美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます

今野綾

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カボチャクリームぷにぷにニョッキ

カボチャクリームぷにぷにニョッキ3

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「あ、うん。え? ああ」

「なんだお前、ちゃんと起きてんのか?」

 エドの指が伸びてきてアリシャの目の下をなぞった。ボッと熱を放った頬にアリシャは慌てる。勝手に赤くなる顔を何とかしてほしいと神様に文句をつけたいくらいだ。

「ひでぇくま。ちゃんと寝ろよ」

「……う、うん」

「ボリスが帰ってきて嬉しいからって浮かれてんなよ、ばーか」

 琥珀の瞳に吸い込まれそうだと思っていた。だから、エドの言葉を理解するまでに少し時間がかかり「え? ボリス?」と素っ頓狂な声が出た。

「帰ってきたんだろ? お前んとこに。んじゃあな」

 その含みを持たせた言い方はなんだと文句をつけるよりも、去ろうとするエドのシャツを掴んでいた。

「オイ!」

 引っ張られて不機嫌に振り返るエドに怯みそうになったが、アリシャはそれでも言いたい事があった。

「ねぇ、あの……一人じゃ全然上手くいかないの。力のコントロール。だから……」

「手伝って?」

「うん」

「うんじゃねぇよ。『手伝ってください』だろ」

 ちょっと偉そうにされると反骨精神がムクムクと顔をもたげて、アリシャをひねくれものする。

「なによ、手伝ってあげなさいってレオさんに言われたのはエドじゃない!」

「出来るようにしてやったろ。こーんな小さな石を魔法で受けられ──」

 急にエドが話を止め、口をしっかりと引き結んだ。アリシャの背後を見ているのに気がついてアリシャが振り返ると、そこにはボリスの弟ジョゼフが立っていた。

「やぁ、始めまして。君はここの人?」

 ジョゼフはボリスと違って体も細いが目も細かった。笑っているようだとも言えるし、何か企んでいそうな表情にも感じる。

「ああ、あんたは?」

「俺は……ボリスの弟だ。ジョゼフ、よろしく」

 ジョゼフが手を出そうとしたが、まるでエドが手を出す素振りがないので手を引っ込めていた。

「どうも。んじゃ、俺は行く。メシの時にな」

 不躾な態度だった。確かに普段から他の人に比べるとあまり愛想はないが、エドがこんな態度をとるなんてアリシャには驚きだった。

「あの、ごめんなさいね。いつもはあんな風じゃないの。私が悪いのよ。ちょっと怒らせたから」

 取り繕うのに必死になっている自分に、なんで尻ぬぐいをしなければならないんだとエドに怒りを感じたが咄嗟に出ていた言葉なので仕方がない。

 ジョゼフは去っていくエドの背をジッと見つめたまま「いや、全然」と、口の端を持ち上げて見せた。

「それより魔法とかなんとか──」

 ジョゼフの言葉にアリシャの頭が今度こそフル回転で言い訳を探す。まさか聞かれていたとは思わなかった。村人以外には黙っている約束だったのに。

「ええ……魔法を使えるって凄いのにどうして国が荒れてるのかしらって話をしていたの。ストルカ国からみんな逃げてるって話だから」

 まともでいて当たり障りのないことが言えた様な気がして、ジョゼフの表情を窺うが何を考えているのか伝わってこない。不安に駆られて、回れ右をした。

「私、料理をしてこなければならなかったんだ」

 逃げ出したアリシャをジョゼフが見ていることに気づいていた。背に視線を感じて本当に嫌な気持ちで宿屋に駆け込んでいった。

 宿屋に戻りパラパラと皆が食事をとりに来るのを迎えた。最近は、朝は食べ終えた順に席を立つのが普通になっていた。夕飯の時間だけはゆっくり食事をとるのだが、それも月が明るい晩は早々に席を立ち夜も作業に戻ったりする人もあった。

 夏が終わると冬の準備に取り掛からなければならない。春と秋はやることがてんこ盛りだった。

 前日の残り物なんかで朝食をとると、皆ボリスとの再会を喜び、ボリスの連れに挨拶をして仕事に戻って行った。

 残されたボリス達とレオ、ドクがテーブルについていた。アリシャは日課の掃き掃除をこなしながら、つい聞き耳を立てる。

「では君たちはこの村に住みたいと言うことだな?」

 ドクが質問し、ボリスが頷いた。

「戻れませんし、元々この村が好きですからそうさせてください」

 ドクはレオの顔色をうかがう。レオは直ぐには移住に賛成しなかった。

「レオ様、人がまた増えますね」

 ドクに返事をする前にレオは三人に視線を移しながら言う。

「三人で住むのか? 兄妹と言っても年齢がいっているし、その歳で一緒に住むというのもな」

「とりあえずは三人で住むことにします。春以降にどうするか決めさせてください。一軒直す方が断然早いですし」

 まあな。と、レオはヒゲを弄る。足を組み替えて座るとまた質問をした。

「仕事はどうする。大工仕事ならあるが」

「俺は基本的に大工仕事を請け負います。見たところこの広間には暖炉が必要だ。あとは水車も直す方がいいし、村を囲う塀も」

 ボリスの言い分に頷いた後、視線を向けられたのはアヴリルだった。

「アヴリル、君はどうする」

 女は大工仕事には向かないし、農業も宿屋も、既に埋まっている。

「レオさん、すいません」

 ボリスが二人の間に割って入って口を挟む。

「こう見えてアヴリルはちょっと……体が弱くてですね……暫くは雑用なんかで様子をみさせて貰えないでしょうか」

 アリシャは思わずアヴリルを盗み見たが、アヴリルはキラキラ輝いて見えるほど健康そうで、しかも魅惑的な体つきをした女性だった。豊満な胸元なんて女のアリシャですらつい目がいってしまう。胸元は健康かどうかは関係ないかもしれないが、痩せ細った病人のイメージには少なくとも合致しない。むしろ黙っているジョゼフのほうがよっぽど病を抱えていそうだった。

「そうか。まぁ、村としては問題を起こさず払うものは払ってくれたらそれでいいが」

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