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第二章 元男子の少女たちは複雑
10 黒ギャル少女は美しく強い
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抵抗するが、女でも三人いるとかなりの力になる。
「んだよお。あたしらに魅力ねえっての?」
「もう、つれねえな。拉致って輪姦しちまえばよくね?」
女たちは本気のようだった。司は怖くなる。このまま好きでもない下品な女たちとセックスをさせられてしまうのか。
が、そのときだった。
「その手を放すんだ」
静かだが、有無を言わさぬ声が聞こえる。振り返れば、連が仁王立ちになっていた。
「んだと……? あ、てめえ酒々井!」
「あやつけようってのかあ……!?」
「ちょうどいい! この間やられた分返してやんよ!」
女三人は殺気丸出しで連に向かっていく。
が……。
「なめんなアバズレえっ!」
一対三のケンカは、あっという間に決していた。
「ぐうっ……!」
「ああっ!」
「痛えええっ!」
連と三人の戦力差は、素人目にも明らかだった。ガラの悪い女たちは、あっさりねじ伏せられてしまう。
「ちくしょうっ! 覚えてやがれー!」
わかりやすい捨て台詞を残して、女たちは立ち去る。
「ありがとう酒々井さん。助かったよ……」
「助かったよじゃねえだろ。男のくせに情けねえ……」
連の呆れた顔に、司はぐうの音も出なかった。その通りだ。
そう思ったとき、連の右ほおがわずかに切れていることに気づく。あの三人は弱かったが、全く拳を当てられないほどでもなかったらしい。
「大変だ。怪我してるじゃん!」
「ああ……。大したことねえよ……」
「いやいや! 女の子の顔が傷ついてるんだから!」
司は連の手を引いて、一番近い薬局を目指す。スマホで見た地図に載っていた。まだ空いているはずだ。もう雨を気にしている場合ではない。
「たく……。大げさだっての……」
「ま、いいから。跡残ったら悲しいもの。きれいな顔なんだし」
薬局で消毒液と絆創膏を買い、トイレを借りて傷をきれいにし、応急処置をする。
「まあ、一応礼は言っとくよ。ありがとな」
「いや……礼を言うのはこっちだよ。そういえば、あの三人知り合いなの?」
「まあな。知り合いでもお友達じゃねえのは、見てわかったと思うけどよ。お前も注意しなよ。この町の女も、物わかりのいいやつばかりじゃねえんだ。男に飢えた女って、ときどきすげえやばくなるみてえだしな。ま、オレにはよくわかんねえが」
連の言葉に、司は痛感する。一見牧歌的に見える町だが、裏街にはうかつに入るべきでない場所もある。男に飢えた女がやばいのも、先ほど学習した。
まあ、連は男に興味がないようなので安心なのか残念なのか。
「そういえばデートしてたか……。悪いな……楽しかったのがぶち壊しだったかな?」
「ま、別にいいさ。帰るところだったし、お前みたいなのでもあんなやつらに絡まれてたらスルーできねえしな」
司は思う。このたくましい美少女は漢だ。男ではなく、漢だ。心が。
「かわいい娘だったよね。さすが酒々井さん。あの娘も、元は男なの?」
「ちげーよ。オレは女体化はだめ。生まれつきの女がいいの。元男って慎みがねえっつーの? 童貞っぽいっつーの? オレが女に求めるものがねーのよ」
「そっか……」
連の言葉には、同意できる部分もあった。
たしかに、女体化した元男は感性が男の部分が多少の差はあれど存在する。貞操観念のゆるさや恥じらいのなさは、好みが分かれるかも知れない。
自分はクラスメイトの元男の少女たちのそういうところが好みだが、連はだめ。そういうことなのだろう。
薬局を後にするときには雨はすっかり止んでいた。時間も遅いので、一緒に電車で帰ることにする。連とは意外にもなかなか話が合った。
映画やマンガの話題で、いつの間にか意気投合していた。
男友達だと思えば、悪くない関係を築けそうだった。
「んだよお。あたしらに魅力ねえっての?」
「もう、つれねえな。拉致って輪姦しちまえばよくね?」
女たちは本気のようだった。司は怖くなる。このまま好きでもない下品な女たちとセックスをさせられてしまうのか。
が、そのときだった。
「その手を放すんだ」
静かだが、有無を言わさぬ声が聞こえる。振り返れば、連が仁王立ちになっていた。
「んだと……? あ、てめえ酒々井!」
「あやつけようってのかあ……!?」
「ちょうどいい! この間やられた分返してやんよ!」
女三人は殺気丸出しで連に向かっていく。
が……。
「なめんなアバズレえっ!」
一対三のケンカは、あっという間に決していた。
「ぐうっ……!」
「ああっ!」
「痛えええっ!」
連と三人の戦力差は、素人目にも明らかだった。ガラの悪い女たちは、あっさりねじ伏せられてしまう。
「ちくしょうっ! 覚えてやがれー!」
わかりやすい捨て台詞を残して、女たちは立ち去る。
「ありがとう酒々井さん。助かったよ……」
「助かったよじゃねえだろ。男のくせに情けねえ……」
連の呆れた顔に、司はぐうの音も出なかった。その通りだ。
そう思ったとき、連の右ほおがわずかに切れていることに気づく。あの三人は弱かったが、全く拳を当てられないほどでもなかったらしい。
「大変だ。怪我してるじゃん!」
「ああ……。大したことねえよ……」
「いやいや! 女の子の顔が傷ついてるんだから!」
司は連の手を引いて、一番近い薬局を目指す。スマホで見た地図に載っていた。まだ空いているはずだ。もう雨を気にしている場合ではない。
「たく……。大げさだっての……」
「ま、いいから。跡残ったら悲しいもの。きれいな顔なんだし」
薬局で消毒液と絆創膏を買い、トイレを借りて傷をきれいにし、応急処置をする。
「まあ、一応礼は言っとくよ。ありがとな」
「いや……礼を言うのはこっちだよ。そういえば、あの三人知り合いなの?」
「まあな。知り合いでもお友達じゃねえのは、見てわかったと思うけどよ。お前も注意しなよ。この町の女も、物わかりのいいやつばかりじゃねえんだ。男に飢えた女って、ときどきすげえやばくなるみてえだしな。ま、オレにはよくわかんねえが」
連の言葉に、司は痛感する。一見牧歌的に見える町だが、裏街にはうかつに入るべきでない場所もある。男に飢えた女がやばいのも、先ほど学習した。
まあ、連は男に興味がないようなので安心なのか残念なのか。
「そういえばデートしてたか……。悪いな……楽しかったのがぶち壊しだったかな?」
「ま、別にいいさ。帰るところだったし、お前みたいなのでもあんなやつらに絡まれてたらスルーできねえしな」
司は思う。このたくましい美少女は漢だ。男ではなく、漢だ。心が。
「かわいい娘だったよね。さすが酒々井さん。あの娘も、元は男なの?」
「ちげーよ。オレは女体化はだめ。生まれつきの女がいいの。元男って慎みがねえっつーの? 童貞っぽいっつーの? オレが女に求めるものがねーのよ」
「そっか……」
連の言葉には、同意できる部分もあった。
たしかに、女体化した元男は感性が男の部分が多少の差はあれど存在する。貞操観念のゆるさや恥じらいのなさは、好みが分かれるかも知れない。
自分はクラスメイトの元男の少女たちのそういうところが好みだが、連はだめ。そういうことなのだろう。
薬局を後にするときには雨はすっかり止んでいた。時間も遅いので、一緒に電車で帰ることにする。連とは意外にもなかなか話が合った。
映画やマンガの話題で、いつの間にか意気投合していた。
男友達だと思えば、悪くない関係を築けそうだった。
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