【完結】初恋の君を探していたが、本人と気づかずにあれやこれやとドツボにハマる話

たまとら

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ルツ、頑張る

14 おいの生活

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「おい。」

いやぁ、二週間も居ると、おいの種類が読めるようになる。
自分でびっくりだわ‼︎


ルツはラッシュ様の書棚から読みかけの本を持って来て手渡した。
ついでにお茶を入れる。

夕食の後だから紅茶では無く、ハーブティーを入れて脇に置いた。
これ、初めは胡散臭そうに鼻の頭に皺を寄せていたけど。
もう、躊躇いなく口にする。
さらに、チラリとこちらに紫紺の視線を向ける。

……しょうがないなぁ。
そりゃ、匂いがこもってたからねぇ。

内心呟きながら、小皿にレースペーパーを置いて瓶からクッキーを3枚乗せた。
無言で皿を置いてから、瓶を自室に仕舞いに行く。


今、与えられた自室は森の香りに包まれている。

初めは様子見でちょっとだった。
ガーランドのように薬草をぶら下げているうちに、どんどん増えて来た。
生で使う薬草じゃ無ければ、だいたいぶら下がっている。
そっとラッシュ様を伺ってたけど。
嫌そうじゃ無かったので増えてきた。


実はD寮にはもっと押し込んでるし。
採取した実でジャムやコンポートも作って並べている。
さしずめD寮は倉庫になっている。

この部屋にオーブンがあったので、採取に出た時の非常食としてハーブを混ぜたクッキーを焼いた。
そしたら結構匂いがこもってしまった。
たまにこうやって献上させられている。


手持ち無沙汰で部屋の隅に立つルツに、

「おい。」

と、顎でソファを示す。
ラッシュ様の気遣いはわかりづらい。
ツンデレかっ⁉︎

おずおずと一人掛けのソファに座る。

ハーブティーから部屋の中に香りが広がる。
側仕え用の部屋からも香りが流れてくる。
心を落ち着けて、浄化してくれる匂い。
村の家でもあちこちにコレをぶら下げていた。
じいサマはどうしているだろう。
畑の外れに、今年も木苺は実ってるだろうか。

目を伏せてぼんやりするルツに、ラッシュ様はボソリと「…おい。」と言う。

「銀髪で緑の目の森人を見なかったか?」


~~正直、この質問もう5回目です。
忘れてるわけじゃないですよね?

そして答えは
「すいません。見ておりません。」
これ一択だ。

それを聞くとラッシュ様は
「そうか…」
と、肩を落とす。


そりゃ、名前さえ教えなかったのは悪かった。
サロメでもロミオでも、適当に名乗っとけばもっと別方向に突っ走ってくれてたかも知れない。

でも、こんな暑苦しそうな男が。
人のいない森の中で。
初対面でぐいぐい来たら。
そりゃ必死で逃げるよね。


ラッシュ様は興が乗ると第三地区の出会いの話をする。(耳蛸だ)
最近は"月の君"と言う、小っ恥ずかしい呼び方でめんめんと語る。
その名を防ぐ為にも、本当に。
本当に、なんか名乗れば良かったと思う。

ーーやーめーてー‼︎
と、叫び出しそうに。
ラッシュ様の頭の中の彼はキラキラしている。
『これが恋ってやつだよ』
と、ふっと吐くラッシュ様に。
時々殺意さえ覚える。


この、見てくれに騙される脳筋野郎がっ!

お前の探してるのは僕だよっ⁉︎
このさえない"おい"が、当人なんだよっ!

と。

イラついた時。
脳内でそう毒づいて。

ひいぃぃっ!
と叫ぶラッシュ時を想像して溜飲を下げた。
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