【完結】初恋の君を探していたが、本人と気づかずにあれやこれやとドツボにハマる話

たまとら

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過疎地は牧歌的では無い

30 王宮にて -ラッシュ

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今日は王都から随分と離れた森で狩をした。
ギルドには森人の情報を頼んでいる。
この森でも森人の事を尋ねた。

そう、俺は"月の君"を探している。

もし逢えたら。
今度こそ怯えさせないようにそっと近づくぞ!
そしてせめて彼の名前を聞き出したい‼︎

これは恋だと思う。
でも余計な奴らが"平民"だとか"森人"だのとほざいて、愛妾にでもするのかと言う。

馬鹿者がっ!

俺は婚約者もいないし。
身分なぞ屁でも無い!
ギルドで食い扶持を稼いでいるし。
あとは隣に彼が居てくれるだけでいいのだ。

そう言うが…
焦りもあるし。
焦がれる気持ちは揺るがないのに。
……彼の面影がぼんやりしている。

あの金粉をまぶしたようなエメラルドグリーンの瞳が。
もう、どんな鮮やかさなのか、わからなくなった
……下手したら、黄色っぽい。
ぼんやりして緑の目が脳裏に浮かぶ。

考えたら、あいつも森人だ。
あんなに地味じゃ、恋人も出来ないだろうにな。
しかもなかなか気が強くて。
なかなか面白い奴だ。


王宮では下僕が多い。
昔から風呂に入るにも何人も付くし。
着替えも自分ではしない。
だから、人の手に触れたり、裸を見られたりする事になんの抵抗も無かったが。
学園では、まず裸だとうまうまと取り入ろうとしている奴等に利用される事に気が付いた。

アメデオは世話係を雇っていない。
自分のパーソナルスペースに、他人がいる事が我慢出来ないそうで。
昔から何でも自分でこなす。

確かにその方が、俺と縁を結びたい奴等が体を使ってくるのを防ぐ事ができる。
その方が気が楽だ。
~そんな訳で自分で脱ぎ着できる様になった。

そんな時、ルツが来た。
お手伝いしますか?と、風呂を開けて聞いてきた。
その顔は無表情でいたが、耳も首も真っ赤に染まっている。
フッ。
俺の裸を見て、照れているのか。
可愛いじゃないか。
にやにやと、わその時にそう思った。

そんな事を思い出しているうちに。
晩餐の衣装を着付けられて食堂に向かう。
下僕も文官も護衛も。
廊下にはごまんといる。
こんなに人がいても静かな王宮。
たたた。と、いうより。
すすす。と皆は進んで行って、まったく音を立てない。


決められた通りの食事をし。
食後のお茶。

「おい。」

無意識に声を上げると、

「はい?」

と、侍従が腰を下げた。

……そういえばここは王宮。
しかも夏休みだ。
ルツはいない。

"茶は今日は濃いめにして。
転移しまくったから、茶請けはちょっと甘いモノを付けてくれ。"
と、言う。『おい。』

当たり前だが。
ここでの侍従には通じない。

寮では『おい。』で全てが終わるのに…
茶の温度も物足りない。
茶請けの上品で高級な菓子は、ただ甘いだけで飲み込むのが辛い………ふぅ。



なんだろう。
あの地味でぼんやりした、黄色っぽい緑の目が脳裏にチラチラする。
あいつの、噛んだとたんに口蓋いっぱいに広がるハーブのクッキーが欲しくなる。

あいつは何をしてるんだろうか。
見てないととんでもない事をやらかす気がする。

早く帰ろう。
ラッシュは思った。


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