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王宮  祈る。

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銀色の濡れた髪から滴る水が、這うようにケープを浸していく。
銀のまつ毛が頬に青い影を落としている。

その頬にも水滴が丸く、つるりと滑っていく。
祝詞を唱える唇は少し半開きで、言葉の形にゆるゆる動き、目を惹きつけた。

頬から滑り落ちる水滴も、首筋をころころ転がる水滴も、薄い布に吸い取られていく。

いっそ、何もつけない方がましだ。

濡れた布が張り付いて、隠す筈の体を扇情的に見せつけている。

ぴったりした尻の双丘は丸く、きゅっと持ち上がり、揉み潰せばその弾力で俺の手を押し返すんだろう。
張り付いて浮かび上がる胸の飾りは、さっきまでの情事で薄紅く尖って、まだぷっくりと花のように咲いている。

舌で自分の唇を舐める。
まだ舌がアレを舐めている感覚を覚えている。
転がすたびに体がびくびく震え、甘い声が上がっていた。

そしてこの股間は…。
銀の陰毛に縁取られたソレは、冷たい泉の水で縮こまってピンクの翳りになっている。
白いケープの中で、張り付いた太ももの中から浮かぶソレが、思ったより人目を引かないのにほっとした。

登ってくる朝日の中で、目を覚ました香草達が甘い香りを吐き出して、祈る斎王にまとわっている。
心地よい祝詞の声と共に空中に漂っていく。
赤みを帯びた朝日にあてられて、冷たく冷えた体から湯気がたちはじめ、まるで自ら発光しているようだ。

なんて美しい生き物なんだろう。

それを手に入れられた自分に、ラグナロワは賞賛を送った。


  それにしても。


翼竜以来、城の中は明らかに変わった。

今まで遠巻きにしていた奴らは、俺というリミッターがいなければ、斎王の前に全身を投げ出して裾にすがりつきたい。という目をしている。

そして、後宮は。

以前から禊の後、石畳のこの場で斎王は祈りを捧げていた。
女達はそれを知って、自分の宮からそちらに向いて祈っていた。……のを知っている。

それを隠さなくなった。

禊から出てくる斎王を、跪いて待っている。
そして、この広場になった石畳の上で一緒に祈るのだ。
この世の平穏。
この世の幸せ。


 ****

ラグナロワはじっくりとそれを眺める。
うん。 
女達の目に情欲は無い。
ーーもしあったら、すぐに首を刎ねてやるのに。

神事ということで大目に見ているが、この姿を晒すのは不快だ。
せめて風魔法で乾かせと言ったが、禊と祈りは一対で魔法を入れてはいけない。と言われてしまった。
テュールに、これからケープを厚手にするよう命じよう。


それにしても。

毛先に集まった水滴が、ころころと肌を滑っていく。

あの丸い水滴。

ほんの2時間前までなぶっていたのに、また股間が硬くなってくる。

水滴を舐めたい。

そうだ、コレが終わったら舐めてやろう。
もっと欲しくて泣き声を上げても、ただ舐めてやろう。

(もっと強くして)

(お願い。挿れて、イかせて)

頭の中にシリンの肢体が蠢く。
その声が脳を浸していく。

舌で唇を舐める。
喉がぐびりと鳴った。

指も目も耳も、余すところなく舐めてやる。
とろとろに溶かして鳴かせてやろう。


祈りの祝詞に巻き付かれたまま、ラグナロワの妄想は広がっていった。

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