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結局、田舎で我に帰る
44 ザナの苦痛
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ガシャン‼︎
窓ガラスが外側から弾け飛んだ。
飾り棚に並んでいた人形が、万歳をする様に飛んで行く。
その後を追って、外壁に絡んでいた蔦が鞭の様にしなった。
ばさばさと葉を揺らして部屋の中に押し寄せる。
そのまま、後退った役人を絡めとった。
屋根のスエートの上の草が。
めこめこと溢れて、破れた窓から侵入してくる。
目の前に新緑の塊が氾濫して、思わず息をのんだ。
草はそのまま床にあふれた血溜まりに突き当たり、その身体をぎゅうぎゅうと取り囲んで視界を埋めていく。
ルツの脇を擦り抜ける蔦は、縦横無尽に部屋で踊って、わさわさと役人を引き倒した。
ぐひっ。と潰れた声が上がる。
頭の上からも足元からも。
ハート型の葉をした蔦が、緑から茶色に流れていく。
他にも細長い葉を付けた枝が、サラサラと音を立ててシュベツの腰にも顔にもぐるりと巻き付いた。
白いじいサマの体だけが、新緑に眩しい。
敵の二人は拘束した!
じいサマに駆け寄ろうとしたルツは。
その横のがんじがらめの蔦の団子の中から、低いうめき声とブチ、ブチ、という蔦の悲鳴が聞こえた。
あっと見開いた目の前で。
ナイフが白い残像の様に現れる。
蔦を切っていくそのナイフはシュベツを解放しながら動いていく。
蔦を裂き。
葉を撒き散らし。
怒りで赤く染まったシュベツは、ルツよりも早くザナの脇に立った。
そしてそのナイフの切先が、ルツの目の前でザナの胸へ突き出された。
まるでバターに刺さるナイフのように。
それはザナに吸い込まれていく。
1㎜。
2㎜。
ゆっくりと沈んでいく切先に、ルツはひうっ、と動きを止めた。
まだ蔦を引き摺りながら。
シュベツはひっひっと笑った。
わかってる。
これ以上刺さったら、ザナの肺が裂かれる。
そして今、引き抜いたら。
噴き上がる血でザナの命が脅かされる。
シュベツはそのギリギリの所でナイフを止めた。
その笑いは、これ以上自分に何かあったらどっちにでもなるのを見せつけている。
それを真っ直ぐに悟って。
ルツは動けなかった。
「そうだなぁ。お前のせいでザナが死んじまうかもしれない。おまえがなんかすると俺の手が滑っちまうかもしれない」
行商人として過ごしていたシュベツは、その喋りでルツの罪悪感を揺すっていく。
こうなったのはおまえのせい。
おまえが何もしなかったらザナは無事だったと言い募る。
シュベツは蔦の団子になって喚いている役人に目もくれなかった。
こいつはいなくてもいい。
この二人をいたぶって愉しむのは俺だけでいい。
「魔女の家なら上級回復薬だってあるだろぅ。
いざって時に死んじまうことにはならないだろうなぁ。でもまず。おまえが余計な事をして、手が滑らないようにしないとなぁ。」
シュベツはそう言った後。
目を眇めて、舐める様にルツを見た。
怯んだルツを楽しむ様に眺めてから、楽しそうに囁く。
まず、脱げ。
首輪によって動きを止められているザナは、首を横に振れなかった。
自分に生えたナイフは熱くも冷たくも無い。
動けるなら。
ピクリとでもできるなら。
わざと椅子から転げて。
このナイフを深く刺すのに。
そしてルツだけでも逃すのに。
それでも必死で、目で逃げろと合図するのに。
ルツはふるふると潤んだ目でシュベツを見つめている。
だめだルツ。
それは逆効果だ。
むしろその男が調子に乗る。
頭もピクリとも動けないまま。
ザナは視線を巡らせて必死に助けを探していた。
窓ガラスが外側から弾け飛んだ。
飾り棚に並んでいた人形が、万歳をする様に飛んで行く。
その後を追って、外壁に絡んでいた蔦が鞭の様にしなった。
ばさばさと葉を揺らして部屋の中に押し寄せる。
そのまま、後退った役人を絡めとった。
屋根のスエートの上の草が。
めこめこと溢れて、破れた窓から侵入してくる。
目の前に新緑の塊が氾濫して、思わず息をのんだ。
草はそのまま床にあふれた血溜まりに突き当たり、その身体をぎゅうぎゅうと取り囲んで視界を埋めていく。
ルツの脇を擦り抜ける蔦は、縦横無尽に部屋で踊って、わさわさと役人を引き倒した。
ぐひっ。と潰れた声が上がる。
頭の上からも足元からも。
ハート型の葉をした蔦が、緑から茶色に流れていく。
他にも細長い葉を付けた枝が、サラサラと音を立ててシュベツの腰にも顔にもぐるりと巻き付いた。
白いじいサマの体だけが、新緑に眩しい。
敵の二人は拘束した!
じいサマに駆け寄ろうとしたルツは。
その横のがんじがらめの蔦の団子の中から、低いうめき声とブチ、ブチ、という蔦の悲鳴が聞こえた。
あっと見開いた目の前で。
ナイフが白い残像の様に現れる。
蔦を切っていくそのナイフはシュベツを解放しながら動いていく。
蔦を裂き。
葉を撒き散らし。
怒りで赤く染まったシュベツは、ルツよりも早くザナの脇に立った。
そしてそのナイフの切先が、ルツの目の前でザナの胸へ突き出された。
まるでバターに刺さるナイフのように。
それはザナに吸い込まれていく。
1㎜。
2㎜。
ゆっくりと沈んでいく切先に、ルツはひうっ、と動きを止めた。
まだ蔦を引き摺りながら。
シュベツはひっひっと笑った。
わかってる。
これ以上刺さったら、ザナの肺が裂かれる。
そして今、引き抜いたら。
噴き上がる血でザナの命が脅かされる。
シュベツはそのギリギリの所でナイフを止めた。
その笑いは、これ以上自分に何かあったらどっちにでもなるのを見せつけている。
それを真っ直ぐに悟って。
ルツは動けなかった。
「そうだなぁ。お前のせいでザナが死んじまうかもしれない。おまえがなんかすると俺の手が滑っちまうかもしれない」
行商人として過ごしていたシュベツは、その喋りでルツの罪悪感を揺すっていく。
こうなったのはおまえのせい。
おまえが何もしなかったらザナは無事だったと言い募る。
シュベツは蔦の団子になって喚いている役人に目もくれなかった。
こいつはいなくてもいい。
この二人をいたぶって愉しむのは俺だけでいい。
「魔女の家なら上級回復薬だってあるだろぅ。
いざって時に死んじまうことにはならないだろうなぁ。でもまず。おまえが余計な事をして、手が滑らないようにしないとなぁ。」
シュベツはそう言った後。
目を眇めて、舐める様にルツを見た。
怯んだルツを楽しむ様に眺めてから、楽しそうに囁く。
まず、脱げ。
首輪によって動きを止められているザナは、首を横に振れなかった。
自分に生えたナイフは熱くも冷たくも無い。
動けるなら。
ピクリとでもできるなら。
わざと椅子から転げて。
このナイフを深く刺すのに。
そしてルツだけでも逃すのに。
それでも必死で、目で逃げろと合図するのに。
ルツはふるふると潤んだ目でシュベツを見つめている。
だめだルツ。
それは逆効果だ。
むしろその男が調子に乗る。
頭もピクリとも動けないまま。
ザナは視線を巡らせて必死に助けを探していた。
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