【完結】初恋の君を探していたが、本人と気づかずにあれやこれやとドツボにハマる話

たまとら

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ぱんつ事変

21 ラッシュの反乱 ーアメデオ

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宰相の息子という事もあって、ラッシュとお茶を頂くことが多かった。


あの頃。
ラッシュはキチンとしておとなしく、決められたレールをひたすら歩いている様な子供だった。

お茶の時。
ラッシュはびくびくと教師の顔色を伺う。
カップの持ち方。口に付け方。
その度におどおどと上目遣いをする。

何処が悪いのかわからないが。
時々その教師は鞭で叩き。
ラッシュはぐっと背筋を伸ばす。
そして教師は言う

「アメデオ様を見習って下さい。」


やめてくれ。
私におもねっているのか⁉︎
その薄気味悪い笑いを辞めろ。
ラッシュはそいつの顔を見ていない。
そいつは決してラッシュの為にしているんじゃ無い。
嘲る目で笑ってるぞ。

ついでと言うなら、3番目の侍従も薄気味悪い目で見ている。
ラッシュ。もう少し周りをみろよ。


~~その頃。
ラッシュはまるで車を延々と回すハムスターの様だった。

そんな性格じゃないだろうに。
朝から晩まで勉強して。
沢山の教師にあれこれ指図されていた。

私から見ると、なんでそこまで!
と思うのに、絶えず課題が来ている。

正直、ラッシュといると息苦しい。
全然楽しく無い。

じっと見てると周りの奴らにいいようにされている。
でも、自分で気が付かなきゃ意味が無い。




ある日、ラッシュの剣の教師が騎士団の遠征で不在になる期間があった。
私は父の執務机で代わりの教師の書類を見た。
"フォンデオ師"
カイゼル髭の、四角四面の老人だ。
私はそこに"ー"を書き足してやった。

"フォンデーオ"
確か3年程前、上級貴族の長男なのに、平民の女性と恋に堕ちて。
身分も騎士団も捨てて、大いに話題になった男だ
きちんと書類になったソレに、疑問を抱く者はいず。
その冒険者となった男は、ラッシュの教師として登城した。


私は面白い事が大好きだ。

密かにラッシュを見ていると。
すんごい化学反応が起こっていく。
それは泥人形だった物に命が吹き込まれて。
どんどんひとになってくようで。
凄く。
凄く、面白かった。



ある時、お茶をしてる時。
もうおどおどしないラッシュがいた。
そしてそれに苛立つ作法の教師も。

私はそろそろだと踏んでたから。
子供の甘えを装って、父も王も王妃も。
こっそりと"かくれんぼ"してて貰った。

ワクワクする中、その爆破が起こったのだ!

いつものように鞭を振り上げた教師の手を、ラッシュがぐい‼︎と掴んだ。

「謂れのない理不尽な暴力はどうかと思う」

「謂れの無いですって‼︎」

反抗に驚いて真っ赤になる教師に、ラッシュは作法書をずらずらと述べた。

「35ページ。風が強い時のお茶会はどうすべきかと述べてある。俺はカップの角度一度たりとも違えていないはずだ。
違うというなら、理由を述べよ。」

おい、あの辞典並に分厚い退屈な『作法書』を覚えているのか⁉︎
凄いな、ラッシュ。

教師はぐっと詰まったが、

「いえ、立ち上がれない時の礼は…」

「うん。72ページの、"椅子に座った状態での最上級の礼"だな。だがアレは女子にと但し書きが付いてたはずだ。そしてその場の下の者が行うものの筈だ。今まで鞭を好きに奮ってたから、わかっていなかったのかも知れないが。私は男子で。
そして王子という立場のものなのだよ。」

教師が何か言うごとに、ラッシュは答える。
そしてラッシュからの質問に、やがて教師は口をぱくぱくさせるだけで声が出なくなった。

「貴方が勧めてくれた"教師の心得書"には、理由のない鞭うちは、自分を上位に見せたがる恥ずべき行為である。とあったぞ」

教師はもごもごと声にならない。
気の向くままに鞭を使っていた姿は何処にも無い

「ラッシュ様‼︎先生に向かってなんて事を!」

状況を見てとって、いきなり走り寄る第三侍従に
私は自分とラッシュのカップをついと持ち上げて立ち上がった。

足を滑らせたと見せかけた身体が、テーブルの上に倒れ込む。
ガシャァァーン
と破壊音がする中で、
彼は私の両手を見て目を見開いた。

そうだろう。
そうだろう。


私は驚いて駆け寄る大人達に。
両方のカップを渡して味見させた。

父が、王が、王妃が固まる。


そう、ラッシュは嫌がらせの為に。
雑で温い茶をわざわざ入れられていた。


~~こうやって、ラッシュの反乱は成功した。
私は面白い人材を手に入れたのだ。
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