美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます

今野綾

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カボチャクリームぷにぷにニョッキ

カボチャクリームぷにぷにニョッキ6

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「どうせキザなセリフを言ったんでしょう。それよりアリシャ、私に出来ることはない?」

 アヴリルの申し出にカボチャの種取りを頼もうと口を開きかけると、ボリスが「ダメダメ」と、アヴリルを叱るのでそのまま口を閉じた。

「もう、そうやって。何もさせないつもり? 私の立場も考えて頂戴よ。肩身が狭いったらないんだから」

 手を腰に充てて臨戦態勢のアヴリルに対して、ボリスはまるで取り合うつもりがない。

「良いから二階で横になってろよ」

「そんなのゴメンだわ」

 そこでボリスはアリシャに向かい「なんと言おうと働かせないでくれ」と釘を刺すと、これ以上は言い合うつもりはないとばかりに出ていってしまった。

「信じられないくらい過保護なんだから!」

 アヴリルは不満を露わにし、ね? なんてアリシャに同意を求めてきた。アリシャには事情がわからないし、どう返事をしたらいいのか正直困ってしまった。

「あの、でも体調が悪いのなら横に……?」

「悪いように見える?」

 それは確かに見えないのだが、あんなにボリスが心配するのだから見た目で判断するのは難しい。答えないアリシャにアヴリルはため息をついた。

「まぁ、あんなことを言われたら私に手伝いなんてさせられないわよね」

 アヴリルは少し宙を見つめて考えるとアリシャに問う。

「何か皮とか、布とか、ファーは手に入らないかしら? ベッドで縫い物なら文句もないと思うのだけど」

「それならレゼナさんに聞いてみてください。多分畑にいるか家畜小屋にいると思います」

「ありがとう。あの明るい人ね」

 これにはアリシャも心から同意できるのでにっこり微笑んで「はい」と答えた。

「じゃあ行ってくるわ。今夜はカボチャなのね。私、カボチャも好き。たぶんオレンジ色の物に弱いのね。アンズダケもオレンジだもの」

 楽しみにしてると言い、軽い足取りで出ていった。確かにまったく病人には見えないがボリスが嘘をつくとも思えないので、軽く混乱しながら途方も無い量のカボチャの種取りを敢行していった。

 この村で生活を始めることになった日にウィンから貰った石のナイフでカボチャのワタごと種を取り除いていく。それが出来ると手頃なサイズまで小さくし鍋に入れていく。

 最近は何を作るにも大鍋が必要だった。こんなに要らないだろうと思うくらい作っておかないと、足らなくなってしまうのだ。男性が多いのは村としてはいい事なのだが、アリシャ的には大変だ。とはいえ、作り甲斐があるので嫌ではない。

 ホクホクに茹で上がったカボチャを皮と身に分けて潰していく。手間はかかるが二色のニョッキにするつもりだ。

 茹でたカボチャの皮をすり潰し、チーズと小麦粉、塩を混ぜ、ざっくり混ぜる。そこに卵を入れて切るように混ぜるとだんだんまとまってきた。一塊になったところで、ナイフを出して小石大に切り分けていく。鮮やかな深緑色の生地の山が出来上がった。

 それを沸騰した湯の中に親指で押しつぶしては放り込んでいった。

 ポイポイ入れていくと暫くして浮かんでくるので掬って出しておく。それをひたすら繰り返していった。もちろんオレンジの身の方も作って二色のプニプニしたニョッキの山が出来ていく。

(ジャガイモでも作れたら三色だったのにな)

 深緑、オレンジ、そして白のニョッキ。想像するだけで楽しい気持ちになっていく。

(真冬の時間が取れるときにやりたいわね。考えただけでワクワクしちゃう!)

 普段ならここでクリームソースにするところだが、なんて言ったってボリスたちを歓迎する意味を込めて贅沢に作りたかった。

(アヴリルはオレンジ色が好きみたいだし、カボチャクリームにしよう)

 パイ用にも茹でてあったのでそこから取り分け、またすり潰していった。小麦粉と塩コショウ、牛乳にカボチャを混ぜて火にかけていく。トロリとしたカボチャクリームは沸騰するとポコポコと鳴って、辺りに匂いを放出していった。

 ほとんど用意が終わった頃、青ざめた顔をしたリアナがユーリと共に料理部屋にやってきた。ユーリはリアナの事を仕切りにみて心配している様子だった。

「リアナ、どうしたの?」

 アリシャがエプロンで手を拭きながら問うと、リアナの唇が震えてポロポロと大粒の涙を落とし始めた。

「今日は豚を殺して捌くのを手伝ってきたんだ」

 泣いて話せないリアナに代わってユーリが答える。歳はユーリの方が下なのに、ユーリは動揺していないらしい。

 アリシャがリアナを抱きしめると「悲しかったの?」と問い、リアナはアリシャに抱き付いて頷いた。

「でも頑張ったんだよ。あっちでは泣かなかった」

 ユーリは必死にリアナの弁解をするが、アリシャはユーリに優しくほほえみ、わかるわと答えた。

「こういうのはなかなか慣れないけど、私たちの生活には必要なことなのよね。いつも食べている肉にも命があって、それをいただいて私達は生きている」

「でも……悲しい、アリシャ」

 しゃくり上げながら言うリアナの背中を擦ってやる。するとユーリも一緒にリアナの背を擦り始めた。

「そうね。せめて無駄なくいただくことで赦してもらいましょう。感謝しているからどこも捨てられない」

 ユーリはアリシャに顔を向けて「お父さんは尻尾をカリカリに焼くよ。無駄には出来ないからって。でもそれすっごく美味しいんだ」と真面目な顔で言う。

 アリシャは答えに困って、ちょっと笑ってしまった。屠殺処分した豚を憐れんで泣いているリアナに美味しいというのもちょっと複雑だった。

「さぁさぁ、気持ちを入れ替えるのは難しいかもしれないけれど、見て!」

 アリシャは山積みになった二色のニョッキを二人に披露した。茹でたてだから瑞々しくてつやつやしている。

「わぉ、スゲー! これなんだ? 美味そう、ねぇリアナ! 美味そうだってば!」

 ユーリのはしゃぎぶりに触発されて、リアナもアリシャの体から顔を上げた。するとやはり目を輝かせて、服で涙を拭ってニョッキを横からまじまじと観察する。

「ホントだわ。キャンディーみたい!」

「何かは食べてからのお楽しみ。頑張ったのよ。だからみんなが来たら直ぐに食べられるように食器を持っていってくれる?」

 ユーリは飛び付くように重ねられた器の元へ。リアナも負けじとスプーンの入れられているカゴへと飛びついた。

「パンもあるからね。落とさないように運んでください、お二人さん」

 だってさーとユーリが言えば、落とすのはユーリじゃないとリアナが返す。今さっき泣いたばかりのリアナの目は潤んでいるが、気持ちはすっかり切り替わったようだ。

(始めは辛いもんね。今日はたまたまお肉を使わなかったけど、正解だったなぁ)

 アリシャはプクプクと音を鳴らしているカボチャのクリームを掻き混ぜながら、リアナの笑顔に安堵していた。

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