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サーモンやソーセージの手巻きクレープ
サーモンやソーセージの手巻きクレープ6
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心の中でエドが怒っていませんようにと呟くと、皆と一緒に神への祈りを捧げてから料理の説明をした。
「今日はこの生地に好きな具材を乗せて巻いて食べてください」
アリシャは山と積まれた薄いパン生地を一枚取ると、そこにガーリックと塩で炒めたマスを乗せてくるくると包んでみせた。
「楽しいわね」
レゼナが言うと、リアナがパン生地をとり、ジャムの器に手を伸ばした。薄黄色だから洋ナシだ。
「甘いのがいい」
喜ぶリアナにアヴリルも合わせて「私もベリーのジャムから食べてみるわ」と声を弾ませた。
男たちも思い思いの物を取り、生地で包んで舌鼓をうっていく。
主であるザライムにお作りいたしますとイザクが言うのを、アリシャの耳に届いた。顔をそちらの方へと向けた。
「すいません。私がやりましょうか?」
自分で巻かない人が居るなんて想定してなかったので、イザクに悪いと思い申し出た。
「いや、自分でやってみよう。そこの生地を取ってくれ」
ザライムが試してくれると言うので安堵して生地を一枚取り、掌に乗せて差し出した。そうしないとペラペラの生地は掴んでいるところで切れてしまう。
ザライムも受け取る為に生地の下に手を入れた。大きな手がアリシャの手に触れたときバチッと何かが起こった。乾燥した冬の日に時々なる火花が炸裂した感覚。いや、熱いものを飲んだ時に体の中を液体が流れていくのにもよく似ていた。思わず手を引っ込めるとザライムも手を引いて、二人の間に生地が落ちていった。
「これは……」
動悸がし、アリシャは胸を押さえ乱れる呼吸を整えようとした。
「どうされましたか?」
イザクが二人の様子に声を掛けてきたが、説明しようのない現象だったからかザライムは答えずに生地を拾った。
「新しい物をお出しましょう」
落ちたものだったからイザクが言いながら生地に手を伸ばしたが「問題ない」と、それを断る。マスをナイフで刺し、生地に乗せて巻くと、ザライムはそれを頬張った。
先程の驚きを残したまま、アリシャは食事を始めたザライムに緊張していた。アリシャは領主といった人々がどのような物を口にしているのか知らなかった。ザライムは商人だと紹介されたが、とても普通の商人だとは思えなかった。だから、アリシャの作った食事が口に合うかどうか不安だったのだ。
息を詰めてザライムを見ていたアリシャに、ザライムは初めて目を細めてみせる。
「じっと見るのが癖なのか」
「あ、すいません。お口に合いましたか? それが気になりまして」
ザライムは腕を伸ばし二枚目の生地を取り、次にソーセージを巻いて口に運ぶ。
「いくらでもいけそうだ。アリシャも食べるがいい。作ってやる」
「そんな。いえいえ、自分で──それより沢山お食べください。イザクさんもどうぞ」
イザクはザライムに驚いた顔をしていたが、話を振ってきたアリシャに向けて「そうだな」と言葉少なに食事を開始する。
「アリシャはこの辺りで育ったのか」
自分の分を作り出したアリシャにザライムが問う。アリシャは一時手を止めたが、直ぐに生地にジャムを乗せてくるくると巻いていく。
「いえ、住んでいた村が襲われてここまで逃げてまいりました。逃げてというより気を失って馬に運んできてもらっただけですけど」
どの辺りに居たのかと更に詳しく尋ねられたので、アリシャはストルカ国の外れだと答えた。
「私以外も皆、ストルカ国の方から来ております。ザライムさんたちはどちらからいらしたのですか?」
「我らはスルシュア王国側からだ。そうか、皆でストルカ国から来たわけではなくバラバラに行き着いたということか」
頷いて、アリシャは巻いた物を口に入れて咀嚼しだす。生地に塩を効かせたので、ジャムとの相性が良い。我ながら上手くできたとつい頬が緩んだ。それを見ていたザライムが人差し指の甲でアリシャの頬をそっと撫でたので、驚いて動きを止めた。
「嬉しそうに食すのだな。悪かった。思わず触れてしまった」
そんなに顔に出ていたのかと恥ずかしくなって俯いてそのまま飲み込んだ。
「あの、あんまり見ないでください……」
アリシャが言うと「アリシャも見ていたではないか」と、可笑しそうだった。
食事を終えた面々がチラホラ帰りだすと、イザクが湯に浸かりたいときはどうしたら良いのかと聞いてきた。
帰って行った人たちの食器を重ねていたアリシャが村の人はと前置きをしてから説明した。
「使っていない樽に湯を入れ使ったり、あるいは大きいたらいで体を洗います」
「そうか、ならば明日の日中そうしたいのだが、場所はどこがいいだろうか」
宿屋に居るレオ達は、広間の一角にシーツを張って入るがどうしたものかと考えていた。そこに話を聞いていたボリスが「水車小屋が良いでしょう」と助け舟を出す。
「水車小屋は水車はまだ修理出来ていませんが、小屋の中で湯浴みくらいは出来ますから」
使った湯も捨てやすいとイザクが言い、ボリスが同意を込めて首を縦に振る。
「俺が樽を運ぶから」
今度はアリシャに向けてボリスは言い、アリシャは「助かるわ」と答えた。
会話を終えたアリシャがふと暖炉の前に視線を向けるとジャンヌが敵意の籠もった目でアリシャを睨んでいた。
(こんなに人に憎まれるって初めてだわ)
アリシャのことを嫌いな人がこれまで居なかったとは言い切れないが、ここまであからさまに嫌われたことはなかった。悪い事はしていないと思っていても落ち込まずには居られなかった。
「今日はこの生地に好きな具材を乗せて巻いて食べてください」
アリシャは山と積まれた薄いパン生地を一枚取ると、そこにガーリックと塩で炒めたマスを乗せてくるくると包んでみせた。
「楽しいわね」
レゼナが言うと、リアナがパン生地をとり、ジャムの器に手を伸ばした。薄黄色だから洋ナシだ。
「甘いのがいい」
喜ぶリアナにアヴリルも合わせて「私もベリーのジャムから食べてみるわ」と声を弾ませた。
男たちも思い思いの物を取り、生地で包んで舌鼓をうっていく。
主であるザライムにお作りいたしますとイザクが言うのを、アリシャの耳に届いた。顔をそちらの方へと向けた。
「すいません。私がやりましょうか?」
自分で巻かない人が居るなんて想定してなかったので、イザクに悪いと思い申し出た。
「いや、自分でやってみよう。そこの生地を取ってくれ」
ザライムが試してくれると言うので安堵して生地を一枚取り、掌に乗せて差し出した。そうしないとペラペラの生地は掴んでいるところで切れてしまう。
ザライムも受け取る為に生地の下に手を入れた。大きな手がアリシャの手に触れたときバチッと何かが起こった。乾燥した冬の日に時々なる火花が炸裂した感覚。いや、熱いものを飲んだ時に体の中を液体が流れていくのにもよく似ていた。思わず手を引っ込めるとザライムも手を引いて、二人の間に生地が落ちていった。
「これは……」
動悸がし、アリシャは胸を押さえ乱れる呼吸を整えようとした。
「どうされましたか?」
イザクが二人の様子に声を掛けてきたが、説明しようのない現象だったからかザライムは答えずに生地を拾った。
「新しい物をお出しましょう」
落ちたものだったからイザクが言いながら生地に手を伸ばしたが「問題ない」と、それを断る。マスをナイフで刺し、生地に乗せて巻くと、ザライムはそれを頬張った。
先程の驚きを残したまま、アリシャは食事を始めたザライムに緊張していた。アリシャは領主といった人々がどのような物を口にしているのか知らなかった。ザライムは商人だと紹介されたが、とても普通の商人だとは思えなかった。だから、アリシャの作った食事が口に合うかどうか不安だったのだ。
息を詰めてザライムを見ていたアリシャに、ザライムは初めて目を細めてみせる。
「じっと見るのが癖なのか」
「あ、すいません。お口に合いましたか? それが気になりまして」
ザライムは腕を伸ばし二枚目の生地を取り、次にソーセージを巻いて口に運ぶ。
「いくらでもいけそうだ。アリシャも食べるがいい。作ってやる」
「そんな。いえいえ、自分で──それより沢山お食べください。イザクさんもどうぞ」
イザクはザライムに驚いた顔をしていたが、話を振ってきたアリシャに向けて「そうだな」と言葉少なに食事を開始する。
「アリシャはこの辺りで育ったのか」
自分の分を作り出したアリシャにザライムが問う。アリシャは一時手を止めたが、直ぐに生地にジャムを乗せてくるくると巻いていく。
「いえ、住んでいた村が襲われてここまで逃げてまいりました。逃げてというより気を失って馬に運んできてもらっただけですけど」
どの辺りに居たのかと更に詳しく尋ねられたので、アリシャはストルカ国の外れだと答えた。
「私以外も皆、ストルカ国の方から来ております。ザライムさんたちはどちらからいらしたのですか?」
「我らはスルシュア王国側からだ。そうか、皆でストルカ国から来たわけではなくバラバラに行き着いたということか」
頷いて、アリシャは巻いた物を口に入れて咀嚼しだす。生地に塩を効かせたので、ジャムとの相性が良い。我ながら上手くできたとつい頬が緩んだ。それを見ていたザライムが人差し指の甲でアリシャの頬をそっと撫でたので、驚いて動きを止めた。
「嬉しそうに食すのだな。悪かった。思わず触れてしまった」
そんなに顔に出ていたのかと恥ずかしくなって俯いてそのまま飲み込んだ。
「あの、あんまり見ないでください……」
アリシャが言うと「アリシャも見ていたではないか」と、可笑しそうだった。
食事を終えた面々がチラホラ帰りだすと、イザクが湯に浸かりたいときはどうしたら良いのかと聞いてきた。
帰って行った人たちの食器を重ねていたアリシャが村の人はと前置きをしてから説明した。
「使っていない樽に湯を入れ使ったり、あるいは大きいたらいで体を洗います」
「そうか、ならば明日の日中そうしたいのだが、場所はどこがいいだろうか」
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「水車小屋は水車はまだ修理出来ていませんが、小屋の中で湯浴みくらいは出来ますから」
使った湯も捨てやすいとイザクが言い、ボリスが同意を込めて首を縦に振る。
「俺が樽を運ぶから」
今度はアリシャに向けてボリスは言い、アリシャは「助かるわ」と答えた。
会話を終えたアリシャがふと暖炉の前に視線を向けるとジャンヌが敵意の籠もった目でアリシャを睨んでいた。
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