【完結】初恋の君を探していたが、本人と気づかずにあれやこれやとドツボにハマる話

たまとら

文字の大きさ
25 / 48
過疎地は牧歌的では無い

25 そして夏休み

しおりを挟む
夏休みは好きなことだけしたかった。
薬学の研究室にも入り浸りたかった。
ついでにギルドで採取を依頼してもらって、ばっちり稼ぎたかった。
夏は植物が旺盛に伸びる。
刈り取っても刈り取っても終わりが無い。

だから、里帰りって言われても"精霊の道"を使えば土日で行き来できるし。

「いや、田舎に帰る予定は無いですし。」

と言ったら。
ラッシュ様は眉間の皺をより深くして、口をへの字にした。
なんでもラッシュ様の予算の中に、"世話係の里帰り費用"という項目があるらしい。
お貴族様って、謎だ。

だいたい学園は全寮制で。
前期試験を無事に終えると、夏季休暇になる。
家から離れた坊ちゃん達は、お疲れ様♡と、狂喜乱舞して実家を目指すらしい。

そして、当たり前だがお世話係に着任するに当たってあれこれと身辺調査されたらしい。
そりゃそうだ。相手は王族。

そんな訳でお世話係は、王都近辺に帰る者と、むっちゃ僻地に帰る者は予算の金額が違ってくるらしい。
予算ってどんなモノをたてるのか?と、アメデオ様に質問すると。

土産(新しい衣類含む)と、往復の運賃と宿代。
(ルツは建前上、コレが多く掛かる)
だ、そうだ。

ちなみにラッシュ様は夏季休暇はとっとと実家(王宮)に行くそうだ。
そして森を彷徨く日々をおくるそうだ。
王宮魔術師を締め上げて、遠くまで転移するのだ。と、意気込んでるらしい。

いや、一人残されても問題ありませんから。
お留守は守ります。
A寮で優雅に暮らしますから!
むしろ、いいっ!

と、思っていたら。

ちょうど ヘルシュベル様も帰るそうだ。
ヘルシュベル様って、ルツの領地の領主だ。
王宮で文官として働いている。
このたび、妻と子を連れて、避暑も兼ねて領地を帰るそうで。
女性もいるから護衛も引き連れた物々しい一行らしい。

『ちょうどいいから、ルツ君も一緒に帰れば』
と、アメデオ様に言われた。

いやいやいや。
末端僻地の村人Aが、領主の顔なんて一生に一度でも拝まないものだっつーの‼︎
なんでそんな気軽に思うんか。
あ、アンタも上級のお貴族様だからかっ!

「世話係が何回も流れた後だからね。
ほら、それも評価に繋がるだろう。だからルツ君を手厚くして、卒業まで居てもらおうって戦法だろうね^_^」

うんうん。と、アメデオ様が言う。

いやぁ。
領主一行に紛れ込んだりしたら、僕のメンタル死にます。
王子の"世話係"なんて、向こうも気の使い方が大変だろうし。
女性連れのトロトロした道行の中に、会話も無くいるなんて…地獄でしか無い。

「ん。じゃ、ヘルシュベル伯に"お土産"を持ってって貰うのはどうかな?
予算の都合上。きちんとルツ君に使用したと領収書もあげないといけないしね。」


"お土産"

それっていきなり降って湧いたご褒美ですね。
特需じゃ無いですかっ!

ルツはしごく真面目に考えた。

いつもなら下の下の役人が税を取り立てにくるだけで、きっとこんな小さな村なんて、領主様は把握していないだろう。
徴税の役人はこっちを下に見て、いつも結構傍若無人で無理難題を言う。
領主直々に王宮からの土産を届けちゃったりしちゃったりすれば…。
うん。コレから下手な態度は取らないよね。

それに自分が薬師になって。
村に薬草畑を作っても、知名度は必要だし。
~~領主使うの有りかもしれない。



「で、ナニを用意する?」

リネンか宝石かスイーツか…
それともそれらすべてをちょっとずつか。
予算内ならオッケーだよ!
と、なかなか太っ腹なアメデオに。

ちょっと考えてすぐに


「鎌です‼︎」

と、ルツは叫んだ。



しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

何故か男の僕が王子の閨係に選ばれました

まんまる
BL
貧乏男爵家の次男カナルは、ある日父親から呼ばれ、王太子の閨係に選ばれたと言われる。 どうして男の自分が?と戸惑いながらも、覚悟を決めて殿下の元へいく。 しかし、殿下は自分に触れることはなく、何か思いがあるようだった。 優しい二人の恋のお話です。 ※ショートショート集におまけ話を上げています。そちらも是非ご一読ください。 ※画像は男の子メーカーPicrewさんよりお借りしています。

二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした

セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。 牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。 裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について

はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み/現在毎日更新予定 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!

契約結婚だけど大好きです!

泉あけの
BL
子爵令息のイヴ・ランヌは伯爵ベルナール・オルレイアンに恋をしている。 そんな中、子爵である父からオルレイアン伯爵から求婚書が届いていると言われた。 片思いをしていたイヴは憧れのベルナール様が求婚をしてくれたと大喜び。 しかしこの結婚は両家の利害が一致した契約結婚だった。 イヴは恋心が暴走してベルナール様に迷惑がかからないようにと距離を取ることに決めた。 ...... 「俺と一緒に散歩に行かないか、綺麗な花が庭園に咲いているんだ」  彼はそう言って僕に手を差し伸べてくれた。 「すみません。僕はこれから用事があるので」  本当はベルナール様の手を取ってしまいたい。でも我慢しなくちゃ。この想いに蓋をしなくては。  この結婚は契約だ。僕がどんなに彼を好きでも僕達が通じ合うことはないのだから。 ※小説家になろうにも掲載しております ※直接的な表現ではありませんが、「初夜」という単語がたびたび登場します

龍は精霊の愛し子を愛でる

林 業
BL
竜人族の騎士団団長サンムーンは人の子を嫁にしている。 その子は精霊に愛されているが、人族からは嫌われた子供だった。 王族の養子として、騎士団長の嫁として今日も楽しく自由に生きていく。

偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜

一寸光陰
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。 しかし、1つだけ欠点がある。 彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。 俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。 彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。 どうしたら誤解は解けるんだ…? シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。 書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。

処理中です...