混ぜ込んだパンケーキは布地のように薄く焼く。爽やかな若草色の山、切れ端をちょっとだけ味見すると、優しい甘みを感じた。
潰さずそのままのえんどう豆を入れたパン生地はいつも通りの厚みで、炉に並べて焼いていく。こちらはある程度火力が必要なので鍋の真横で焼いた。ふっくら焼けたら塩をパラパラと振って出来上がり。
パン二種類が焼き上がってから、やっと苺のジャムも完成した。敢えて形を崩さないようにそっと掻き混ぜたので、鍋の中はトロトロの液体と、くてっとした丸い苺でいっぱいだ。苺ジャムは二つの小さな壺を満たし、残りは今夜用に鍋に残しておく。
お次は足がつきそうなタマネギを大量に刻み、今朝、罠に掛かっていたという野ウサギの肉と炒めていく。生姜をおろし、塩と一緒に入れ、タマネギがトロトロになるまで火にかけた。
十分美味しそうだった。これで終わりにしようかと思ったとき、レゼナが今朝持ってきてくれたセロリが目に留まり、アリシャは肉炒めの鍋を火から下ろした。セロリを細かく切るともうほとんど出来上がっていた鍋に入れ、ひと煮立ち。今度こそ完成。
こちらも春らしい若葉色がプラスされて、彩りも良くなったと満足がいく。
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