【完結】初恋の君を探していたが、本人と気づかずにあれやこれやとドツボにハマる話

たまとら

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森での出会い

6 遭遇 ルツ

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つま先に、ドンという鈍い当たりと、かっと熱が広がる。

穴は留守では無く住民がいて、噛み付かれたようだ。

転びながら足を振り上げると、ぶらんとナラガがついて来た。
その首を斬り飛ばしながら、ごろごろと転がる。
獲物の振動で、いろんなものがやってくるからだ。

ナラガは細かい牙を口腔にびっしり生やした、ぬるりとした生き物だ。
幸い毒は無い。

別れた頭がどすんと地面に落ちた途端、草がむぐりと蠢いて引き摺り込まれていった。

転がったまま手を押し出して近場の枝に飛びつく。

ルツの体があった所にぐしゃりと穴が開いて、土も草もじゅぶじゅぶと引き込まれていく。 
ナラガは巣穴を縦横無尽に作る。
そして群れで獲物を待つ。
どこかの穴に獲物がかかったら、巣穴のトンネルは人喰い穴に変わるのだ。



ぶらんぶらんと太い枝を抱き抱えて、ルツは溜め息を吐いた。
じいサマに拳骨を落とされそうな事だった。
全く気を抜いていた。

靴のおかげで喰い千切られていないけど。
じくじくと血が滴って他の魔獣を呼んでいる。

枝に片足をかけてぐるりと上ると、その上に座った。

血を止めなくては。

靴を脱いで。
そして血を。
腰のポーチには万が一の薬が入っている。
それに手を這わせて確認している時。

そう、その時。

彼が現れたのだ。



「大丈夫か⁉︎」

血の匂いがしたのだろう。
彼は声を掛けてきた。

あ、ナラガの巣穴が…と、顔を向けたルツは、彼が踏み出すたびに足元が揺れるのに目を見張った。
彼の足元がドンと音を出す。

ドン。

ドン。

彼は音と共にやって来る。
一緒に白い飛沫が弾け飛び、草に当たって凍りついた。

氷⁉︎

見れば足跡が点々と白い。

なんと彼はナラガの巣穴を警戒して、地面を凍らせながら歩いて来ていた。


……なんという力技…

あんぐりと口を開けたルツを見て。
彼の紫紺の目が見開かれる。

そこには艶やかな黒髪を束ねて、滅多に見られない美男子がいた。


「だ、大丈夫ですか?」

彼は上擦って喉に絡んだ声を出す。
でもその声は低くて心地よくて。


彼は真っ直ぐにルツを見上げていた。

よく見るローブと冒険者の服なのに、光り輝いた騎士に見える。
あれ?この顔、どこかで…

彼の足元からぴきぴきと氷が広がっていく。
ああ、あれなら巣穴は全滅しそうだ。

そう思ったルツが降りようと動いた時。
彼は両腕を広げてその補助をしようとしてくれた。
その目が真っ直ぐ見ているのにちょっと怯んで、おずおずとルツはその肩に手を置いた。
手の下にはしなやかな筋肉がしっかりと詰まり。
彼は見かけだけじゃ無く、戦士としても一流だろうと思えた。


「ありがとうございます。」

切り株に腰を下ろして靴を脱ぐ。
血を拭って浄化して、薬を塗り込んだ。


……視線が痛い…
……視線が熱い…


真っ直ぐ過ぎる視線の中で。
居た堪れなさを感じるルツは、ひたすら逃げる隙をうかがっていた。
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