わりとうがって見ちゃうって、ゲスいんですかね、自分。

たまとら

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竹取物語

お迎えが、来るっ!

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四方に散って行った公達たちの有り様は、そりゃもう楽しゅうございました。

なよ竹は、竹に入っていたドローンで
(爺さまはガラクタだと捨て置いたけど)
映像を受けて、婆さまと楽しんだ。

偽物を作る為に職人を拉致る奴。
大陸に渡るために舟を作る奴。

蟻のように集まって働くパワーに、ときめきが止まらなかった。

竜の玉を取りに行った大納言大伴御行なぞ、そのつるりとした見てくれを裏切って、荒れる波に仁王立ちしていた。
大きな生物(アレが竜なのか知らない。見た事無いし)との格闘は、手に汗握った。

ああ、ポテチが欲しい‼︎
と、まじ念じた程だった。


ある日、爺さまは漆で塗られたような小さな板を持って来た。
貧乏性の爺さまは、金持ちになっても竹藪に通っていた。
偉いこっちゃ。
頭が下がる。

つるりと黒い板は、なよ竹が持った途端に光が入った。
ほう、生体認証できてる。

にやけるなよ竹に、メッセージが届いた。




「婆さま。今度の満月に迎えが参ります。」

その言葉に。
ついにフィナーレか。
と、婆さまは感無量だった。

この子を拾って、この子を育てて。
とてもとても楽しかった。
生きてる!って実感できた。
婆さまはこの人生に悔いなし!
と、うるうる思った。

後は、盛大なエンディングだ。



一番を決めるレースもぐだぐだなままに。
月への帰還発言に、都はさらに湧き立った。
ついにはみかどがしゃしゃり出て来て、兵が送られることになった。


土産を考えるなよ竹に、スマホの位置情報サービスで空間転移宅配便がぽよんと現れる。
開けると羽衣が入っていた。

うん。
これでバッチリ。
舞台装置もオッケーだ。

婆さまと脳内リハを繰り返す。
兵士の配置も話し合って、当日を迎えた。






大きな大きな満月が、黒々した山々を浮き立たせている。
それは瓦をキラキラ光らせ、辺りは月の光で煌々と明るかった。

帝より派遣された兵士達は、塀の上にも庭の中にも、蟻のようにわらわらと見張っていた。

なよ竹は奥の部屋で爺さまと婆さまの手を握り
「お世話になりました。」
と、笑顔を見せた。

うるうると腰を抜かした爺さまと違い、婆さまは『頑張れ!』と、目で送る。
なよ竹は頷いて、廊下を進んだ。




「なんだあれはっ!」

「天の使いだっ‼︎」

ぴゅあー ぴゅあー と、
どこからか音楽が聞こえてくると。

上空でドローンがプロジェクションマッピングで天の使い御一行様を浮かばせた。

「なよ竹を守れ‼︎」

その号令で一斉に矢が上空へと舞う。
黒い針が、五色の雲と蓮の花咲く天女達に向かった。
が、なんの手応えも無く散って行く。

庭へ降りたなよ竹は、あんぐりと上を向いている兵士達の中でそっと羽衣を起動させた。

うぃん。
うぃん。
うぃん。

獣が喉を鳴らすような振動が、腹の底が響いて来た。
慌てた兵士がそこを見つめると、


蜻蛉の羽根のようにキラキラ光る羽根を8対背にしたなよ竹がおりました。

羽根は光を発し。
てらてらと七色に瞬いて、神々しくて見ていられません。

近くの者から慌てて膝を折り、その美しさに喘ぎながら行事しました。


「皆様、ありがとうございました。
わたくしは幸せでございました。」

うっとりした笑は、頭の芯を蕩けさせます。

うぃん。
うぃん。

その音だけが、しんとした辺りに響き。
人々は口を開けて、浮き上がるなよ竹に見入っておりました。
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