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第三章 芽生える思い

01 どう思ってる?

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「あああ……」
 一宮岬は、浅いまどろみの中で悶々としていた。
 生理が近いときの感覚だ。全身が敏感になり、下腹部がジンと熱くなる。が、いつもとは少し違っていた。
「司……ま……待って……」
 気がつけば、自分はいつの間にか裸になっていた。同じく生まれたままの姿のクラスメイト、市原司に優しく組み敷かれる。
「あっあっ……そこは……! おしっこ……おしっこ出ちゃうっ……!」
 体中が性器のように敏感になっている。司に触れられたところが、全部心地いい。
「だめっ……俺……俺もう……! だめえっ……!」
 全身がバアーーーッとしびれたようになり、下腹部の奥が硬直したかのような感覚に襲われる。
「ああ……?」
 そこでまぶたが開く。
 目に入ったのは二段ベッドの天井。当然のように岬はベッドの中にひとりだ。
(まさか……?)
 慌てて股間に手をやる。
「良かった……お漏らしはない……。でも……」
 寝間着もシーツも、失禁してしまったかのようにぐっしょりだった。布団の中に、淫蕩なメスのにおいが充満している。
 身体の中に、まだ先ほどのしびれの余韻が残っている。
(もしかして……俺……眠ったままイったの……?)
 自分に起きたことが信じられない。岬はスマホをベッドサイドから取り、「女 夢精」で検索する。意外にも、いくつもヒットした。
「女の子だって夢精する」「すごく気持ちいい、夢イキとは?」「眠ったまま夢の中でイくコツ」
 そんな情報が目に入る。
(女も夢精ってあるんだ……。ていうか……あれが女のイくってことか……)
 岬には、女体化して以来初めての絶頂だった。今まで生理が近いときにオナニーをすることはあっても、オーガズムにまでは達せなかった。
 それがどういうわけか、眠ったまま絶頂を迎えてしまったのだ。
(俺……司に抱かれる夢を見てた……)
 はっきりと覚えている。顔が赤くなってしまう。生理が近いからといってなんという夢を見てしまったのか。
 直感する。自分が夢イキをしてしまったのは、クラスメイトの少年のことを思っていたからだと。
「トイレ……行かなきゃ……」
 同居人の女子生徒を起こさないように、寝間着とシーツを交換する。トイレに移動して、ビデでトロトロに溢れた秘部を洗い流す。
(俺……司のことどう思ってるのかな……)
 洗面所の鏡とにらめっこをしながら、ボーイッシュな少女はそんなことを思う。
 司のことは大切な人だと思っている。だがそれは、どういう意味の大切だろうか?
 友達? それとも男として意識している?
 自分の中で、なにかが今までとは決定的に変わっている。だが、その変化がなんなのか。岬は自身がわからず、ベッドに戻ってからも悶々とし続けた。

「岬ちゃん、ちょっと聞いてる?」
「え……あ……ごめん……。なんだっけ……」
 休み時間、教室でクラスメイトの少女と雑談をしていた岬は、いつのまにか白昼夢の中にいた。
 友人となにを話していたのか、まるで覚えていない。
「どうしたの? ぼーっとしちゃって……。具合でも悪いの?」
「いや……なんでもないよ……。身体も心もすこぶる調子いいって」
 曖昧に応答する。
 男のことを考えていたとは、恥ずかしくて言えない。
(俺……どうしちゃったんだろう……。この感じなんなのか……確かめなきゃ……)
 ボーイッシュな少女は決意していた。
 自分が最近少し変なのは、司が原因だと自覚していた。だが、彼と今の関係が変化してしまうことを恐れて、踏み込めずにいた。
 だが、確かめなければならなかった。確かめたかった。胸の奥に芽生えた自分の思いがなんなのか。
…………………………………………………………………………………………………………
 岬は司を学校の屋上に呼び出していた。彼の部屋にお邪魔することも考えたが、狭い空間にふたりきりだと緊張して踏ん切れない気がしたのだ。
「風、気持ちいいな」
 司は呼び出された用件を急かすことはしない。
 自分が話す気になるまで待ってくれる。
(ど……どうしよう? 呼び出したはいいけど……どうするか考えてなかったよ……)
 岬は自分のうかつさに気づく。司に対する気持ちを確かめる決意はした。だが、具体的にどうするかまで考えていなかったのだ。
(ええい……ままよ!)
 折角なので思い切った行動に出ることにする。
 ちょうど生理が近い。女のこの日の前の自分は、良く言っていつもより行動力がある。悪く言って頭が悪い。
 今は、難しく考えるより行動すべき。
「司……俺をよく見ていてくれないか……」
「う……うん……」
 こちらの意図が読めない司が、取りあえずうなずく。
(ためらうな、俺……)
 大きく息を吐いた岬は、セーターを脱ぎ捨てる。そのままの勢いでネクタイを外し、思い切って制服のズボンを脱ぎ捨ててしまう。
「み……岬……?」
「目をそらさないで……良く見てて……!」
 ほおを染める司に念を押す。
 ソックスとYシャツも脱いでしまい、下着姿になる。
「どうかな……司……?」
 恥ずかしさで耳まで真っ赤になりながら、岬は問う。
「きれいだよ……脚長くて……胸でかい……」
 司もまた真っ赤になっているが、自分の下着姿に見入っている。
(こんなことなら……勝負下着にするべきだったか……)
 いつものシンプルなコットンの下着が、今更物足りなく感じる。ともあれ、今それを考えても仕方ない。
 岬はブラのホックを外してストラップを腕から抜く。最後に残ったパンツも、ためらいがちに片足ずつ抜いていく。
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